弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年6月 1日

巨大化するアメリカの地下経済

著者:エリック・シュローサー、出版社:草思社
 成人映画は、一般の作品よりも、利幅がはるかに大きいドル箱部門だ。以前はカウンターの下でこっそり売られていたハードコアビデオが、今や個人経営のビデオ店のみならず、大手企業によって市場に送り出されている。ペイ・パー・ビュー方式のポルノ映画が国じゅうのケーブルテレビや衛星テレビで1日24時間、週7日、ひっきりなしに放映されている。ポルノ収入は個人ビデオ店の3分の1、ケーブルテレビの事業主が売上げの70%を手にする。アメリカ国内で制作されるハードコアビデオの4分の3がロサンゼルス郡で撮影されている。
  現在アメリカで売られているハードコアビデオ、DVDの5分の1は素人作品つまりプロでない人間が出演している。見ることの好きな人と見られることの好きな人たちが数億ドル規模の市場でつながっている。南カリフォルニアには、ポルノ業界に入りたい女性があふれかえっている。おかげで報酬が下がり、1シーン150ドルで働く新人もいる。新鮮みを失うので、2年以上も仕事を続けられる女優はまれだ。エイズへの不安が性風俗業界にある。有名なポルノ・スターの多くがエイズにかかっている。
  近年、インターネットを介したポルノの流通が急増している。アメリカ人がオンラインのポルノに費やす額は、いまや年間10億ドルにのぼる。男性の32%、女性の11%がアダルトサイトにアクセスした。聖職者の27%が月2回以上、インターネットでポルノを見ていた。それで『ペイント・ハウス』や『プレイボーイ』『ハスラー』のようなヌード雑誌が衰退した。いまでは30万サイトで無料の性的な画像にアクセスできる。
  デンマークはポルノを合法化してしまった。その結果、ポルノ市場は縮小する一方だ。というのも、合法化してしまえば、大半の人間がポルノを不快で面白味がないと考えるからだ。なるほど、なるほどね・・・。感心しながら読みました。

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黒いスイス

著者:福原直樹、出版社:新潮新書
 ルツェルンに家族で1週間泊まったことがあります。白鳥の泳ぐ静かな湖に面したプチ・ホテルに泊まり、心穏やかに過ごせました。毎夏スイスへ出かけ、3週間も滞在している久留米の大脇弁護士の紹介でしたが、今も感謝しています。
  この本はスイスの影の部分を暴いています。ロマ(ジプシー)を根絶やしにするため、子どもを誘拐して親と切り離し、定着させるようにした。ユダヤ人がドイツでナチスの絶滅政策の犠牲になっていることを知りながら受けいれを拒否してドイツへ送り返していた。核武装も試みていた。外国人にスイス国籍を与えるかどうか住民投票で決めることにしていて、たとえばトルコやユーゴの人々は拒否した。スイスの銀行はマネーロンダリングで巨額の汚れたお金を受けいれている。
  みんな事実そのとおりだと思います。でも、いったい日本人にスイスを非難できる資格があるのでしょうか・・・。私には、それが疑問です。

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1421

著者:ギャヴィン・メンジーズ、出版社:ソニー・マガジンズ
 1421年3月3日。明の永楽帝は鄭和を司令官として、各国の使節を送り返す役目も担う大艦隊を送り出した。100隻、乗組員2万7000人。宝船は長さ140メートル、幅58メートル。宝船1隻で2000トンの積荷を運び、マラッカへ5週間、ペルシャ湾のホルムズへ12週間で着いた。
  中国人は壊血病の危険と予防法も知っていた。ライム、レモン、みかん、ザボン、ココヤシがたっぷり積みこまれ、桶のなかでは1年中もやしを栽培していた。
  この本で、著者は、この中国艦隊が南アフリカもオーストラリアも、カリブ海も、そして北アメリカ大陸にも上陸していたと主張しています。DNAを含めて、証拠はたくさん残っているというのです。なるほど、コロンブスの「発見」より中国人の方が早かったかもしれないな。私も、そう思いました。ポルトガルの前に、中国人が海外で大活躍していたことは争いのない事実なのですから・・・。

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アメリカ時代の終わり

上・著者:チャールズ・カプチャン、出版社:NHKブックス
 今日の世界とローマ帝国末期の世界には驚くべき類似点がある。当時のローマと同様、現在のアメリカは卓越した存在であるが、帝国の中心からパワーと影響力が徐々に拡散するのを目の当たりにするにつれ、覇権の負担に疲れを感じはじめている。
  現在、インターネットにアクセスできるのは世界人口の6%にすぎず、そのほとんどが北アメリカとヨーロッパに暮らしている。持てるものと持たざるものの格差は日に日に広がっている。金持ち国に住む世界人口の5分の1と、最貧国の5分の1の人々との収入格差は1960年の30対1から、1997年には74対1になった。世界人口の5分の4は、世界の収入の5分の1しか得られない国に住んでいる。
  アメリカの一極時代は、あと10年ともたないだろう。ブッシュ大統領は、一般的にリベラル国際主義に熱心でない南西部の有権者に支持を訴えている。彼自身がこの地域の出身であり、大統領になる前は、外国の出来事にほとんど関心を示していなかった。孤立主義と単独行動主義は、実際には、コインの表と裏である。アメリカは、できる限り国際的な関与を避けるべきだが、関与するときには、アメリカの自主性が守られるようなやり方で行うべきである。こう考えているのだ。
  いろいろアメリカについて深く考えさせられる本でした。

