弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

生物

2022年11月28日

ナメクジの話


(霧山昴)
著者 宇高 寛子 、 出版 偕成社

 なぜか、わが家の台所にドデーンとナメクジが鎮座ましますのを発見することがあります。本当に不思議です。外から侵入してくる経路はそんなにないはずなのですが...。
 というわけで、ナメクジとは、いったいいかなる生物なのかを知りたくて読んでみました。
 とても分かりやすいナメクジの話です。でも、実のところナメクジは謎だらけの生物だということが分かりました。カラー写真がありますので、わが家のナメクジは記憶に照らしあわせると、日本古来のナメクジだと思います。
 日本にずっといるナメクジは、全体的に太くて、灰色。この本の著者が主として研究しているのは、チャコラナメクジ。背中に2本から3本の黒い線がある。
 ナメクジは貝の仲間で、タコやイカと同じ、軟体動物。ナメクジには殻はない。そして陸にすんでいるのに「貝」。陸にいる貝のうち、大きな殻をもつのをカタツムリと言い、殻をもたないのをナメクジと呼ぶ。
 ナメクジにも人間と同じように顔があり、皮膚の下には、脳・心臓・肺などがある。顔は、ふだんは体のなかに隠している。
 ナメクジの目は、明るいか暗いかが分かるだけ。においを感じる能力のほうが強い。
 ナメクジは、なんでも食べる雑食。ミミズや昆虫も食べる。
 口には、大根おろし器のように小さい歯がたくさんついた「歯舌」(しぜつ)があり、これをエサに押しあてて、ゴリゴリと削って食べる。
ナメクジは、1匹のなかにオスとメスの両方の機能をもっている。しかし、ほかの個体と交尾することによって、初めて卵をつくることができる。ナメクジは交尾したあとしばらくして卵を産む。
 ナメクジのべたべた粘液は乾燥から身を守っている。また、粘液の上で腹足を波打つように動かして前進する。だから上下に波打ったり、くねくねする必要がない。ただし、ナメクジは前にしか進めない。後退できないのですね。
 ナメクジの寿命は、短くて数ヶ月。長いものは2~3年ほど。そんなに生きるのですか...。
 ナメクジに塩をかけても溶けているのではない。水分を失って、身が小さくなるだけのようです。
 ナメクジには光周性がある。
 ナメクジを飼って育てるにはタンパク質が必要。金魚のエサや固形のドッグフードも買って与える。
 ナメクジへの多くの人々の反応は、「ギャアア...」が多い。そこで、やはり「敵」の実体を知っておくべきなのですよね、きっと...。面白い本でした。
(2022年9月刊。税込1650円)

2022年11月21日

カタニア先生は、キモい生きものに夢中!


