弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

生物

2021年8月 2日

摩訶不思議な生きものたち


(霧山昴)
著者 岡部 聡 、 出版 文芸春秋

私は日曜日の夜、録画した「ダーウィンが来た」をみるのを楽しみにしています。生物界の神秘の映像を茶の間で気楽にみれるなんて、実にすばらしいことです。でも、みながら、こんな映像を撮っているカメラマンたちスタッフの苦労にときどき思いを至します。
著者は、そんな生物ドキュメント映像を撮るために40ヶ国に出かけ、100種以上の動物に出会いました。そのなかで、何度も怖い目、死んで不思議がないような体験をしています。野生のトラがすぐ目の前にきていたなんて、怖すぎます。
モーリタニアでは野生のハンドウイルカが人間のボラ漁を手伝うのです。イルカだって利益があります。イルカは、人間が投げた網に驚いて逃げるボラを捕まえようと、人間のほうにボラを追い込んでいた。
タテガミオオカミは、ロベイラという苦味のある果実を食べる。これは、タテガミオオカミの腎臓に線虫が寄生していて、放っておくと腎機能が低下して長生きできなくなる。苦いロベイラを食べることで、線虫を駆除している。つまりロベイラの薬効をタテガミオオカミは知って利用しているわけだ。
体長12メートル、重さ15トンにもなるジンベエザメは、クジラに次ぐ巨大生物。ジンベエザメには目立った歯はなく、食べ物は小さなプランクトン。大きな口を開け、海水ごと飲み込み、えらで漉(こ)しとって食べる。巨体を支えるのに必要な量の食べ物を得るため、1日にプール2個分もの膨大な海水をろ過している。
ジンベエザメの寿命は70年。地球上に棲むジンベエザメは、すべて一つの家族のようなもの。これは、世界各地のジンベエザメの遺伝子を比較して判明した事実だ。
オオアリクイには歯が一本もなく、舌が異様に長く、体温が哺乳類のなかで最低。オオアリクイはアリを主食とするが、決して食べ尽くすことはしない。こうやって決してなくなることのない安定した食料資源になっている。
オオアリクイは、舌全体の長さを35%も変化させることができる。口の先から舌を30センチ以上も外に出して、アリを舐(な)ととって食べる。舌を出し入れする速さは1分間に150回。1秒あたり2.5回。オオアリクイの舌から粘液が出て、アリをすくいとる。では、どうして、その粘液は口の周囲をベトベトにしないのか...。
オオアリクイの舌の粘液は、シロアリをくっつける瞬間には粘り気があるのに、口に戻ったときには粘着性がなくなる。
サルの親は子どもサルに食べ物を与えることはしない。積極的に与えるのは人間だけ。チンパンジーやオランウータンでも、そばにいる子どもが自分の食べているのを横から取ることを許すだけで、与えることまではしない。
フサオマキザルは、ヤシの実を石にぶつけてエサをとる。これには2年から4年以上もかかることがある。
面白い本でした。さすが「ダーウィンが来た」のディレクターだった人による本です。
(2021年4月刊。税込1760円)