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読む。書く。護る。憲法前文のつくり方

著者:大塚英志、出版社:角川書店
  中学生と高校生141人が、自分の言葉で憲法前文を語っています。ええっー、こんなこと中学生が考えているんだ・・・。正直言って、ホント、私はおどろきました。
  1945年8月15日、日本は敗戦。たった1年2ヶ月で憲法が定められた。当時の日本の最高の理性と知能のチームがその作業にとりかかってもなお、どこかに国体護持の意識が働いていた。ここに、それまでの日本国憲法が受けてきた教育から生じる限界性があった。その限界を感じた占領軍から修正が示された。そうして成立したのが現行憲法だ。
  次は高校1年生です。
  肉眼で見たらキレイな日本。双眼鏡で見たらちょっと気になる日本。顕微鏡で見たらドロドロの日本。気持ちは最悪。
  うーん、なるほど、そうだよなー・・・。考えてみたら、気持ち悪くなる軽薄すぎる日本のテレビとマスコミ・・・。ひどいものですよね。
  武器を捨てろ。拘束を解け。
  ひとになる時。今、この瞬間。
  偽善ではない、自由と正義の名の下に。
  最後に、名古屋の市民グループが提訴した「自衛隊のイラク派兵差し止め」裁判の訴状が紹介されています。ですます調のとても分かりやすい内容です。
  自衛隊は武力であっても、交戦権が禁じられているから戦力ではない。他国へ出かけていってアメリカの下で戦争をするという戦力でもない。その意味で、自衛隊は軍隊ではない。今度のイラク派兵で初めて戦力となり、軍隊になろうとしている。憲法9条が今まさに真正面から踏みにじられようとしている。今このときこそ、国民は裁判を起こすべきではないか。
  先日、若手の政治学者の講演を聞いて、なるほどと思いました。福岡でも、イラクへの自衛隊派兵反対(撤兵要求)の裁判が必要ではないか。そう思いました。

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枕草子REMIX

著者:酒井順子、出版社:新潮社
 清少納言の『枕草子』は、もちろん大学受験時代に読みました。古文は好きでしたし、得意科目でもありましたので、高校の図書館で古典文学大系を借り、原典で読んだ覚えがあります。でも、この本を読んで、そんなことが書いてあったのかと再認識させられました。他人(ひと)の悪口を言ったり、品定めをしたり、のぞき見を楽しんだり、まるで当今の女子高校生と同じようなことをしていたんじゃないか。著者はそう言うのです。
  ええっー、そんなことあり、かなあと思うのですが、どうも、あり、のようです。
  説教の講師は、顔がいい人に限る。講師の顔をじっと見つめるからこそ、言っていることの尊さも感じられる。説教の講師は、顔よき。講師の顔をつと見守らへたるこそ、その説く言(こと)の尊さも、おぼゆれ。
  昔、カメラのない時代です。和歌は写真みたいなもの。著者はそのように指摘しています。なるほど、そうなのかー・・・。でも、和歌って、そんなにイメージをわかせるものかしらん・・・。うーん、よく分かりません。
  しばし、平安時代の雰囲気に浸ることのできる本でした。受験勉強で出会ったときの清少納言のイメージが、少しばかり変わりました。

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風雲・祖谷のかずら橋

著者:原田一美、出版社:国土社
 徳島の山奥にある橋の由来を物語るお話です。
  祖谷(いや)では、時の権力者に反抗した一揆や戦いがしばしば起こりました。木地師と呼ばれる山の民もいて、平地に住む里の民との抗争もあったようです。領主・蜂須賀家政と全村あげての戦いに立ちあがっていく様子が、子どもの目を通して語られています。
  かずら橋をぜひこの目で見てみたいと思い、5月末に出かけました。なるほど、徳島市から吉野川をのぼりつめた上流にある秘境の地でした。園尾隆司裁判官(最高裁民事局長)の出身地だということも知りました。ところが、秘境の地がテーマパークに大変身する大がかりな工事が進行中でした。ええーっ、これでは秘境の地ではなくなってしまうよ。そりゃあ卑怯だ(!)と叫んでしまいました(お粗末さま)。