(霧山昴)
著者 ケネス・カタニア 、 出版 化学同人

  鋭い感覚の奇妙な鼻をもつホシバナモグラが真っ先に登場します。
なに、何、このイソギンチャクみたいな鼻が、いったい何のために地中を掘って生活するモグラにあるのかな...。こんなヒラヒラするものが鼻の先について、地中を掘り進むのに、いったい邪魔にならないのかしらん。うむむ、どう考えても不思議だ、フシギ。
ホシバナモグラは、モグラの一種なのに泳ぎが得意。北アメリカのもっとも寒い地域で、冬眠もせずに生活している。
ホシバナモグラの鼻の「星」は嗅覚器官ではなく、触覚受容器。ホシバナモグラの鼻の先の星には、ヒトの手の触覚神経線維の6倍が集中している。
ホシバナモグラは、恐らく、地球上でもっとも高感度であり、高解像度の触覚系だ...。
ホシバナモグラは、世界一食べるのが速い哺乳類。これはギネス世界記録として認められている。ホシバナモグラは、小さくしてじっとしている獲物を、瞬時に見つけて食べる。しかし、高速移動する相手を追いかけて捕まえるのは、まるで下手。
魚は「見たものを信じる」のではなく、「聞いたものを信じる」。魚の聴覚は実に速い。
平原にすむミミズを捕獲する。そのためには、鉄の棒を地中20センチまで打ち込む。それから、杭の頂上を鉄の棒でこすりはじめた。低い振動音が土のなかに反響し、森中に広がる。すると、まもなく巨大なミミズが地面にはいあがってくる。モグラが掘りすすんで近づくと、ミミズは地表に逃げている。
次は獲物を麻痺(まひ)させてしまうデンキウナギ。強力な電気を、いったいどうやって発生させ、自分の身は損なうことなく獲物だけをしびれさせるなんて、まさしく神業(かみわざ)...。
デンキウナギは、全魚の体の動きのすべてをわずか3秒以内に一時停止させる。
エメラルドゴキブリバチは、ゴキブリを殺さず、一時的に麻痺すらさせなかった。このハチは、獲物となったゴキブリを何も考えずに従順に従うだけの奴隷にさせる。ゴキブリの胸部にハチは毒針を挿入する。毒針にあるセンサーを使い正確無比な第1弾をお見舞いする。ゴキブリは、生きたまま、ハチの幼虫に食べられる。ゴキブリは反撃もせず、ハチの幼虫に生きたまま食べられる。
不思議、ふしぎ、フシギ...。世界は本当に不思議に満ち充ちています。
フシギをそのまま放置せず、不思議なものとして追跡を始めようと呼びかけている本でもあります。
(2022年8月刊。税込2530円)

2022年11月19日

もえる!いきもののりくつ


(霧山昴)
著者 中田 兼介 、 出版 ミシマ社

 いろんな生き物をめぐる不思議な話が満載です。
 托卵(たくらん)とは、たとえば、カッコウは自分で巣をつくらず、違い種類の鳥の巣に卵を産みつける。 托卵される側が、なぜ他人の子を受け入れるのか...。
 托卵を受け入れたときにはあまりない、コウウチョウによる襲撃が半分の巣で起きた。これは、みかじめ料を要求し、それを拒否した店をめちゃくちゃに壊してしまうマフィアのやり方にそっくり。ええっ、そういうことなんですか...。
 ミツバチはゼロが分かるという実験にも驚かされます。
 ミツバチは、1から4までの数を区別できる。そして、何もないという状態は、1、2、3より小さい数、つまりゼロとして扱っている。
すごいですね、学者って、いろんな実験手法を次々に考え出し、比較検討して成果をひとつひとつ積みあげていくのですね。本当に尊敬します。
 子ブタたちは戦ごっこで遊んでいると、大きくなって、誰が強いかを決めるための本当のケンカをしたとき、メスは勝者になることが多い。ところが、オスの場合は真逆で、子ブタ時代によく遊ぶと、大人になってケンカに負ける。ええっ、よく遊ぶと、ケンカに弱くなるなんて、信じられません。
 新聞に連載されていたもののようですが、とても面白い本でした。
(2022年7月刊。税込1980円)