2021年4月19日

空飛ぶヘビとアメンボロボット


(霧山昴)
著者 デイヴィッド・フー 、 出版 化学同人

ノーベル賞ならぬ、イグノーベル賞を2回も受賞したという著者の話は、さすがに面白い。
ええっ、こんなことまで調べるのか...。たとえば、自分の子ども(赤ちゃん)のおしっこが何秒間つづくのか測ったら21秒だった。そんなの測りますかね...。
そして、では、ゾウの排尿はどれくらいか。まあ、図体がでかいから1時間くらいかな...。と思うと、あにはからんや、人間と同じで、21秒ほど。ほ乳類の動物が、ほとんどこの21秒ほどだというのです。
生理現象のときは無防備なので、敵に襲われると逃げきれない心配がある。そこで、21秒くらいが安全。そうすると、尿道は、それにあわせることになる。直径と長さの組み合わせなので...。イヌ、ヤギ、パンダ、サイ、ゾウの排尿時間は、いずれも10秒から30秒のあいだで、平均は21秒。動物たちの排尿時間は驚くほど近似している。
犬の膀胱は、計量カップほど。ゾウの膀胱は、その100倍以上で、20リットルのキッチン用ゴミ箱を一度のおしっこで満タンにする。尿道の長さと直径の比は、男性25:1、女性で17:1。この比は人間だけでなく、ネズミからゾウまで、あらゆる哺乳類に共通している。学者って、こんなことまで調べるのですね。その発想に圧倒されます。
蚊は、雨の中でも飛べる。なぜか...。空から降ってくる雨粒の重さは、蚊の約50倍。では、蚊はどうして雨粒にぶつかったり、土砂降りのなかでも飛んで(生きて)いられるのか...。
蚊の重さは、雨粒のわずか2%でしかない。あまりに軽いので、雨粒の動きに逆らわない。蚊は雨粒の落下を妨げることなく、ただ受け流す。蚊があまりにも軽いので、雨粒は衝突によって減速しないことから、蚊の体には大きな負荷がかからない。
トビヘビは、高さ50メートルの樹にのぼる。そこから滑空し、100メートル先の地面に、ほんの数秒で到達する。トビヘビの滑空率はムササビを10%も上回り、トビガエルの2倍近い。
トビヘビは空中を落下するとき、はじめは頭を下に傾けていたが、次には頭を上に、尾を下にして、体を水平に近づけた。そして自分の体をS字型に曲げ、空中を泳ぐように波打ちはじめた。地表に着地するときには、着地の衝撃を和らげるため、ヘビは再び体の向きを変え、尾を最初に、頭を最後に着地する。
ヘビの体が「ぬるぬるしている」という俗説は間違い。ヘビの体は濡れたように艶やかだが、触ってみると、さらりと乾燥している。
ヘビの椎骨は、数百個もあり、そのため、ヘビの体は長くしなやかなカーブを描き、体全体を地面につけて力を生み出せる。
アメンボはなぜ池の上をスイスイと動きまわれるのか・・・。アメンボが水の上に立てるのは、体のサイズが小さいおかげで、表面張力を利用できるから。アメンボは非常に小さく、そして軽いので、ふだんは無視できる力の影響を受ける。すなわち、表面張力。表面張力がアメンボの体重を支えるのは、トランポリンがヒトの体重を支えるのと同じ原理にもとづく。
アメンボが空気の層をとらえておけるのは、どんな動物よりも毛むくじゃらの脚をもっているから。つまりアメンボが濡れないには、脚の表面積が毛によって増大したおかげだ。毛と毛のあいだには水が入りこめない。アメンボは、水の上というよりも、空気の上に立っている。脚もとにある空気の層のおかげで、アメンボは、アイススケートをするように、水面をスイスイ滑って移動できる。
そして、著者は、このアメンボをつくってみたのです。それは、ステンレススチールの針金でできている。脚は、水をはじくようにコーティングされている。体長9センチで、重さは0.35グラム。いやあ、こんなことまでしてみるのですね、学者って...。
生物の世界は不思議にみちみちています。私が日曜日夜の『ダーウィンが来た』を毎回欠かさず(録画して)みているのは、その神秘の解明に少しでも近づきたいがためです。
(2020年21月刊。税込2640円)

2021年3月29日

タコは海のスーパーインテリジェンス


(霧山昴)
著者 池田 譲 、 出版 化学同人

タコ焼きのあのタコを見直さなければいけないと思わせる、タコのうんちくを傾けた楽しい本です。
タコは巨大な脳と優れた眼をもち、チンパンジーなどの高等動物顔負けの行動をやってのける。しかも、恐竜たちがいた古い時代から、頭脳と柔軟な身体をつかってしたたかに生きのびてきた曲者(くせもの)だ。といっても、タコの個体は寿命1年ほど。
タコには骨がなく、身体の大半を占めるのは筋肉組織。
タコは左右4本ずつ合計8本の腕がある(イカは10本)。
タコの得意技は物に化けること。タコは周囲のものに化け、溶け込むことができる。姿形を、そのときどきで周囲にあわせて変えることができる。
タコもイカも、瞬時に体色を変える。
タコの生涯の大部分は今なお、具体的にどこで、どのように過ごすのか分かっていない。
タコは身近だが、謎の多い生物。
タコは、貝の仲間から分化した。恐らくそれは6億年ほども前のこと。うひゃあ、す、すごい古―い話なんですね...。
タコのレンズ眼は大きく立派。その眼は、高精度の感覚器官だ。
タコは高度な学習と記憶能力をもつ。
タコは訓練によって学習する能力を有している。マダコは数週間から2ヶ月ほど学習内容を覚えている。
タコも遊ぶ。
タコは単独性。イカには社会をもつものがいる。
自分の近くに他のタコが来ると、タコは離れようとする。ところが麻薬を摂取する(させられる)と、タコは一変して社会性をもつ。
タコにも性格がある。好奇心の強いタコがいる。
タコは色覚を欠く。
タコは、じっとものを見る。凝視する動物だ。
タコの腕には多くの神経細胞があり、感覚器として機能している。
脳よりも腕に、より多くの神経細胞があるので、腕で(触って)考える動物だといえます。
日本はタコをたくさん食べますが、ヨーロッパではあまり食べないようですね。食習慣が違うからでしょう。
(2020年12月刊。税込1980円)