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その借金なんとかしましょう

著者:吉田猫次郎、出版社:朝日新聞社
 天下の朝日新聞が出した本ですから、大変な信用度があります。私がちょこっと自費出版で出したような本とは信用度のランクがまるで違います(悔しいことに・・・トホホ)。自分の倒産、借金整理の体験をもとにした本ですから、借金をかかえた人が解決法を探るうえで役に立つことは間違いありません。
  弁護士に依頼して債務整理をしても借金依存症は治癒しないだろう。もがき、苦しんではいあがって、初めて借金依存症という病気からは抜け出せるものだ。そのとおりだと弁護士である私は思います。借金癖は病気みたいなものなので甘やかして返済を肩代わりすると、絶対にまた借金をくり返し、親子ともども不幸になる。再起に対する強い意志と具体的な事業計画があれば必ず再起できる。私も、同感するところが大です。
  このような猫次郎氏のホームページに30万件のアクセスがあるというのです。やはり弁護士(会)は、この分野でも取り組み不足だと改めて思いました。
  債務整理にはカウンセリングがとても大切だと思っている専門家があまりにも少ないのが悲しいという指摘がなされています。本当にそのとおりです。今でも、クレジット・サラ金被害をなくす運動のリーダーのなかにカウンセリング無用論を繰り返し高言してはばからない人がいるという悲しい現実があります。

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ロングフェロー日本滞在記

著者:チャールズ・A・ロングフェロー、出版社:平凡社
 明治の初めにアメリカから陽気なアメリカ人の青年が日{にやってきました。北海道から九州まで旅行し、東京に家を買って住みつくほど日本を気にいってしまいました。
  アメリカの大詩人ヘンリー・ロングフェローの息子ですから、お金には困りません。せっせとアメリカの家族へ手紙を書いて日本の様子を知らせます。写真もたくさんとっています。日本の様子がよく分かる写真です。たくさんの写真をながめるだけでも、明治の初めの日本の様子が分かってうれしくなります。
  日本の若い芸者たちの写真がたくさん紹介されていますが、笑顔を見せているのは珍しいそうです。現代日本にもいそうな美人です。130年ほど前の日本人ですから、それほど違うはずもないのですが、あまりに今風なので、びっくりしてしまいました。
  日本人ほど芝居小屋や茶屋で楽しむことを知っている国民はいない。服をほとんど脱いでしまい、すっかり寛ろいでタバコをくゆらしたりしゃべったり、食べたりしている。
  日本人は貧しい物乞いの前を素通りすることなどまずない。たとえわずかな金額でも、そこには善意が感じられる。
  明治政府の役人たちは半分以上が道ばたで拾われて、政府のために悪知恵を働かせ悪事を働いたために高い地位を手に入れた。だから、小役人は嘘つきの名人だ。日本人は多かれ少なかれ嘘をつくのが得意だ。
  明治天皇が20歳だが、見たところは30歳のようだ。その顔立ちは極めて日本的で、大きくて平たい鼻、黄ばんだ肌の色。そのまなざしは鋭く輝いていた。あのような顔は江戸の町でたびたび見かけた。衣裳はいたって簡素だ。話すときは決して口を大きく開かず、歯の間から言葉をつぶやくだけ。我々の方をまっすぐに顔を見て話す。優しい慈悲深い表情だ。しかし、口を閉じると、たちまち威厳のある、まじめでむしろ無表情な顔になった。
  明治天皇の表情をじかに見た人の描写を初めて読みました。映画『ラスト・サムライ』に明治天皇も登場していましたが、ロングフェローの描写のとおりだな、私はそう思いました。

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クモはなぜ糸から落ちないのか

著者:大崎茂芳、出版社:PHP新書
 クモの糸の研究を25年以上も続けているというのですから、その持続力には頭が下がります。クモの糸でネクタイを編む可能性を追求しているそうです。クモの糸には柔軟性があるので銃弾のエネルギーを吸収できるから、防弾チョッキの素材にふさわしいというのには驚きました。ただし、草食性のカイコとちがってクモは肉食性だし、共食いの心配もあるので、大量飼育ができません。採算性に難点があります。
  クモの祖先は海中に生活していて、それが淡水へ移って、次いで陸に上がったといいます。クモは、4億年間も生きてきました。クモは昆虫ではありません。昆虫は足が6本で、クモは、サソリやダニと同じく足が8本あるからです。
  クモの糸は粘着性があるわけですが、自分の足がからまないのかと不思議に思っていましたが、つくるときには足場糸をはっていて、あとで足場糸を取り外すのです。つまり、自分の足にも下手するとクモの糸がくっつくのです。クモは絶えず2本からなる命綱をつかいながら動いているというのにも驚きました。クモもあわてて地面に落ちてしまったら死ぬのです。身が軽いから、そんな心配はないと私は思っていました。
  生まれたばかりの子グモたちの群に棒を入れたところ、一番下でフラフラしている子グモをその上にいた子グモが助けに降りて、上に引き上げてやった。しかも、牽引糸をすべて集めるという整理整頓までした。そんな観察が紹介されています。子グモ同士が助けあっているというのです。とても信じられませんよね・・・。