2022年10月31日

パンダ「浜家」のファミリーヒストリー


(霧山昴)
著者 NHK取材班 、 出版 東京書籍

 日本にパンダがいるのは、東京の上野動物園、神戸の王子動物園、そして和歌山・白浜のアドベンチャーワールドの3園だけ。
 40年以上も前に子どもを連れて上野動物園にパンダを見に行ったときは、昼間なのでお目あてのパンダは寝ていましたので、よく見ることができませんでした。神戸には行ったことがありませんが、白浜のアドベンチャーワールドにはすぐ目の前でパンダがゆったり歩き、竹を食べていましたので、それこそ大興奮しました。
 アドベンチャーワールドには2回行きましたが、パンダをじっくり見たいなら、やっぱりここです。白浜温泉に1泊して、ゆっくりパンダを眺めると、ストレス発散まちがいありません。
 「浜家」のパンダファミリーとは、中国と提携しているアドベンチャーワールドでオスのパンダ「永明(えいめい)」が次々に子をもうけ、なんと16頭ものパンダの父親となったことによります。その子どもたちは、白浜で生まれたので、みな名前に「浜」がついています。それで、永明につながるパンダを「浜家(はまけ)」のパンダと呼んでいるのです。
 パンダの寿命は野生では15年ですが、飼育していると30年は生きます。永明がまさに30歳。人間でいうと90歳。まだまだ元気です。おっとりした性格で、いつものんびりしているのがいいようです。人間も同じですね。
 この本を読んでパンダにも右利きと左利きに分かれていることを知りました。永明は右利き。竹を食べるようになると、よく使う手(利き手)が分かるそうです。
 パンダは竹だけを食べるのではありません。雑食性の動物です。やはりクマの仲間なのでしょうね。肉も魚も昆虫も食べます。アドベンチャーワールドでは、竹以外に補助食としてリンゴ、ニンジン、動物用のビスケットを与えています。
 竹でも、どんな竹でもパクパク食べるパンダもいるけれど、永明は竹の選り好みがとても激しく、気に入らないと少しかじってポイ、匂いをかいだだけでポイしてしまう。
 永明の好む竹を求めてスタッフは駈けずりまわり、ようやく園内に植えて、食材を確保したとのこと。
 パンダの眼はあまり良くないようだが、鼻と耳は、とても良い。飼育スタッフの声は、ちゃんと聞き分けている。
 ちなみに、白浜にパンダがたくさんいるのは、中国のパンダ基地にいるパンダが病気で全滅しないようにするための安全策という面もある。白浜で生まれたパンダが中国に戻っていくのは、そんな交換条件があるからでもあるが、とても合理的なシステムだと思います。もちつ、もたれつのいい関係なのです。
 それにしても、何度みてもパンダの写真集って、心がなごみますよね。パンダ、万才です。NHKの番組が本になっています。
(2022年7月刊。税込1430円)

 日曜日、よく晴れた気持ちのいい朝でした。
 フェンスにジョウビタキがやってきて、しきりに尾っぽを振って挨拶してくれました。ほんとうに可愛らしい小鳥です。
 フジバカマの花が、白い花も茶色っぽい花もまっさかりです。アサギマダラは来てくれないかなと見守っていると、茶色の派手なチョウが一匹やってきました。でも、アサギマダラではなさそうです。
 庭師さんに伸びすぎた本を刈り込んでもらい、庭がずいぶんすっきりしました。今は芙蓉のピンクの花が咲いています。
 午後から、チューリップの球根、そしてアスパラガスを植えました。春にそなえます。今年もあと2ヶ月、早いものですね。

