弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
恐竜
2022年6月 6日
「いまさら恐竜入門」
(霧山昴)
著者 田中 康平 、 出版 西東社
恐竜学の進化は恐ろしいものがあります。今では、鳥は恐竜そのものだというのは世間の常識です。
恐竜は変温動物ばかりでもないようです。卵を食べると思われた恐竜が、実は卵をふ化させようと卵を抱いていたことも分かりました。
日本には恐竜なんていないと思われていたのに、北海道では恐竜の前身の骨が発見されました。近くにある天草の恐竜博物館には、まだ行っていません。
恐竜の定義は、トリケラトプスとイエスズメのもっとも近い共通祖先から生まれた子孫すべて。なので、鳥は恐竜の子孫ではなく、恐竜そのものになる。すべての鳥は、竜盤類の獣脚類という恐竜の1グループから進化したもの。獣脚類は、おもに肉食恐竜のグループ。
この本には、全部の見開きにマンガがあって、よくよく理解できます。
恐竜には、羽毛もあり、膚には色もついていました。
名前のついた恐竜は1100種ほど。しかし、1億7千万年も進化を続けていた恐竜がわずか1100種だけであるはずがない。化石として見つかっているのは、実はごくわずか、ほんの一部にすぎない。なーるほど、そういうことなんですね...。
プロトケラトプスとヴェロチラプトルとが、がっぷり組みあって戦っている様子がそのまま化石になって残っているものがあるそうです。すごいです。よく見つかり(見つけ)ました。
恐竜の寿命は、ティラノサウルスで30歳、ブラキオサウルスは最長100年では...。案外、長生きしてたんですね。
地球に隕石が衝突したことから、地球環境に大変動が起き、恐竜は絶滅したという説が有力です。でも、このとき、一部の恐竜は生きのびたようです。そして、もちろん、鳥は今も存在します。
哺乳類は絶滅したのは23%でしかない。
恐竜の話は、いつ読んでも楽しいですね。もし目の前にいたら恐ろしいばかりの存在でしょうが...。
恐竜のDNAを取りだして復元できないか...。DNAに521年の半減期がある。なので、たとえ、マイナス5度Cという理想的な保存状態であっても、680万年後には、すべて壊れる。それより早い6600万年前には恐竜がいないから、恐竜のDNAを取り出すのは無理だということ。いやはや、夢はもちたいのですが...。
(2020年12月刊。税込1320円)
2021年11月29日
恐竜学者は止まらない
(霧山昴)
著者 田中 康平 、 出版 創元社
恐竜学者になるには、オール優(A)の成績をとらなければいけないのだというのを初めて知りました。そして、その理由もしっかり理解しました。
御師である高名な恐竜学者の小林快次教授は学生の著者に対して、こう言った。
「恐竜を研究したいんだったら、授業すべてで優をとること。テストでは一番をとること」
なぜか...。成績が良くないと、奨学金にしろ、大学院進学にしろ、申請ができない。申請しても、認めてもらえない。
恐竜を研究している学生の生活費は奨学金に頼るしかない。それも給付型。すると、成績が良くなければ、もらえない。大学院に進学し、研究室に入りたければ、日頃の成績がモノをいう。なーるほど、そういうことなんですね...。
それから恐竜を研究するには、隣接科学の勉強も必要になる。恐竜の卵を知るためには、現生動物、たとえばワニの卵との比較が必要だ。なので、ワニの卵の研究もしないと、十分な比較ができない。
著者の主たる研究対象は恐竜の卵殻(らんかく)。小指のツメよりも小さな破片は、8400万年も前に恐竜たちが生きていた証(あかし)。卵殻は、恐竜の赤ちゃんが最初に触れるもの。