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動物と人間の世界認識

著者:日高敏隆、出版社:筑摩書房
 私がいるから世界があるのではない。世界があるから私がいるのだ。唯物論はこう言っていると思います。しかし、「私」が人間でないときに、「私」から見える世界は全然異なるものなんですね。この本は、そこを詳しく解き明かしています。
  人間の目からは、オスもメスも白色にしか見えないモンシロチョウですが、オスとメスとでは色が違います。メスは紫外線と黄色のまざった色なのです。モンシロチョウには紫外線が見えるから、その違いが分かるのです。ところが、モンシロチョウには赤が見えません。しかし、アゲハチョウには赤が見えます。ネコは、紙にネコの絵を描くと、ホンモノのネコと誤認してしまう。近寄って匂いをかいで、やっとネコじゃないと認識する。
  メスのニワトリの耳に手術して聞こえないようにしたら、卵を産んだものの、かえってヒナを次々に親ドリがつついて殺してしまった。ヒナドリの声が聞こえないから、怪しげな侵入者だと誤認して殺してしまったのだ。
  このように、目だけでなく、耳や鼻も世界を認識する手段として重要な役割を果たしており、それによって全然別の「世界」がそれぞれの動物にはあるというのです。本を読むと、「私」たちの世界も広がるというわけなんです。

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復讐総会

著者:江上剛、出版社:新潮社
 会社勤めの経験のない私が言うのもなんですが、大会社はどこも闇の世界と深くつるんでいる気がしてなりません。大会社には、たいてい汚れた仕事をする専門の部署があり、ベテランがいます。そして、ときどき摘発され、自殺者まで出ることがあります。
  でも、いつかの新聞コラムに「盆栽でしかない」と評されていました。要するに、上の方へ(司直の手は)伸びなくて、下に広がるばかりだ、というのです。なるほど、言い得て妙ですね。
  第一勧銀の銀行マンとして、最後は広報部次長の要職まで勤めた著者が、非情な銀行の内幕を暴いています。ストーリーとしては、少々できすぎという気もしましたし、退職刑事でこれほど人情味(そして信望)もある人がいるだろうか、と疑問には思いました。
  銀行の貸しはがしの実情も描かれています。過労死した銀行員のお通夜のときに、退職金の金額を並べたて、これだけもらえて良かったですね、そう言い放つ銀行員の同僚も登場します。そういうこともあるんだろうな、そう思いました。会社のためと思って尽くしていた人に対しても会社は非情なものだと、事件を通して何度も思ったことが私にもあります。

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アメリカは恐怖に踊る

著者:バリー・グラスナー、出版社:草思社
 アメリカは怖い国だと私は考えています。そうなんです。いいですか、アメリカでは200万人が刑務所に入っているんですよ。1990年に比べると、なんと2倍増なんです。アメリカ国内には2億5000万挺の銃があり、銃撃によって年間2万8000人が死んでいます。こんな現実を知らされて、恐怖におののかない人がいるでしょうか?
  しかし、と、この本は語ります。アメリカは怖いところだとマスコミや学者が過度に言いたてている現実があることを見抜くべきだ、というのです。
  アメリカでは毎年80万人以上の子どもが行方不明とされています。しかし、と著者は言います。行方不明の子どもたちの実態は、親による虐待から逃げた、別居中の親から連れ去られた子どもというのが大半であって、家族以外の他人に誘拐されたりした子どもは、年に200人ほどしかいない、だそうです。200人は果たして少ないのでしょうか。
  いえ、私も、恐怖をあおる人々の尻馬に乗って騒ぎたてるのはやめようという指摘に、少しばかり反省はさせられました。ゴメンナサイ・・。

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公認・地震予知を疑う

著者:島村英紀、出版社:柏書房
 地震予知には方程式もなく、科学的根拠には乏しいと著者は指摘しています。それは、天気の長期予報と同じようなもので、経験的に予測しているにすぎないということです。海溝型地震の長期的予知については可能としていますが、それも、80年から150年先には起きるだろうという程度のものです。よく聞かされる大地震の前兆があったという話も、結果と結びつけているだけであって、本当にそれが前兆なのか科学的に検証されているわけでもないとしています。
 1978年に成立した大規模地震対策特別措置法については、大変な人権の制限をする有事立法と同じ危険なものだと強く警告しています。なるほど、そうだったのかと思いました。また、大地震によって原子力発電所が被害にあったとき、その被害者は置き去りにされるしかないだろうと指摘しています。放射能汚染はチェルノブイリ事故で起きましたが、同じような事態が日本で発生しないという保障はどこにもないのです。これまた大変なことだと思いました。

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もしかして愛だった

著者:阿川佐和子
  もちろん?「恋愛論」ではありません。食欲と物欲関係について語るアガワ節?炸裂です。「読書家ではなかった」そうですが、文章のセンスって天性のものなのでしょうか。

