弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年6月 1日

アメリカ時代の終わり

著:F・チャールズ・カプチャン、出版社:NHKブックス
 アメリカ人はインターネットによって情報をふるいにかけ、興味をもつ電子ニューズレターだけを入手し、関心のあるホームページにのみアクセスしている。人々がインターネットを利用する時間が増えるにつれ、旧来のメディアに費やす時間は少なくなる。広範な意見や事実に触れる機会が少なくなることで、より分極化し、よく考えもしない有権者を産み出すことになる危険がある。インターネットによる政治もまた、フェイス・トゥ・フェイスの接触を減少させ、政治の分裂と霧状化を深刻にする。
  Eメールは意見の交換にはなるだろうが、そこには政治対話に活力を与える感情や手振り身振りが欠けている。実際の顔をつきあわせた接触をなくすことで、インターネットは、孤独と社会的孤立を促進し、身体の近接によって培われる新しい関係を欠いた仮想現実ネットワークを拡大させている。
  事態はどんどん悪くなっているようだ。アメリカ人の若い世代は、ほかの世代と比べてより多くの時間をテレビとインターネットに費やしている。こうした個人が成長して、上の世代が亡くなると、市民参加の総量はさらに衰退しそうだ。
  インターネットによって、これまでになく市民は大量の情報を知ることができるようになったという神話がみちあふれています。本当にそうでしょうか。インターネットにのっている情報はテレビで流される娯楽番組と同じで、世論操作の道具にすぎないというと言い過ぎでしょうか?
  私は、もっと生ま身の人間同士のドロドロとしたふれあいがないと、結局、人間として大成しないように思います。小学6年生の女の子がチャットの悪口に怒ってカッターナイフで同級生の女の子の首を切って殺した事件は、このインターネットの仮想現実世界の恐ろしさを象徴しているような気がしてなりませんでした。

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