完全な形状を保った卵でも、卵の中身は、土砂に埋まって化石化する過程でなくなってしまう。卵化石は、骨化石とは別に、独立した命名法がある。恐竜の卵殻外表面には、こった装飾模様のついているものがある。これって、本当に不思議ですよね。誰が見るというわけでもないのに、模様が種によって違うのですから...。
卵の両端を極と呼ぶ。鋭くとがっている端を鋭極(えいきょく)、鈍い端は鈍極(どんきょく)。卵の一番太い部分は「赤道」。
オヴィラプトロサウルス類の恐竜は、1かいに2コずつ卵を産んだ。鳥のように、毎日か数日おきに卵を産み、巣を完成させた。
そもそも抱卵の起源は、親が卵を守る行動から徐々に進化したのではないか。巣の上で捕食者から卵を守る行動が誕生し、その後、翼を使って雨風や直射日光から卵を保護する行動へと変化し、最終的に親の体温を使って直接卵を温める行動になったのではないか...。
著者たちは、兵庫県丹波市での卵化石発掘調査において世界最小の恐竜卵ヒメウーリサスを発見しました。生きていた当時は10グラム、100円玉2個分の重さ。幅2センチ、長さ4.5センチの大きさ。いやはや、本当に小さな恐竜の卵です。よく見つけましたね...。
恩師の小林快次教授は恐竜の骨化石、そして著者は恐竜の卵化石と、同じ恐竜化石でも少し対象を異にしています。ところが、二人とも文章の面白さでは共通しています。この師にして、この弟子あり、というところです。恐竜に関心のある人には見逃せない本ですよ。
(2021年10月刊。税込1980円)
「大コメ騒動」という面白い映画をみました。
戦前、富山の女性たちが米価の暴騰に怒って米屋に提供を求めて押しかけたという米騒動を取りあげた映画です。
女性たちが立ち上がったものの、分裂策動によって仲間割れが起きたり、首謀者が警察に捕まったりして、いったん下火になったものの、シベリヤ出兵のあおりで再び米価が値上がりしたもので、もう一回押しかけ、ついに目的を達したのでした。
日本社会を動かしているのは、実は女性なんだということを改めて認識しました。
2021年11月27日
うんち化石学入門
(霧山昴)
著者 泉 賢太郎 、 出版 インターナショナル新書
ティラノサウルスといえば恐竜界の人気ナンバーワンでしょう。そのウンチの化石が見つかっているというのです。驚きました。
ティラノサウルスは白亜紀(1億4500万年前から6600万年前)の後期に陸上生態系の頂上に君臨した史上最大規模の肉食恐竜です。
鋭い歯をもつ、体長10メートルをえる超巨大な肉食恐竜。そのウンチは幅15センチ、長さ44センチという巨大サイズ。このウンチ化石を分析すると、骨の化石のカケラが見つかった。つまり他の脊髄動物を食べていたということ。
ウンチ化石としては、ハドロサウルスのほかにも、首長竜(恐竜とは別)のウンチ化石ではないかと調査中のものもある。
化石は、体化石と生痕化石の二つに大別される。
生痕化石とは、古生物の行動の痕跡が地層中に保存されたもののことをいう。足跡の化石も、その一つだ。
脊髄動物のウンチは鉱物化する。それは、ウンチが砂や泥に埋没したあと、かなり早く微生物の作用によって鉱物化するということ。
ウンチ化石は、化石の宝庫なのだ。
生痕化石は、肉眼で観察できるという魅力がある。しかし、漠然と眺めていてもダメ。
恐竜のウンチ化石を専門に研究している学者がいるっていうこと自体に驚いてしまいました。でも、もちろん、必要な研究ですよね...。
(2021年4月刊。税込880円)
2019年10月 7日
恐竜の世界史
(霧山昴)
著者 スティーブ・ブルサッテ 、 出版 みすず書房
福井県にある恐竜博物館は、遠くからはるばる行くだけの価値があります。