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ラストファミリー

著者:森村誠一
 炊きたてご飯と辛子明太子のように、どんどん進みます。見事な結末です。「泥棒」役はSMAP草なぎクンで・・・などと「妄想ドラマ」展開(笑)。

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それ行け!トシコさん

著者:群ようこ
 重くならずに読める小説として好きな部類です。へこたれないマイペースさが痛快です。

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池上彰の情報力

著者:池上彰
 「NNK週刊こどもニュース」のおとうさん。「要するにどういうことか」これさえわかれば時事ニュースは怖くない(かも)。この界隈で「我こそ池上彰だ」(自他称問わず)という方がいらっしゃいましたら、ご指導よろしくお願いします。

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ショッピングの女王

著者:中村うさぎ
 遅ればせながら読みました。友人間で「お買い上げの女王」と呼ばれているワタクシですが、決してブランド狂いではありません。モノを買うことが好きなだけ。「ひゃあ〜、また買ってしまった。支払わねば〜」否応なしに勤労意欲向上・・・これからも身を粉にして働きます(笑)。

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聖家族のランチ

著者:林真理子
 女ってこんなに怖いものなのか・・・と驚いた。自分にとってそんなに守りたいものってあるかなぁ・・というのが正直なところです。

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おどおどの頃を過ぎても

著者:阿川佐和子
 とても笑えます。かわいい人です。通勤のお共に、寝る前のひとときにほんわかした笑いをお届けします。

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トキオ

著者:東野圭吾\\n 東野圭吾崇拝者としては特にお薦めです。本当に面白いです。自分の人生を嘆いている、悲観的になっている時にぜひどうぞ。「あんたの人生のカードは決して悪くないよ」この言葉がじんじんきます。

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万華鏡をのぞいたら

著者:黒川博信、出版社:花伝社
  四国新聞に毎週連載されていたものを本にしたものです。
  外国語大学を卒業し、商社で5年間働いたあと、著者は日本を出て世界一周ひとり旅に出かけました。まさにバックパッカーです。その経験をふまえた『バックパッカーはインドをめざす』(集英社)などの本があります。
3年かけて世界を旅行し、郷里の香川県に帰って、今は塾を営んでいます。
  純真な子ども心を今も喪っていないんだな。そう思わせる短いエッセーが満載されています。語学ができるって、本当にうらやましいですよね。私はフランス語をあきらめず続けています。日常会話のレベルを脱して、思想を語れるようになるのが目標です。

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大衆文芸評判記

著:三田村鳶魚、出版社:中央公論社
 図書館から借りて読みました。1976年発行の三田村鳶魚全集の一冊です。
  三田村鳶魚は江戸時代に詳しく、時代考証の第一人者でした。有名作家の評判の時代小説が史実に反するとしてバッタバッタと切り捨てられていく様子は、むしろ痛快感を与えるほどのすごさです。なるほど、ちっとも知らなかったー・・・、という話のオンパレードです。
  大仏次郎の『赤穂浪士』について、吉良が小姓の差し出す長い煙管(きせる)を受けとって自分で火皿に煙草を詰めて煙草をのんだと書いてあるが、吉良のような大名もどきの高い地位にいた人物が煙草を自分で詰めてスパスパやるなんて、とてもありえないことだと批判しています。
  吉川英治の『宮本武蔵』については、慶長のころにソバはまだなかったし、茶碗もなかったと批判しています。ここらあたりになると、そうなのかなあ、と思うしかありません。ともかく、江戸時代の日常生活の細かい移り変わりにまで精通しているのには驚くばかりです。時代考証の参考書として読んでみて、先人のすごさに敬服してしまいました。

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いま、法曹界がおもしろい

著者:坂和章平、出版社:民事法研究会
 ベテラン弁護士と新米弁護士のコンビで書かれた本、ではない。もうひとり、なんとベテラン事務局長も執筆陣に加わっているので、本に重層的な深味が出ている。事務職員の眼から見たベテラン弁護士の素顔の一端ものぞける。弁護士と法律事務所って、こんな感じで動いているのかと、外部の人にもよく分かる。
  この本はこの4月からスタートした法科大学院生をターゲットとしている。思いたってから、わずか4ヶ月でこれだけの本に仕立てあげる才能はやはり異才と言うべきだろう。
  大学での授業(集中講義)を2冊の本にまとめたのも読んだが、うーん、よく勉強してると感心した。また、映画評まで本にしている。私も映画はつとめて見るようにしているが、ホラー映画のような見たくもない映画は決して見ないので、映画評論家にはなりたくもない。そこを乗りこえている著者を偉いと言うべきか、私にはいささかのためらいがある。
  ともあれ、大阪の名うてのベテラン弁護士が法曹界の実体を分かりやすく紹介している本なので、初心者には一読をおすすめしたい。