2022年10月28日

深海学

深海学
(霧山昴)
著者 ヘレン・スケールズ 、 出版 築地書館

 この本を読んで、私は二つの謎に直面しました。その一は、地球上の海が、いったい、どうやってこれほど大量になったのか、ということです。だって、地球は生成当時は「火の玉」だったわけですよね。それが冷たくなったとしてても、水が簡単にできるはずはありません。さらに雨粒ができたとしても、今のような大海になるなんて、いったい、どれくらいの年月がかかることでしょうか...。200メートルより深い海の水の総量が10億立方キロメートル。アマゾン川は、80分ごとに1立方キロメートルの水を海に流しているが、この量で深海全体を満たそうとすると、15万年かかる。いやはや、「海の水はなぜ塩辛い」という難問の前に、なぜ海水はこんなに大量にあるのか、どこから来たのか、のほうがより難問ですよね。その答えは、今のところ、太陽系の外縁から氷の彗星が初期の地球に衝突して水が供給されたというもの。つまり、水の起源は宇宙(空)から降ってきたものなんです...。
 もう一つの疑問は、深海に光が届かいのはなぜか、です。海面から1000メートルより深い深海には太陽光は届かず、漆黒の闇となる。では、光の粒子は、いったいどこへ行ってしまったのか。光の粒子を吸収したものって、何なのか...。私には理解できません。また、もう一つ、光って粒子であると同時に波でもあったのですよね。だから、光は、何万光年も先まで届き、また、やって来るのでしょ。波は、いったい、どうやって深海中で消えてしまったというのでしょうか...。これら疑問の答えを、ぜひ教えてください。
 マリンスノー(海の雪)は、おもに植物プランクトンや動物プランクトンの死骸や糞で、それらがプランクトンやバクテリアの分泌する分子からできる粘着性物質でつなぎ合わされている。
 マッコウクジラは推進2000メートルまでフツーに潜れる。3000メートル近くまで潜ったという記録もある。なぜ、そんな深海までマッコウクジラは潜れるのか...。マッコウクジラは独自の手法で体に酸素を蓄えている。つまり、筋肉や血液中に酸素を蓄える。血液は糖蜜のようにドロドロ。それは、酸素と結合するタンパク質であるヘモグロビンが詰まった赤血球の占める体積が多いから。
 ミログロビンというタンパク質は、酸素と結合して、筋肉を黒に近い色に染め、必要なときに酸素を放出する。マッコウクジラは深海では、心拍数を下げて、蓄えた酸素の消費量を減らす。そして、潜水中に必要のない臓器への血管をふさいで血流を止め、その分で生かせる酸素を脳と筋肉に使う。
 マッコウクジラは、深海では音を突発的に発し、音響定位で獲物のイカを探して、追いかけ、食べる。まるで、水中版巨大コウモリのよう。
 深海には地上の光が届かないので、真っ暗。ところが、深海には発光する魚類がいる。
 深海に生息する魚類は、きわめて良い視力を進化させた。どの魚も生物発光を感知するため。目は超高感度になり、網膜には、数十もの光・色素をぎっしり並べて異なる波長の光を見分けることができる。そのため、ほかの動物が発する弱い光の点滅が見えるだけでなく、発する光の色の違いも見分けられる。
 深い海に生息する生き物の多くは寿命がとても長い。深海の動物たちは、何事も時間をかけ、ゆっくりと成長し、わずかばかりのエサが通りかかるのを待ち、次の交尾の機会がめぐってくるのを辛抱強く待つからか...。
 深海をめぐる深刻な問題点も指摘されています。その一は、マイクロプラスチック。その二が、地上の有毒廃棄物を深海に捨ててきたこと。その三が、放射性物質の捨て場になってきたこと、です。いずれも本当に深刻な問題だと思います。
 深海をめぐる根本的な問題が、いくつかの光をあてて浮きぼりにされていて、大変勉強になりました。人類が末永く生きていくためには、今を生きる私たちのやるべきことは多いことを痛感させられました。見えないから何もしなくてよいという問題ではないのです。
(2022年6月刊。税込3300円)