残念なことに、私はまだ天草の恐竜博物館には行っていません。ぜひ一度行ってみたいと思います。そして、北海道のムカワリュウの全身骨格復元の実物も拝みたいものです。
恐竜の本が出たとなれば、見逃すわけにはいきません。かの小林快次センセイ(北大教授)のおすみつきとあれば、これは読まなくてはいけません。
1億年以上も続いた恐竜の時代、地球上には一つの大陸、パンゲア大陸しかなかったというのを初めて認識しました。アフリカも南北アメリカ大陸も、みんなひとかたまりだった時期から恐竜はいたのです。もちろん、それらの大陸は、やがて離れていき、今のようになりました。
そして、気候と気温についても、今のような温暖な気候の下で恐竜がずっといたわけではないようなんです。ええっ、そ、そうだったの・・・、と驚いてしまいました。
さらに、今や新種の恐竜が週に1度のペースで発見されていて、毎年50種ずつ新しい恐竜が見つかっている。うっそー、うそでしょ。そう叫びたくなります。
エオラプトルなど初期の恐竜が活動していた2億4000万年前から2億3000万年前のころ、現在の諸大陸はなかった。あったのは、「超大陸」(パンゲア)と呼びひとつながりの広大な陸地。
そして、最初期の恐竜はサウナにすんでいたようなもの。三畳紀の地球は、現在よりはるかに暑かった。大気中の二酸化炭素濃度は今より高かった。
最初期の恐竜は、湿潤地帯に目立たないように引っ込んだ存在だった。負け犬と言ってよいほど。ところが、ジュラ紀になると恐竜は多様化し、多種多様な新種が次々に生まれていった。
肉食恐竜T・レックスは、速く走ることだけは出来なかった。なぜか・・・。そして、このT・レックスは世界的な恐竜ではなく、北アメリカ、その西部に限られていた。
鳥は、1億6000万年以上に及んだ恐竜の治世のなごりである。鳥は恐竜なのである。
恐竜の絶滅が唐突におきたことは、疑いようがない。1億年以上も繁栄を謳歌していた恐竜が、数千年間の、あっというまに絶滅してしまった。
小惑星は飛来しなければ、恐竜も絶滅しなかった。恐竜の帝国は滅びてしまったが、恐竜は鳥として今に生きながらえている。
いやあ、恐竜について知ると、胸がワクワクしてきます。
(2019年8月刊。3500円+税)
2019年8月19日
恐竜まみれ
(霧山昴)
著者 小林 快次 、 出版 新潮社
子どもも大人も、恐竜が大好きだというのは世界共通だと思っていました。だって『ジュラシック・パーク』はアメリカ映画ですし、世界的に大人気だったわけでしょ。
でも、著者によると日本は世界のなかでも飛び抜けて恐竜ファンが多いのだそうです。
私も恐竜ファンの一人です。現代に生きる恐竜が鳥類だなんて、不思議そのものです。
そして、恐竜時代にわが人類の原型(祖先)は深夜だけウロチョロしていたネズミのような哺乳類だったというのです。うひゃあ、恐竜が絶滅しなければ、人類だって、昼間おおっぴらに活動できなかったというわけです。
著者はアンモナイト少年から長じて恐竜博士になりました。
恐竜発掘のため、危うい目に何度もあっています。巨大なグリズリー(ハイイログマ)に襲われそうになったり、ヘリコプターで墜落寸前になったり、ゴビ砂漠では道に迷って転落死寸前、ガラガラヘビを目前に見たり・・・。それでも無事に研究生活を続けているのですから、たいしたものです。
発掘体験記を読むと、まさしく恐竜発掘の大変さと楽しさがビンビン伝わってきて、ともに感動の余韻(よいん)に浸ることができるのです。これだけでも一読の価値があります。
化石の発掘調査。じつは発掘というのは、恐竜研究の一部にすぎない。だが、結論を言えば、恐竜研究の醍醐味はここにある。自分の足と手、目を使って発見する。抜群の面白さだ。