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アメリカ時代の終わり

著:F・チャールズ・カプチャン、出版社:NHKブックス
 アメリカ人はインターネットによって情報をふるいにかけ、興味をもつ電子ニューズレターだけを入手し、関心のあるホームページにのみアクセスしている。人々がインターネットを利用する時間が増えるにつれ、旧来のメディアに費やす時間は少なくなる。広範な意見や事実に触れる機会が少なくなることで、より分極化し、よく考えもしない有権者を産み出すことになる危険がある。インターネットによる政治もまた、フェイス・トゥ・フェイスの接触を減少させ、政治の分裂と霧状化を深刻にする。
  Eメールは意見の交換にはなるだろうが、そこには政治対話に活力を与える感情や手振り身振りが欠けている。実際の顔をつきあわせた接触をなくすことで、インターネットは、孤独と社会的孤立を促進し、身体の近接によって培われる新しい関係を欠いた仮想現実ネットワークを拡大させている。
  事態はどんどん悪くなっているようだ。アメリカ人の若い世代は、ほかの世代と比べてより多くの時間をテレビとインターネットに費やしている。こうした個人が成長して、上の世代が亡くなると、市民参加の総量はさらに衰退しそうだ。
  インターネットによって、これまでになく市民は大量の情報を知ることができるようになったという神話がみちあふれています。本当にそうでしょうか。インターネットにのっている情報はテレビで流される娯楽番組と同じで、世論操作の道具にすぎないというと言い過ぎでしょうか?
  私は、もっと生ま身の人間同士のドロドロとしたふれあいがないと、結局、人間として大成しないように思います。小学6年生の女の子がチャットの悪口に怒ってカッターナイフで同級生の女の子の首を切って殺した事件は、このインターネットの仮想現実世界の恐ろしさを象徴しているような気がしてなりませんでした。

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イラク便り

著者:奥克彦、出版社:産経新聞社
 殺された奥参事官(死後、大使)が外務省のホームページに「イラク便り」を連載していたというのを私は知りませんでした。イラクへの人道的な復興支援が大切なこと、そして日本をふくめてNGOの役目がとても大きいことがきちんと紹介されています。国連の機関とともにボランティアが活躍しているし、大きな役割を果たしていることが、現地ではよく見えたようです。
  真面目な人柄が伝わってくる「便り」です。まったく惜しい人が大いなる「誤解」から殺されてしまったものです。残念です。でも、イラクの人々からすると、アメリカ軍の片棒をかついでいる日本は、まさに占領軍の一員であり、敵でしかないのだと思います。自衛隊を派遣している日本の私たち日本人は、イラクの人々からみると加害者以外の何者でもない。私たちは、今、そのことを大いに自覚しなければいけないのではないでしょうか。
  ところで、奥「大使」たちを殺したのはアメリカ軍ではないかという疑惑が依然としてくすぶっています。アメリカ軍も日本政府も、きちんと疑惑を解明しようとしてはいません。たとえば、奥「大使」たちの乗っていた車の銃撃角度です。果たして現地の「テロリスト」によるものなのか。本当はアメリカ軍がやったのではないのか、という点です。
  アメリカ軍は「テロリスト」の犯行と決めつけていますが、必ずしも信用できる説明にはなっていません。そもそも「テロリスト」が犯行というのにも疑問があります。アメリカ軍に反抗している地元勢力を「テロリスト」と呼んでいいものなのでしょうか。
  奥「大使」のメッセージが素直に読めるだけに、イラクの人々の置かれている現実の複雑さを考えさせられます。

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在日、激動の百年

著者:金賛汀、出版社:朝日新聞社
 日本と韓国・朝鮮との関わりは実に深いし、微妙なものだということを、この本を読んで痛感させられました。
  日本が朝鮮半島の主権を侵して併合し、植民地としたことから、加害者であることは言うまでもありません。強制的に朝鮮人を連行して日本各地で働かせた事実もあります。実は、私の父も三井の労務係として、その徴用に手を貸した事実があります。ところが、日本政府は、一時期、朝鮮半島から日本へ流入するのを禁止したこともあるというのです。日本にやってきて食えない朝鮮人を面倒みきれないということで、しめ出そうとしたのです。しかし、戦争末期の人手不足のとき、またもや徴用を再開しました。
  終戦後、朝鮮半島へ多くの人が帰っていきました。しかし、その一部がまた日本へ環流してきました。食えなかったからです。さらに、北朝鮮への帰還問題があります。「天国」ではないようだということが知れわたって、帰還者は激減した。しかし、家族が「人質」のようになった人々は、北朝鮮を批判できなかった。そういうことが書かれています。
  左翼陣営そして反共陣営のそれぞれの内部矛盾も紹介されています。本当に難しい事態に直面し、それぞれの戦後があって今日を迎えているわけです。よくよく勉強になりました。

