弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
社会・人間
2020年11月21日
ぼくは挑戦人
(霧山昴)
著者 ちゃん へん 、 出版 集英社
日本で生まれた育った在日コリアンの著者はジャグリングを用いた芸をするプロのパフォーマー。日本だけでなく、世界中をかけめぐって芸を披露しているとのこと。
在日コリアンということで、小学校から中学校まで教室で陰湿ないじめを受けていた。子どもって、親のヘイトスピーチを真に受け、行動にあらわすのですよね...。読んでて、辛くなりました。
ところが、母親が我が子がいじめにあっていることを知って小学校に乗り込んで、いじめっ子に向かって言った言葉が圧巻です。
「素敵な夢もってる子はな、いじめなんてせえへんのや。お前らのやってることは、ただの弱いもんいじめや。強さと自慢したかったら、ルールのある世界で勝負せえ」
そして、子どもである著者にはこう言ったのでした。
「朝鮮人とか母子家庭とかで今まで散々ナメられてきたけど、わしは絶対負けへんで。一緒にがんばろな」
そして、家に帰ったら、ひいばあちゃんもこう言って励ました。
「いじめられたくなかったら、他人(ひと)より努力せな、あかん。いつか自分が頑張られるもんに出会ったら、それを一生懸命がんばって一番になりなさい。一番になったら、いじめられるどころか、お前を守ってくれる人がたくさん集まってくるんや。だから、そういう人生を歩みなさい」
この言葉を著者は実践していったのでした。偉いです。
中学3年生のとき、アメリカに単身渡って、パフォーマー・コンテストでヨーヨーの演技をして優勝した。いやはや、すごいですね。
高校3年生のときには、夏休みだけで300万円を稼いだ。なんともはや...、すごい、すごーい。
大道芸W杯のヤジウマ人気投票1位という肩書をもらっていた。
休日は10時間、平日でも毎日7時間から8時間は練習。それくらいすると、身体が覚えてしまうのでしょうね...。
著者は恐る恐る韓国に行きました。うまくいったようです。そのあと、なんと北朝鮮にも入って、平壌にも行っている。公演も2回していて、なんと金正恩本人から話しかけられたとのこと。
なるほど、タイトルどおり挑戦人です。自分の人生を自分の努力で切り拓いている様子が生き生きと伝わってきて、たくさんの元気をもらいました。ぜひ、ユーチューブで芸をみてみましょう。
(2020年8月刊。1800円+税)
2019年8月 8日
なぜ人は騙されるのか
(霧山昴)
著者 岡本 真一郎 、 出版 中公新書
「振り込め詐欺」と、それに類似した詐欺にひっかかる人が後を絶ちません。
人類の情報処理の基本設定(デフォルト)は、自動的処理。つまり、考えることなく、自動的に処理されている。不都合が起きたときだけ、制御的処理のシステムが積極的に介入して認知を修正している。
感謝先行型の表現の貼り紙「いつもご清潔にご使用いただき、ありがとうございます」のほうが、「清潔に使用しましょう」というより、印象が断然いいし、それに従おうという気持ちも強くなる。
話し方の印象がいいと、説得力は高くなる。
このようなことは滅多にないということ自体が疑いを弱めることにつながる。免疫のない出来事は説得されやすい。
特殊詐欺の被害者のなかに、繰り返して被害にあう人もいる。
ものすごくよく出来た台本があり、そこからひっぱり出してくるのです。
学習性無力感というコトバがあるそうです。今の世のなかにぴったりのコトバですよね・・・。
本書の後半では安倍首相のウソと詭弁を見事に論証しています。
先日の参院選でも、堂々と憲法に自衛隊を書き込んでも何も変わらない、なんてとんでもない嘘を繰り返していました。
「私も妻も一切関係がない。私や妻が関係していたことになれば、間違いなく総理大臣も国会議員もやめる」(2017年2月17日、衆議院)。
ところが、あとになって、この「関わり」というのを「贈収賄に関すること」だと安倍首相は言い換えて、責任のがれを図りました。とんでないごまかし答弁です。安倍首相は直ちに国会議員であるのを恥じて、辞任すべきなのです。
こんな首相が堂々と開き直って居座っている姿は、日本の子どもたちにどうしようもないという無気力感を植えつけていると思います。
それにしても、投票率が5割に達しないというのは日本の民主主義の危機です。あきらめてはけないのですけどね・・・。
(2019年5月刊。820円+税)
2017年5月12日
子どもを追いつめるお母さんの口癖
(霧山昴)
著者 金盛 浦子 、 出版 青樹社
子どもを育てるうえで大切なことの一つは、やれば出来るという自信をもたせることなんじゃないかなと今、私は考えています。どうせ自分はダメなんだとあきらめさせず、ほら、やれば、やる気を出せば、こんなことも出来たじゃないのと、励まし、自信をもたせたら、子どもはぐんぐん伸びていくものだと思います。
周囲が、ダメだ、ダメだと言っていると、本人もやる気を失い、本当にダメ人間になっていくしかなくなります。
我々が話す言葉は、感情あるいは心の状態の反映である。
自民党の大臣たちが、ポロポロと公の場で言ってはならない失言を性こりなく繰り返しているのも、それが彼らのホンネだからです。
政治は万人のためにあるのではない。強い者を、より強くするのが政治の役目だ。下々の者は黙って従っていればいい。
この本心が、安倍内閣の大臣たちの相次ぐ失言として日の目を見ているわけです。
喜びや楽しさや安心に、共感してもらいながら育った子は、喜びや楽しさや安心の表現が上手な子どもになる。
もちろん、不安や怒りや悲しみにも共感してあげることも大切だ。共感されて、不安、怒り、悲しみを取り除いてもらったり、取り除くことを手助けしてもらって育った子どもは、どのようにしたら自分のなかの不快な状態を上手に解決できるかを知る子どもになっている。
ところが、一方的に怒られたり強引に禁止されることが繰り返されるなかで育った子どもは、自分で感じることをやめ、本当の自分を封印し、ほとんど反発することもできずに従う術(すべ)を身につけてしまう。
親を許す。これは思った以上に大きな意味をもっている。親を許すということは、自分自身をも許すことだからである。
子育ての楽しみって、過ぎてしまえば、こんなにも短いものだったのかと思ってしまうもの。煩わしいけれそ可愛い子ども時代は、本当に本当に短い。
これは、私自身の実感でもあります。だから私は、いつも私のいる居間兼食堂の壁には、子どもたちが幼児のころの可愛かった当時の写真をべたべたと貼りめぐらしていて、折にふれて、それを眺め、古き良き時代を思い出しています。
子どもが反発するとき、それは、たいていの場合、「愛してほしいよ」という救援信号なのである。
うむむ、これは思いつきませんでしたね。でも、たしかに、私もそうだろうなと思います。
私たちの心は、こだわりや傷を一つ、また一つと解消するごとに、自由に、より自由にと解き放たれていく。
子どもに言ってはならない言葉をあげて、その理由が一つ一つ解説されています。いずれも、とっくに子育てを終了し、今では孫育てに関われるかどうかの私ですが、胸にぐさりぐさりと突き刺さってきます。子育て現役の人に一読をおすすめします。
(1997年1月刊。1200円+税)