2022年10月 3日

生命の大進化40億年史


(霧山昴)
著者 土屋 健 、 出版 講談社ブルーバックス新書

 地球の歴史は46億年。39億5000万年前に生命が誕生した。そして30億年以上かけて生命はゆっくりと進化していった。
 5億7500万年前に、多様な生物群が出現。
 5億3900万年前のカンブリア紀に、動物たちが本格的な生存競争を始める。その後、オルドビス紀、シルル紀、デボン紀、石炭紀、ペルム紀という6つの「紀」があり、2億8700万年間を古生代と呼ぶ。古生代が始まったときには、海域だけだったのが、次第に陸域へ進出した。
 カンブリア紀には爆発的な多様化が誕生した。まさしく奇妙奇天烈な格好の生物が無数にあらわれました。有名なアノマロカリスも、今ではたくさんありすぎて、さらに細かく分類されているようです。
 そして、動物が眼をもったことが進化を加速させたというのが通説になっています。なるほど、見えるのと見えないのとでは、進化の様相が違ってくるでしょうね。
 そして、ついにサカナが登場。すべての脊椎動物はサカナから始まった。初期のサカナたちには歯もアゴもなかった。海底にたまった有機物を吸い込むだけだった。
 カンブリア紀から現在に至るまでに5つの大量絶滅事件があった。ビッグ・ファイブともいう。シルル紀の海で、サカナたちの進化は進んだが、まだ弱者だった。カンブリア紀以来、1億年以上にわたって海のみを生活と進化の舞台としていたサカナたちの中に、陸に上陸することができるものが現れた。
 サカナから四足動物が誕生するにあたって、からだのつくりは、タテ型からヨコ型へと変わり、眼の位置も変わり、胸びれと尻ビれ以外のひれは消失し、胸ビレと尻ビれは骨と筋肉と関節をもつ足へと変化し、あわせて、肩や腰、首などをもつようになった。
 石炭紀の大森林の主力はシダ植物。このころのシダ植物は、日陰ではなく、日向の主役だった。
 150点をこえるカラー画像もあって、生物の進化を視覚的にたどることのできる楽しい新書でした。でも、目の前にある化石をこうやって、いつの時代のものと位置づけられるって、すごいことですよね。
(2022年6月刊。税込1760円)

2022年9月20日

面白くて眠れなくなる進化論


(霧山昴)
著者 長谷川 英祐 、 出版 PHP文庫

 お昼に食事しながらの雑談のとき、突然、私はこの本で得た知識をその場にいた人たちに披攊しました。言わずば腹ふくるる心地だったからです。
 コオロギのメスは、オスの価値をその鳴き声で判断している。オスは「リリリリ」と鳴く。そのとき、1秒間あたり、たくさん「リ」のパルスがある、つまり、テンポの速いオスの声を好む。
 そこで、まず、それを確認するため、メスを真ん中に置いて、両側に細長い通路をつくって、その奥にテンポの違うオスを置いて鳴かせ、メスがどちらのオスを選ぶかを実験する。その結果は、案の定、テンポの速い鳴き方をするオスをメスは選ぶ。
 そこで、次に、メスからのオスの位置を変えてみる。テンポの速いオスを遅いオスよりメスから遠くに置く。すると、その遠さが一定以上になると、メスは近くにいるテンポの遅い、つまり質の悪いオスを選ぶようになる。
 これは「時間割引」という現象。常に死の危険があるため、次の瞬間にも生きている確率は「1」ではない。遠くの質のいいオスを求めて行く途中で天敵に襲われてしまったら、元も子もない。いやはや、こんな実験を思いついて、実際にやってみるんですね...。学者ってホント偉いです。
 いったい、こんな実験が人間の生存に何か関係があるのか、これって人の役に立つ学問なのか...。そんな疑問は無用だと私は思います。疑問がわいたら、それを究明することこそ、人間の、人間たる所以(ゆえん)なのではないでしょうか。
 アリは、全体の3割くらいしか働いていなくて、あとの7割はぼおっとしているだけ...。そして、その働いている3割を強制的に取り除くと、残った「7割」のうちから、またもやその3割だけが働きはじめ、その比率は変わらない。
 なんで、そうなのか...。それは、アリも疲労するから...。たとえば、シロアリは卵を放置しておくとカビが生えて死滅してしまう。そうならないよう、抗生物質をふくむ唾液を卵に塗りつけてカビを防ぐ。これも疲れる作業ではあるので、全員が働いて疲れてしまったら、そのコロニーは全滅してしまうことになる。なので、そうならないように予備軍を確保しておく必要がある。働いていないアリは、まさしくこの予備軍だ。いざとなったら、みんなのために働き続ける。そのときまでエネルギーは無駄使いせず、残してためておく。なーるほど、とてもとても合理的な発想ですよね。
 生物の世界も奥がとても深いことが実感できる、200頁ほどの薄い文庫本です。眠れなくはなりませんでしたが、たしかに面白い本です。
(2022年4月刊。税込836円)