姿を消してしまった恐竜を研究する面白さは、恐竜そのものに挑むことにある。圧倒的に少ないデータを、自分の力で増やしていくのだ。
現在まで1000種類の恐竜に名前がついている。その75%は、たった6ヶ国から発見されている。アメリカ、カナダ、アルゼンチン、イギリス、中国そしてモンゴル。残念ながら、日本は入っていない。
恐竜の化石を見つけるには、人の歩いた形跡のないところ、歩きづらいところをあえて歩く。どんなに疲れていても、あえて違う道を歩くように心がけ、常に化石が落ちていないか目を配る。
大発見は、予期せぬ形で起きる。最終日の夕方に・・・。
絶滅した恐竜の祖先系がワニ類で、末裔(まつえい)が鳥類だ。そこで、恐竜の行動や姿形を推測するためには、ワニ類と鳥類の両方を見比べる。
化石は日本の研究室へもち帰ることはしない。化石は、それが埋まっていた町や村、市の宝なのだ。
フィールドに到着すると、ひたすら歩く。今日も歩いて、明日も歩く。とにかく気力と体力の勝負。ほとんど土砂をショベルで掻(か)いている。
恐竜の研究者は、骨の形と体で覚えている。
いま、東京・上野の国立科学博物館で開催中の「恐竜博2019」には「むかわ竜」の全身骨格が復元展示してあるとのこと。ぜひみてみたいものです。
そして、中国からも全身骨格が届いているそうです。
実際に恐竜がいたら怖くてたまりませんが、夢とロマンの対象として恐竜には限りなく関心があります。小林先生の次の本が楽しみです。
(2019年6月刊。1450円+税)
2019年6月23日
恐竜の卵の里をたずねて
(霧山昴)
著者 長尾 衣里子 、 出版 成文堂新光社
久しぶりに恐竜の本を読みました。鳥が恐竜の子孫であることは間違いないようです。
今朝は珍しく澄んだ甲高い小鳥の鳴き声を楽しむことができました。わが家の周辺は、いつもカササギ夫婦がカチカチ、シギシギ言いながら飛びまわっています。
中国、アルゼンチン、フランスそして日本と恐竜の卵の発掘現場を探訪した旅行記です。
とりわけ印象的なのが中国です。たくさんの恐竜の卵化石が発掘されていて、驚嘆しきりです。発掘現場には、砲丸投げの球そっくりの黒くて丸い卵化石が点在しています。日本では丹波竜の卵の化石が、見つかっています。
そして、フランス南部にもチタノサウルスの卵化石が発掘されています。ラグビーボールほどの大きさ、そしてずしりと重たいそうです。
今では、卵化石のなかの赤ちゃん恐竜の背骨の一本一本までがクローズアップして見えるようになっています。恐るべき科学技術の進歩のおかげです。
たくさんの卵化石の写真が紹介されていて、楽しく読めるエッセーになっています。
(2019年3月刊。1000円+税)
2013年12月24日
大人のための「恐竜学」
著者 土屋 健 、 出版 祥伝社新書
アメリカにはダイヤモンド公園という広大な公園があって、ダイヤモンドを土なかから探し出すことができるそうです。私は、そんなところに行くより、カナダのアルバータ公園とかにいって、恐竜の発掘現場に行きたいです。日本でも天草とか福井県に恐竜がよく発掘されているところがあります。ぜひ一度、現地に行ってみたいものです。
今のところ、残念ながら、恐竜とのご対面は上野の東京科学博物館くらいです。
宮崎の成見弁護士は私の尊敬する先輩ですが、各地の恐竜展には欠かさず行くようにしているとのこと。うらやましい限りです。
この本は、今さら子どもには訊けない、最新の恐竜学が解説されています。
恐竜は鳥盤類と呼ばれる動物たちと今の鳥類をふくむ竜盤類と呼ばれる動物たちから成る。両方とも陸上を歩いた爬虫類である。
恐竜とは、体の下に足がまっすぐのびた爬虫類。
鳥類は恐竜の一部である。クビナガリュウや翼竜は恐竜ではない。
恐竜は、短くとも6600万年という途方もない時間を経て化石になっている。
