弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

日本史(戦中)

2021年10月14日

米軍からみた沖縄特攻作戦


(霧山昴)
著者 ロビン・リエリー 、 出版 並木書房

1945年4月、アメリカ軍は大々的な沖縄侵攻を開始した。これに対して、日本軍はカミカゼ特攻隊で対抗。その無謀な特攻作戦を主としてアメリカ軍側の記録によって再現した本です。
日本軍の特攻機によるカミカゼ体当たりに効果がまったくなかったわけではありません。
でも、アメリカ軍は日本軍の暗号を全部解読していましたので、日本軍の奇襲作戦が成功するはずもありません。
そして、日本軍の飛行機は「ゼロ機」(零戦)もふくめて防御板は薄く、パイロットは未熟者ばかり(ベテランはすでに墜落されていて、熟練パイロットを養成する時間もなかった)。
アメリカ軍は沖縄侵攻にあたって、レーダー・ピケット艦艇(RP艦艇)を配置した。日本軍は、結局、このRP艦艇に特攻機を差し向けて、体当たりさせることになった。
その結果、アメリカのRP艦艇のうち沈没、損害を受けたのは29%に達した。
そしてアメリカ軍の戦闘機パイロットは、日本軍機との戦闘で勝っても、RP艦艇から誤射される危険があった。ベトナム戦争でも、アメリカ軍は友軍誤射で、相当の被害者を出していましたよね...。
アメリカ軍の誤射による被害というのは、アメリカの艦艇の兵士たちの過労と神経衰弱によるものが大きかった。なにしろ休養がとれず、眠れないので疲労困憊になっていたから。ストレスで、神経がすりきれてしまっていた。
日本の特攻機は、レーダー探知を避けるため、しばしば海面上を低高度で飛来した。
日本の特攻機のパイロットたちは、練度が低かった。最小限の飛行訓練しか受けていなかった。
アメリカ軍のグラマンF6Fヘルキャットは、ゼロ戦より速く、運動性が良かったので、「手強い相手」だった。ヘルキャットのパイロットは、ゼロ戦と遭遇したら、格闘戦を避けて、速度と火力を最大限に活用するように指示されていた。
アメリカ軍のパイロットたちは、日本軍パイロットの練度の低さもあって、次々に「面白い」ように撃墜していった。これを「七面鳥狩り」と称していた。
いやはや、特攻攻撃を命じられていった前途有為の日本の若者たちがあっけなく戦死させられていったのです。本当に残念ですし、本人たちも悔しかっただろうと思います。
レーダーのない日本軍機は、悪天候によって作戦開始ができなかった。なので、アメリカ軍兵士のほうは、悪天候になると喜んだ。
無謀な特攻・体当たり作戦を若いパイロットたちにおしつけた参謀以上の軍トップの責任は、とてつもなく大きく重いはずですが...。単純に特攻作戦を美化するなんて、許せません。
(2021年9月刊。税込2970円)

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