弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

生物(花)

2015年8月24日

心地いい里山暮らし

(霧山昴)
著者  今森 光彦 、 出版  世界文化社

 うらやましい里山生活の日々を写真で紹介している楽しい本です。
 著者は高名な写真家です。生物や自然をたくさん撮ってきました。そして、ペーパーカット作家でもあり、この本にも見事な作品が紹介されています。
 琵琶湖の西岸、大津市の郊外に居を構えたのです。近くには棚田があります。アトリエをつくり、雑木林があり、ガーデニングエリアをもうけました。近くには水田環境もあります。四季折々の花や蝶そして小鳥たちの素敵な写真が紹介されています。私も花の名前を前よりは知っていますが、著者は知識は数段上回ります。
アトリエの庭先にテーブルを出して休憩中の著者の写真が紹介されています。緑ふかいなかで、時間がゆったり流れていくのです。うらやましいほど、ぜいたくなひとときです。
 ガーデニングをも、私とは違って、明確な目的があります。たとえば、チョウの集まる庭づくりです。
幼虫のエサになる食草も、チョウによって異なる。そして成虫となったチョウの好む花も異なっている。アゲハチョウは、ミカン類が好き。カラタチに目がない。エノキは、オオムラサキ、ゴマダラチョウ、ヒオドシチョウに欠かせない。
 そして土づくりにも精を出します。これは私も及ばずながら努力しています。我が家の庭も、黒づんで、ふかふかしています。おかげで、ミミズも大盛況。そして、モグラが生活しています。
著者が私と違うもののひとつが料理です。いかにも美味しそうな料理に挑戦します。もちろん、地元産の食材をつかうのです。
 里山生活には、いろんな不便も実際にはあると思うのですが、こんな素晴らしい四季折々の風景写真を眺めると、里山生活を誰だって堪能したくなりますよね・・・。といっても、私自身も自然のすぐ近くで生活する楽しみを、日々、実感しています。
(2015年4月刊。2000円+税)

2013年8月19日

植物のあっぱれな生き方

著者  田中 修 、 出版  幻冬舎新書

植物は、動きまわることができないのではなくて、動きまわる必要がないのである。
これって、食べものを探すために一日中うろつきまわる必要はない、ということなんです。ええっ、モノは言いよう、とらえようだと思いました。まさしく逆転の発想です。
 植物は、根から吸った水と、空気中の二酸化炭素を使って、太陽の光でブドウ糖とデンプンという物質をつくっている。この反応を光合成という。中学校で光合成というのを学びました。新任の若い女性教師(生物)をクラス中でいじめてしまった、ほろ苦い覚えがあります。
 植物は、エネルギー源となるブドウ糖やデンプンを自分でつくっているため、動きまわる必要がない。植物は、自分に必要な食べ物は自分でつくるという、「あっぱれ」な生き方をしている。
エジプトの王様だったツタンカーメンの墓が発掘されたとき、エンドウのタネも見つかった。そのタネは発芽して、成長し、花が咲いた。紀元前14世紀から3000年以上ものあいだタネは発芽のチャンスを待っていたということ。これって、すごいことですよね。
植物は、なでられると、触られるという刺激によって、植物のからだの中にエチレンが生まれる。エチレンは、茎の伸びを止めて背丈を低いままにして、茎を太くたくましくする作用がある。そして、植物は自分が支えられるだけの大きさの花を咲かせる。すると、撫でながら育てた植物には、ふつうよりずっときれいな美しい花が咲く。
 ええーっ、そ、そうなんですか・・・。声かけだけではなくて、撫でて、さわってやるといいのですね。
 チューリップのつぼみは、できたあとに8度とか9度という低い温度を3~4ヶ月のあいだ感じないと、成長しない。この性質を利用して、チューリップの球根は夏のあいだに3~4ヶ月間は冷蔵庫に入れておく。こうやって冬の寒さを体感させるのである。
 そうなんです。冷蔵処理ずみのチューリップの球根だと、年が明けてから地植えしても、4月になると、周囲と溶け込むように立派な花を咲かせます。
チューリップに限らず、植物の生きる知恵と実行力に圧倒されました。
(2013年5月刊。760円+税)
 土曜日の午後、会議が終わって映画館に駆けつけました。フランス映画『タイピスト』をみたのです。日曜日の朝刊に主人公の女性が来日中のようで、大きな顔写真つきでインタビュー記事がのっていました。
 1950年代のパリです。町を走る車は、どれも丸っこい形をしています。田舎からパリに出てきて、秘書に就職した若い女性が主人公です。当時、秘書は女性のあこがれの職業だったようです。そして、タイプの早打ちの競争に参加することになります。目もとまらぬ早打ちです。
 オードリーヘップバンによく似た雰囲気の女優です。田舎娘だったのが、次第に見違えるような美人になっていきます。
 ハッピーエンドで、幸せな気分になって帰途につきました。KBCシネマでやっています。ぜひ、みてください。