この化石化の過程はまだ明らかにされていない。
恐竜は二足歩行型の方が、四足歩行型よりも足が速かったとみられている。
ティラノサウルスは、陸上動物史上まれにみる高度な肉食動物だった。そこで、肉食恐竜をこえるものとして「超肉食恐竜」と呼ばれている。
恐竜は肉食、植物食、雑食といろいろいたが、多くの恐竜は基本的に植物食だった。
多くの恐竜の寿命は30歳前後。
小型の恐竜は内温性だったのではないか。大きな竜脚類の恐竜は外温性。このように、一概に恐竜をどちらかに決めつけてしまうのは難しい。
恐竜は2億年近くも、この地上にいた巨大な生物体です。人類とは共存できそうもありませんが、ロマンをかきたてられる存在ですよね。
(2013年10月刊。780円+税)
2013年10月 7日
鳥類学者、無謀にも恐竜を語る
著者 川上 和人 、 出版 技術評論社
鳥は恐竜である。だから、恐竜は死滅(絶滅)したのではない。恐竜は今も生きて、あなたの身のまわりに存在する。
これはすべて本当のことです。ええーっ、でも可愛い小鳥があの、いかにも怖いステゴザウルスと同じだなんてウソでしょ、という反発の声が聞こえてきそうです。だけど、本当に鳥は恐竜の一部なのです。これは、学界で定説となっています。
鳥類を除くと、ワニは恐竜にもっとも近い現生動物である。
翼竜、魚竜、首長竜などは、恐竜ではない。
恐竜が、二足歩行を実現することができたのは、それ以前の爬虫類と異なる脚のつき方を進化させたからだ。
鳥にとって独特の特徴だと思っていた羽毛は、恐竜時代に発達したと考えられている。多くの恐竜には羽毛が生えていた。
二足歩行は、鳥類と恐竜の大いなる共通点である。シソチョウ(始祖鳥)は、羽ばたきは無理でも、滑空はしていただろうと考えられている。
翼竜は、空を自由に飛翔した、はじめての脊椎動物である。この点では翼竜は鳥類の先輩だが、系統的には鳥や恐竜とはまったく異なるものだ。鳥類が空に進出したときには、すでに翼竜が空を支配していた。
鳥が羽毛をつかって飛ぶのに対して、翼竜は皮膜を利用して飛行する。
羽毛は皮膜よりも優秀な飛行器官である。羽毛は軽い。飛翔のための強度をもちつつ、とてつもない軽量さを誇っている。これに対して、翼竜の皮膜は、生きた皮膚であり、血流は水分を含み、必然的に羽毛より重くなってしまう。
恐竜と鳥の大きな違いの一つが、尾の部分だ。恐竜において、バランサーやエンジンとして役に立っていた尾は、子孫の鳥では不要になってしまった。
ほとんどの翼竜には、立派な歯が残されている。その多くは、魚を食物としていた。
鳥は、空を飛ぶために、むしろ歯や腕、尾を捨てた。
毒牙をもつと考えられる恐竜が見つかっている。実にシノルニトサウルスという小形恐竜である。牙に溝がある。
恐竜の一部は渡りをしていた。
鳥類を研究する学者が恐竜を真面目に論じている面白いキョーリューの本です。なかなか恐竜展に行けないのが残念です。
(2013年6月刊。1880円+税)
2012年9月18日
恐竜時代Ⅰ
著者 小林 快次 、 出版 岩波ジュニア新書
恐竜についての最新の研究成果が、さすがに子ども向けらしく、とても分かりやすく解説されています。大人にとっても十二分に役立つ内容です。
過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい。
鳥は恐竜である。鳥類は恐竜類から進化したと言うと間違いだ。正しくは、鳥類は、中世代の恐竜類から進化したと言うべき。
