弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2021年11月29日

恐竜学者は止まらない

恐竜


(霧山昴)
著者 田中 康平 、 出版 創元社

恐竜学者になるには、オール優(A)の成績をとらなければいけないのだというのを初めて知りました。そして、その理由もしっかり理解しました。
御師である高名な恐竜学者の小林快次教授は学生の著者に対して、こう言った。
「恐竜を研究したいんだったら、授業すべてで優をとること。テストでは一番をとること」
なぜか...。成績が良くないと、奨学金にしろ、大学院進学にしろ、申請ができない。申請しても、認めてもらえない。
恐竜を研究している学生の生活費は奨学金に頼るしかない。それも給付型。すると、成績が良くなければ、もらえない。大学院に進学し、研究室に入りたければ、日頃の成績がモノをいう。なーるほど、そういうことなんですね...。
それから恐竜を研究するには、隣接科学の勉強も必要になる。恐竜の卵を知るためには、現生動物、たとえばワニの卵との比較が必要だ。なので、ワニの卵の研究もしないと、十分な比較ができない。
著者の主たる研究対象は恐竜の卵殻(らんかく)。小指のツメよりも小さな破片は、8400万年も前に恐竜たちが生きていた証(あかし)。卵殻は、恐竜の赤ちゃんが最初に触れるもの。
完全な形状を保った卵でも、卵の中身は、土砂に埋まって化石化する過程でなくなってしまう。卵化石は、骨化石とは別に、独立した命名法がある。恐竜の卵殻外表面には、こった装飾模様のついているものがある。これって、本当に不思議ですよね。誰が見るというわけでもないのに、模様が種によって違うのですから...。
卵の両端を極と呼ぶ。鋭くとがっている端を鋭極(えいきょく)、鈍い端は鈍極(どんきょく)。卵の一番太い部分は「赤道」。
オヴィラプトロサウルス類の恐竜は、1かいに2コずつ卵を産んだ。鳥のように、毎日か数日おきに卵を産み、巣を完成させた。
そもそも抱卵の起源は、親が卵を守る行動から徐々に進化したのではないか。巣の上で捕食者から卵を守る行動が誕生し、その後、翼を使って雨風や直射日光から卵を保護する行動へと変化し、最終的に親の体温を使って直接卵を温める行動になったのではないか...。
著者たちは、兵庫県丹波市での卵化石発掘調査において世界最小の恐竜卵ヒメウーリサスを発見しました。生きていた当時は10グラム、100円玉2個分の重さ。幅2センチ、長さ4.5センチの大きさ。いやはや、本当に小さな恐竜の卵です。よく見つけましたね...。
恩師の小林快次教授は恐竜の骨化石、そして著者は恐竜の卵化石と、同じ恐竜化石でも少し対象を異にしています。ところが、二人とも文章の面白さでは共通しています。この師にして、この弟子あり、というところです。恐竜に関心のある人には見逃せない本ですよ。
(2021年10月刊。税込1980円)

 「大コメ騒動」という面白い映画をみました。
 戦前、富山の女性たちが米価の暴騰に怒って米屋に提供を求めて押しかけたという米騒動を取りあげた映画です。
 女性たちが立ち上がったものの、分裂策動によって仲間割れが起きたり、首謀者が警察に捕まったりして、いったん下火になったものの、シベリヤ出兵のあおりで再び米価が値上がりしたもので、もう一回押しかけ、ついに目的を達したのでした。
 日本社会を動かしているのは、実は女性なんだということを改めて認識しました。

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