2011年8月 1日

花の国・虫の国

著者   熊田 千佳慕   、 出版  求龍堂

 理科系美術絵本というサブタイトルのついた本です。
 野山の花に虫や蝶が集まっている様子が見事にスケッチされています。
 この前の日曜日、我が家の庭にはクロアゲハチョウが花のミツを吸いに何度もやってきました。暑い夏に咲く花は少ないので、チョウも大変なんだろうなと思いました。
 トンボのデッサンもあります。なんだかトンボの姿を見かけませんね。うちの庭にやって来るのは夏の終わりころのアキアカネくらいのものです。オニヤンマとかシオカラトンボなど、久しく見かけません。いったい、どこへ行ってしまったのでしょうか。それとも絶滅しかかっているのでしょうか・・・・。
 セミの泣き声もまだまだです。今年の夏は、アメリカに素数セミがあらわれているそうです。17年に1度なんて、不思議なこと限りがありません。地球が氷河期に入ったときに生き延びたセミのようですから、すごいものです。セミの身を凍らしてアイスクリームにして食べるという記事を読みました。美味しいということですが、信じられません。セミはアフリカではフライにしてパリパリかじると言います。まだそっちのほうがよほど美味しそうです。
 日曜日には見かけませんでしたが、マルハナバチもやって来ます。丸っこいお尻をさらけ出して、夢中になって花のミツを吸っている姿を見ると、いとおしくなります。
自然は美しいから美しいのではなく、愛するからこそ美しい。まったくそのとおりだと思います。
さすがはチカボ先生のデッサンです。目も心も洗われます。
(2011年5月刊。1800円+税)

2007年10月26日

花はなぜ咲くのか

著者:鷲谷いづみ、出版社:山と渓谷社
 花の世界の不思議を解明する楽しい写真集です。ホント、花って不思議ですよね。わが家の庭にトケイソウがあります。その花は、まさしく時計の文字盤そっくりです。小さく折り畳まれていたツボミが、ぐんぐん開いていって、見事な大輪の花に変わっていくさまは、見事なものです。よくも間違って折り畳んでしまわないものです。
 花は、虫たちに紫外線を反射してシグナルとメッセージを送っている。花が虫たちに蜜(みつ)のありかを教える標識をネクターガイド(蜜標)という。
 植物たちが心待ちにしているのは、配偶相手と結びつけてくれる仲人、つまり花粉の運び手となる動物(ポリネータ)である。いかにポリネータを操って、よき配偶者と出会い、健全な子孫を残すのか。花には、そのための知恵が結実している。
 花とその花粉を運ぶ動物との関係は、お互いに利益を得ることで成り立つ相利共生関係である。花は動物に花粉を運んでもらうことでタネを結ぶことができ、動物は蜜や花粉などのエサにありつける。お互いに利益を得ることで、相手を必要としている。
 タンパク質やミネラルの豊富な花粉を報酬とするのは、植物にとっては相当な経済的負担となる。もっと安上がりにしたいと思って選ばれたのが甘い蜜。これは光と水さえ十分にあれば、二酸化炭素と水を材料として、いくらでも光合成でつくり出すことができる。そして、ポリネータに気に入ってもらえるように、蜜には糖以外の滋養分もほどよく混ぜこまれている。たとえば、アミノ酸。
 早春に咲くザゼンソウのお礼は、暖かい部屋。つまり、積極的に発熱し、暖かい部屋を用意して虫たちを招き寄せる。
 マルハナバチは、その個体それぞれに、蜜や花粉を集める植物の種類を決めて、同じ種類の花だけを選んで訪れるという性質がある。これを定花性という。同種の花だけを次々に訪れるため、植物からみれば、同種の花に効率よく花粉を送り届けてもらえるわけだ。だから、定花性をもつマルハナバチ類は、ポリネータとして花に絶大な人気がある。
 ふむむ、なーるほど、そういうことだったんですか・・・。わが家の庭にもマルハナバチはよくやって来ます。丸っこいお尻が特徴の愛らしい姿をしています。
 このほか、性転換する植物も登場します。テンナンショウ属マムシグサは性転換する。環境条件に応じた栄養成長と有性生殖の成功に応じて、オスからメスへ、ときにはメスからオスへと、ダイナミックに起きる。
 大自然の奥行きの深さは尽きぬものがあります。
 いま、わが家の庭には秋明菊の淡いクリーム色の花が咲いています。とても上品で、可憐な雰囲気の花なので、私は大好きです。黄色いリコリスの花も咲いています。ヒガンバナは終わりました。芙蓉の花も次第に咲かなくなりました。今年はキンモクセイの香りがしないと新聞のコラムに書かれていました。なるほど、わが家もそうです。たくさん花は咲いているのですが・・・。でも、そのうち例の甘い香りを漂わせてくれると期待しています。実は鉢植えのシクラメンが小さな花を咲かせています。去年の暮れにもらったものを今回はじめて生きのびさせることができました。
(2007年7月刊。1600円)

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