2022年8月27日

進化の謎をとく発生学


(霧山昴)
著者 田村 宏冶 、  出版 岩波ジュニア新書

 エンハンサーという聞いたことのないコトバが登場してきます。
 進化しているのは形づくりの仕組みだ。
 動物の特徴は、エサをとること。それは、細胞がエサを必要としているから。
 タンパク質は、ヒト(人間)の体の組成成分としては、水(17%)に次いで多く、全体重の16%を占めている。ヒトの体はタンパク質でできているどころか、タンパク質によって作られる。
 エンハンサーは、ある遺伝子が脳で発現したり、心臓で発現したり、あるいは筋肉で発現するのに使われる配列。
 ゲノムは数万個以上になるだろうエンハンサー配列がちりばめられていて、その組み合わせで2万5千種類の遺伝子がどの細胞で、いつ、どれくらい機能するかが決められている。
 ヒトでは、200種類に分化した細胞が、さまざまな機能をもつことによって、ひとつの生命体として統合された運動をしている。遺伝子は2万5千種類しかないので、200種類、37兆個から成るヒト1個体分をつくり出すためには、遺伝子をあちこちで使いまわす必要がある。遺伝子の時空間特異的な発現を可能にするのがエンハンサーだ。
 エンハンサーの働きによって、遺伝子は、いつ、どこで発現して、どれくらいタンパク質をつくのか、制御される。 すなわち、受精卵からゲノム情報をもとに発生する。
 鳥の先祖は恐竜。そして、現生の動物で恐竜に一番近いのは、ワニ。恐竜のゲノムは不明。 化石のなかにDNAや塩基はほとんど残っていない。「ほとんど」というのは、少しは残っているということなのでしょうか...。
 魚のカレイはヒラメに近い仲間。ヒラメは成魚になる過程で右眼が左に移動し、左半身にだけ色がついて、左を上に向けて泳ぐ。カレイは逆に、すべて右に動き、右を上にして生活する。 例外もあるが、ひだりヒラメにみぎカレイと覚える。
 世の中、ホント、知らないことだらけですね...。この本は、とてもジュニア向けだとは思えません。
(2022年3月刊。税込902円)

2022年8月15日

寝ても覚めてもアザラシ救助隊


(霧山昴)
著者 岡崎 雅子 、 出版 実業之日本社

 北海道は紋別(もんべつ)市に日本で唯一のアザラシ保護施設「オホーツクとっかりセンター」があり、そこでアザラシの保護活動に従事している著者によるワクワクドキドキのレポートです。
 アザラシって、ほんと可愛いですよね。著者は小学3年生のときにアザラシに魅せられ獣医となって、その保護のために日々たわむれながら働いているのです。幼いころの夢を実現しているって、素晴らしいですね・・・。
 アザラシは人間と同じ哺乳類。アザラシには18種いる。
アザラシはアシカに比べて前肢が小さく、主として後肢を使って泳ぐ。デコボコの少ない流線形の体形は、水の抵抗を減らし速く泳ぐし、体熱の放散を最小限に抑えるのに適している。
 アザラシの個体識別、つまり全頭を見分けるのは、とても大切なこと。
 紋別のとっかりセンターでは、27頭のアザラシを飼育している。保護されるアザラシは漁網に迷いこんでつかまったり、ケガした個体がほとんど。
 アザラシは乾いても大丈夫で、かえって、水をかけると体温を奪われ、衰弱させてしまうことがある。うひゃあ・・・、そうなんですね。
 アザラシは、一般にはとても臆病な生き物。どころが、例外はあり、人間を怖がらないアザラシもいる。
 保護の必要なアザラシは、いったん海へ逃げても、陸上にとどまるような個体だ。保護したアザラシの生存率は、この10年間で、70%。残り30%は助からない。その死因に、寄生虫感染も多い。
 アザラシは個体によって、好みが異なる。イカが好きなアザラシは多い。ホッケ(魚)は頭、胴、尾のそれぞれについて好みが分かれる。なので、飼育員は、アザラシの好みに応じてエサを与える。いやぁ、これは大変ですね・・・。
 アザラシは頭が良い。飼育員にある名前を覚えている。本名だけでなく、ニックネームも分かっている。そして、他のアザラシの名前も分かっているので、その名前が呼ばれると、その周囲に近づいて、エサを横どりしようとするものもいる。
 アザラシの寿命は30年。保護したアザラシはなるべく海に戻してやる。健康なアザラシは、1週間くらい食べなくても、なんともない。
 ゴマフアザラシは、メスがオスを選ぶ。相性が悪いと、メスはオスをまったく寄せつけない。
 ワモンアザラシのメスは、気が強くて、怒りっぽい。オスはメスの尻に敷かれて、うまくいく。
 ゼニガタアザラシは、一夫多妻制。それでも激しい闘争は見られない。幼いころから顔見知りなので、順位関係ははっきりしているからのようだ。
 アザラシは、飼育員を見分けるのに、声を重要視している。
 アザラシが死亡して解剖しているのを見たアザラシは、そこにいた飼育員を敬遠するようになる。アザラシは賢いだけでなく、仲間の死をいたむ気持ちがゾウのように強いようです。
 たくさんのアザラシの写真があって、とても楽しい飼育日記になっていました。
(2022年7月刊。税込1650円) 