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炭鉱町に咲いた原貢野球

著者:澤宮優、出版社:現代書館
 1965年8月。私の高校2年生の夏のことでした。甲子園に初出場した三池工業高校ナインが、あれよあれよというみるまに勝ちすすんで、決勝戦へ進出し、なんと優勝してしまったのです。当時の人口21万人を上まわる35万人が三池工ナインを歓迎すべく大牟田の街道を埋め尽くしました。
  実は、わが生家は、その三池工業高校のすぐ前にあり、小売酒屋を営んでいたのです。8月25日は、黒山の人だかりのため、まったく身動きとれない状況だったことしか記憶に残っていません。
  その優勝に至る試合の経過が刻明に再現されています。当時の選手たちにもインタビューして、何が起きたのか複眼的に後追いすることができます。ところどころに三池争議のことなども紹介されていて、大牟田市民にとっての意義も語られていますから、さらに認識が深まります。それにしても、圧倒的な熱気でした。あのような感動を味わうことはもはやできないことでしょう。

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ベネズエラ革命

ウーゴチャベス演説集、出版社:現代書館
 いまラテンアメリカは大きく変わりつつあることを実感します。コスタリカは軍隊をもたない国として有名です。ブラジルもアルゼンチンも、アメリカべったりの腐敗政権が倒されました。ベネズエラも、いまではキューバと親交を結ぶ国です。
  そのベネズエラで、軍部のクーデターによって倒されかかったチャベス大統領が、国民の自然発生的な大デモンストレーションによって見事によみがえり、政権を確保しなおしました。その当の本人による感動的な演説をまとめた本です。演説集ですから、本としてはくり返しがあります。それでも、聴衆とのかけあいがあるため、かえって人々の息吹にふれられる利点もあります。
  子どもに、本、知識、自由という望ましい武器を与えれば、ファシストのメッセージが子どもに浸透するのは一層困難になる。自覚、組織、動員は大衆の3つの基本的要素だ。
  大多数のメディア、とくに民間テレビ放送が民主主義の認める表現の自由の権利を乱暴に歪めてきた。虚報を流し続け、メディアを心理テロの道具に変えた。
  反動的なクーデター勢力の最大の拠りどころは、民間テレビ放映などのメディアだったという点は、日本人としても大いに自覚すべきところだと私は思いました。日本のメディアの現状は本当にひどいものがあると思います。視聴率競争のもとで、国民が真面目に考えないようにするための空疎で馬鹿げた番組ばかりだと言って過言ではないでしょう。マスコミ、とくにテレビは、もっと社会の現実を直視すべきことを国民に伝えてもいいと私は思います。アメリカ合衆国からの相対的自立を大切にしようとするベネズエラの動きに、日本は大いに学ぶべきだと痛感しました。

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オトナ語の謎

著者:糸井重里、出版社:ほぼ日ブックス
 私たちが日頃なにげなく使っているコトバも、よく考えてみると、不思議なものがたくさんあります。そして、どうしてこんなふうに言うのかなとギモンに思うコトバはもっと多いと思います。この本では、そんな大人の「あいまいな」コトバを紹介しています。
  なるはや・・・なるべくはやくの略。うーん、そっかー・・・。
  いまいま・・・まさにいま、最新の情報として・・・。
  ざっくり・・・だいたい。弁護士会でも、よく使います。
  テンパる・・・忙しくて余裕がなくなって近寄りがたくなっている状態。
  アジェンダ・・・会議における議題。
  スペック・・・性能、仕様。
  シナジー・・・相乗効果。
  マスト・・・非常な重要で外せないものごと。
  デフォルト・・・最初から決められているもの。常識。
  ブレイクスルー・・・マンネリ状態を打破すること。
  てっぺん・・・深夜0時。
  てれこ・・・逆になること。
  私も50年以上生きてきて、それなりに本を読んでいるのですが、それでも、こんなに知らないコトバがあるのかとガク然としました。

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九十三齢春秋

著者:北林谷榮、出版社:岩波書店
 明治44年(1911年)生まれの現役(?)女優です。最新作の映画『阿弥陀堂だより』には腰が抜けるほど感嘆しました。四季折々の風景に見事に溶けこみ、実に自然な、そしてナイーブなお婆さんでした。
  今から30年前、司法修習生のとき、銀座あたりの劇場へ青法協活動の一環として、クラスの仲間たちと『泰山木(たいざんぼく)の木の下で』を観劇に出かけました。舞台を見るのは久しぶり(初めてだったのかもしれません)が、北林谷榮の名演技は今も記憶に鮮明です。実に不思議な役者です。何の違和感もなく、観る者が安心して舞台のつくる世界に没入していくことができます。
  わずか200頁ほどの本ですが、JRの列車の中で一時間ほど一心不乱に読みふけりました。読み終わったとき、心に安らぎというか、ほんわかとしたぬくもりを感じることができました。本が読めるっていいな。自分で自分をほめてやりました。
  よく化けるというだけでは役者は無意味に近い。生まれてから今までの生活の全体が嗅ぎとられるような、根っこのようなところをつかまえて立たなければならないのだ。
  映画『にあんちゃん』にも出演しているらしいので、こんどビデオを捜し、借りて見てみようと思っています。
  劇で天草のお婆さんを演ずるときには、2日ほど前から天草へ出かけて、地元のおばちゃんたちの話にじっと耳をすましたり、その地の人々の生活を自分の身につける努力をするそうです。さすが芸のプロはちがうと、ほとほと感心しました。
  ちなみに、私の母は大正2年生まれですが、いまでは十分な会話は成り立たなくなってしまいました。残念です。