始祖鳥は、空を飛んで生活していた。体の軽量化に成功していた。しかし、始祖鳥は、いまの鳥類のように翼をバサバサと羽ばたかせて空を飛んでいたとは考えられない。始祖鳥の胸筋は、現在の鳥類のようには発達していなかった。そこで、始祖鳥は、鋭い爪をつかって木に登り、十分な高さまで登って、そこから滑空していたのだろう。うひゃあ、これって八王子の高尾山の神社に住むモモンガそっくりじゃありませんか・・・。
1億7000万年のあいだ、地球を支配していた恐竜はすぐれた生命体だった。身体の構造は複雑であり、ちみつな設計により成り立っていた。ところが、今から6550万年前に忽然と地球上から姿を消した。もちろん、鳥類を除いて・・・。
恐竜の足跡化石にも、大きな利点がある。まず、数が多い。そして、歩くスピード体重、行動について証拠を残している。
恐竜の起源から繁栄のはじまりまでの化石記録がもっともよく残っているのは、アルゼンチンのイスチグアラスト州立公園である。
恐竜も子育てしていた。子育てという行動を確立することによって、恐竜の繁殖能力は、ほかの動物よりもすぐれていた。そうやって、恐竜は大繁栄し、全大陸を制覇できた。
恐竜の一部が巨大化したのは、天敵がいたため。身を守るには体を大きくすることしかなかった。長い首は、食べるものを集めるのに役立ち、体温調節にも役立つ。長い首をもつことで、体を動かさなくても首を左右に振るだけで、たくさんの餌にありつける。細長い首と尻尾はラジエーターのような役割、つまり、体にこもった熱をそこから逃すことを可能にした。
本書の前半部分では、大変な苦労をしながら、恐竜化石を求めて世界を歩いている実情が語られています。こんな学者がいるから、恐竜について少しずつ分かっているのですね。本当にお疲れさまだと思いました。
(2012年6月刊。940円+税)
2012年2月26日
「決着!恐竜絶滅論争」
著者 後藤 和久 、 出版 岩波科学ライブラリー
この本を読んで明確に認識したことが二つあります。その一は、鳥は恐竜の一部だということです。ジュラ紀後期に出現した鳥を加えて恐竜と呼ぶ。だから、恐竜絶滅論争はあくまで、非鳥型恐竜のみを扱っている。
その二は、恐竜が絶滅したのは6550万年前の白亜紀末にメキシコ・ユカタン半島に小惑星が衝突したことによるものだというのは、30年来の論争の末に決着がついているということです。もちろん、反対説を唱えている人は今もいますが、それは実証的な反対論ではないということなのです。
衝突説にとって決定的な証拠は、1991年に、チチュルブでクレーターを発見したこと。これは直径180キロメートルの円形構造のクレーターであり、地下1キロに埋没している。
小惑星は、地球表面に対して30度の角度で南南東の角度から現在のメキシコ・ユカタン半島に迫ってきた。その直径は10~15キロ、衝突速度は秒速20キロ、そして放出エネルギーは広島型原爆の10億倍。衝突地点では、時速1000キロをこえる爆風が吹き、衝突地点から立ち上る柱状の噴流(ブルーム)の温度は1万度。大気や地表が過熱され、地球上のいたるところが灼熱状態になった。地表面温度にして260度。
衝突地点付近はマグニチュード11以上の地震に襲われた。メキシコ湾岸を襲った津波の高さは最大300メートルに達した。衝突によってダスト(塵)が舞いあがり、火炎にともなうスス、そして衝突地点に厚く堆積していた硫酸塩岩が蒸発することで放出された硫黄が塩酸エアロゾルとして大気に長期間の滞留し、太陽光を数ヶ月から数年にわたって遮った。これによって寒冷化が起きる。いわゆる「衝突の冬」である。最大10度は温度が下がる。硫黄が大気中に大量に放出されたことから、硫酸の酸性雨が地球上に降り注いだ。
恐竜って、何億年も生きていたのですよね。それが一回の小惑星との衝突によって絶滅させられなんて、世の中はミステリーだらけですね。
(2011年11月刊。1200円+税)