2022年6月27日

生命を守るしくみ・オートファジー


(霧山昴)
著者 吉森 保 、 出版 講談社ブルーバックス新書

ヒトの人体の細胞は、以前は60兆個と言われていたが、今では37兆個とされている。組織によって細胞の大きさは異なっている。
病気になるということは、細胞が病気になるということ。
細胞1個の中に、生物を1個体つくるのにひつような遺伝情報がすべて入っている。
タンパク質は、すべて細胞の中でつくられる。細胞の中のタンパク質をオートファジーで分解してアミノ酸にする。そのアミノ酸を材料にタンパク質をつくる。1日あたり細胞の中にあるタンパク質の1~2%を分解し、できたアミノ酸を材料として新しいタンパク質をつくっている。細胞の中にあるものを分解して同じものをつくることで、何日かで細胞の中身がすべて入れ替わり、新しい状態が保たれる。このような、一見すると意味のなさそうに思える細胞の中身の入れ替えは、実は細胞を新しく健康な状態に保つために必須のこと。オートファジーが起きず、中身の入れ替えができないと、細胞の機能に不具合が出て病気になってしまう。すなわち、オートファジーの3つの主要な機能は、栄養源を確保すること、代謝回転、有害物の隔離除去。
カロリー制限は、ヒトを軽い飢餓状態に陥らせる。飢餓状態になると、細胞はオートファジーによって、自己の成分を分解して栄養源を確保する。つまり、カロリー制限時には、オートファジーが活性化している。なーるほど、そうなんですね。
寿命を決定するには、脳も関わっている。細胞には寿命がある。古い赤血球は4ヶ月、胃や腸の表面の上皮細胞は1日、血液中の赤血球は4ヶ月、骨の細胞は10年、バラバラだ。ところが、ほとんど入れ替わらず、生まれてからずっと使い続けている細胞もある。脳や心臓の細胞だ。
オートファジーは細胞の生存に欠かせない守護神のような存在であり、さまざまな疾患から守ってくれている。
こんなに大切なオートファジー研究をリードしているのは日本だというのです。やっぱり、今すぐには役に立つかどうか分からないような研究であっても、決して無視することなく自由にのびのび研究できるような環境って大切ですよね。いつもいつも目先の利益を追うだけでは大きな世の中の流れについていけなくなるのです。
よく分からないなりに、大切な研究だということだけは、しっかり認識できました。
(2022年1月刊。税込1100円)

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