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天下布武の城・安土城

著者:木戸雅寿、出版社:新泉社
 織田信長による安土城の創建当時の姿が、発掘を通じて明らかにされていく過程が紹介されています。ご承知のとおり、安土城は明智光秀による本能寺の変で、わずか3年で焼滅してしまいました。安土城のあったところは安土山と呼ばれて海に囲まれていました。空から見た写真があります。戦後の干拓事業によって、今では、周囲の海は埋め立てられて水田になっています。
  大手道の石段には石仏も使われています。でも、これは信長が不信心であったというより、当時はよくあることで、無縁となった石仏は石材にすぎないとみられ、よく転用されていたようです。それにしても、大手道は幅6メートル、直線130メートルです。かなりの勾配があり、そこを登っていくわけですから、頭上にそびえたつ天守閣は、実に壮観だったでしょう。なにしろ天守閣の瓦には金箔が貼られ、キラキラ輝いていたのです。
  安土城には天皇を迎えるための建物も用意されており、そのための本丸御殿より上に信長の住む天守閣があったのです。安土城の様子を知ると、49歳で暗殺された信長が、いかにスケールの大きい人物であったか、より偲ぶことができます。
  この5月、安土城にのぼってきました。現地に立ってみると、信長の発想のスケールの大きさに圧倒されます。近くに「信長の館」があり、安土城の天守閣の5層と6層が想像復元されています。スペインの万博にも出品されたものです。その壮大さに気圧されて声が出ないほどでした。大いに一見の価値があります。
  『安土城』(小学館ウィークリーブック)は、CGも使って、ビジュアルに安土城の全体を復元しています。

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ボクが最後に言い残したかったこと

著者:青木雄三、出版社:小学館
 『ナニワ金融道』は私も全巻読みました。大学を卒業して以来、原則としてマンガ本は読まないようにしたのですが、『ナニワ金融道』は弁護士をするうえで勉強になると思って、参考書のつもりで読みました。私の知らないことがたくさん書かれていて、本当に勉強になりました。著者は、肺ガンにかかって病死されましたが、この本は、病床インタビューをまとめて本にしたものです。たいした精神力だと敬服します。
  資本主義万歳!みたいな日本ですが、本当に今のままでよいのか、著者は血を吐く思いで疑問をぶつけています。いま一度マルクスが見直される時代が必ずやってくるという著者の予言は、私も確実にあたる気がしています。

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弁護士の散歩道3

著者:福山孔市良、出版社:清風堂書店
 大阪の福山弁護士の旅行記・エッセー集です。世界各地へ出かけ、ハイキングもしています。スペイン、フランス、アイルランド、イタリアそしてスリランカ。私も、まだまだ行っていないところばかりです。
  日本国内も、伊豆の天城峠、蔵王、郡上、山形の立石寺、飛騨高山、そして唐津や能古島。私も日本全国、いろいろ行っていますが、はるかに上手です。とてもかないません。
  そして趣味がまたすごいのです。ジャズに茶の湯、さらに、なんと文楽まで・・・。
  人間としての幅の広さを感じさせるエッセーと楽しい旅行記です。弁護士って、定年を気にすることもなく、好きなようにのびのびやれるものなんですよね。でも、その割には、あくせく仕事に追われるばっかりで、いかにも疲れている弁護士が周囲には目立ちます。もったいないですよね。残念ですね・・・。

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迷走する帝国

著者:塩野七生、出版社:新潮社
 「ローマ人の物語」も12冊目となりました。1年に1冊のペースでローマ帝国をたんねんに掘り下げていく著者の執念にはホトホト頭が下がります。
  ローマ帝国も3世紀になると、その栄光を謳歌するどころではありませんでした。カラカラ帝にはじまり、カリヌス帝まで、わずか73年間に皇帝が22人も登場する。しかも、たった3ヶ月で暗殺されたり、わずか半月で自殺ないし戦死した皇帝がいる。最長15年のガリエヌス帝も在位13年のセヴェルス帝も、いずれも暗殺されている。自然死(病死)した皇帝は2人しかいないが、それも在位は8ヶ月であり、2年でしかない。
  暴君として名高いネロ皇帝だって在位は14年だった。アウグストゥス皇帝などは在位44年だった。それに比べると、まさに異常な3世紀だ。この本は、その異常な3世紀の実相を詳しく描いている。
  ちなみに、ローマ皇帝に戴冠式というものがなかったことを初めて知った。ローマ教皇がナポレオンに皇帝冠を授与するなんていうことはありえなかったのだ。そもそも、ローマ帝国では、皇帝冠すら存在していない。樫の葉をリボンに縫いつけてつくった市民冠を皇帝の象徴としたのは、市民の安全を守るのがローマ皇帝の責務の第一とされていたからだという。なるほどと思った。

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