2021年3月23日

新型コロナの科学


(霧山昴)
著者 黒木 登志夫 、 出版 中公新書

新型コロナウィルスは、人々の生活を変え、世界を変えた。経済を破壊し、文化を遠ざけ、楽しみを奪った。
人類は、しばしば感染症に襲われてきた。撲滅された感染症は、天然痘だけ。人類は、これからも感染症と共に生きていかなければならない。
スペイン風邪は、ペストと肩を並べるようなパンデミックを起こした。日本では、1918年ころ、65万人がスペイン風邪のため死亡した。芥川龍之介もスペイン風邪にかかったが、助かった。斎藤茂吉も...。
スペイン風邪と名前がついているけれど、実はスペイン由来ではなく、いちばん確からしいのはアメリカ説。これはこれは、スペインって、とんだぬれぎぬを着せられているんですね...。
ウィルスの、もっとも本質的な特徴は、遺伝情報をDNAあるいはRNAの形でもってはいるものの、その情報をタンパクに翻訳することができないこと。ウィルスを増殖させるためには、生きている細胞を増殖の場として提供し、細胞のタンパク合成工場を貸してやらねばならない。
コロナウィルスは変異が多いように見えるが、実は変異の遅い部類のウィルスである。
うひゃあ、そ、そうなんですか...。
感染の大元は口と鼻。感染者の口と鼻から出た飛沫が飛び散り、さらにエアロゾルとなって、人に感染させる。すべては口から始まり、口に入って完結する。
マスクと手洗いが必要なのは、「災いの元」である口にフタをして広げるのを防ぐため。
合唱団でクラスター感染が起きるのは、長い時間、空気中で漂うエアロゾルが重要な役割を果たしているから。
エレベータ―のボタン、トイレの取っ手、電車の吊り革、およそ人と接触するようなところで、ウィルスは誰かにうつるのをじっと待っている。ウィルスが手につくと、顔(目、口、鼻)を触ったときに感染する。感染の半数は、無症状感染者から。
屋内は屋外より19倍もクラスター発生のリスクが高い。多くの感染者は、注意していながら感染してしまう。本人を責めることはできない。「自業自得」、「感染した奴が悪い」として感染者を排斥すると、差別につながり、科学的な対策の障害になる。
感染者の8割は軽症者。症状としては、嗅覚や味覚の障害があらわれる。糖尿病、高血圧、脂質異常症、痛風、肺疾患で治療している人は、重症化しやすく、死ぬ確率も高くなる。新型コロナにかかって治った人の後遺症として、倦怠感、呼吸が苦しい、咳が多く、記憶障害、睡眠障害、頭痛、味覚・聴覚の障害、脱毛さらには心臓の異常が発見されることもある。
コロナ禍が始まったのは中国。2019年12月に武漢市の医院に患者が入院した。1月18日、武漢市の市民4万人は何も知らされずに、料理をもち寄る大宴会「万家宴」を始めた。これが感染を広げた。5日後に、武漢は封鎖された。
ウ型コロナウィルスは、コウモリ由来であることは間違いない。ただし、意図的に人工的に作られたウィルスという可能性はない。
日本は、コロナによる死亡者数が目に見えて少ない。外国で100万人あたり400人以上の死者を出しているのに対して、日本は9.8にすぎない。日本だけでなく、韓国・ベトナム・ニュージーランド・中国に比べても助かっている。韓国と台湾は、驚くほどすばやく対応した。台湾はその日のうちに対策を始め、1週間のうちに、すべて完了した。日本の対応はスピード感がなかった。
コロナを知るのは必要なことだと、つくづく思いました。
(2021年2月刊。税込1034円)

 急に桜が満開になりました。卒業(園)式のころに満開というのは、例年より1週間早い気がします。
 わが家のチューリップも全開です。庭のあちこちに植えていますし、玄関わきの植え込みも全開で、朝、出かけに声をかけています。
 いつもチューリップ300本植えていると言っていますので、22日の朝、数えてみました。すると、なんと525本でした。9月から12月にかけて植えていったのですが、我ながら驚く数字でした。花粉症さえなければ、春は最高なのです...。

2021年2月22日

里山に暮らすアナグマたち


(霧山昴)
著者 金子 弥生 、 出版 東京大学出版会

日本固有種であるイタチ科動物の二ホンアナグマの生態をずっとフィールドワークで追っていた女性研究者による本です。
フィールドワークをする学生・若者がとても少なくなっているという話が最後に出てきます。著者は女性のフィールドワーカーとして先駆者だったようです。
イタチ科のなかでも土を掘る方向へ進化したアナグマは、前肢が大きく発達し、鋭い爪のある大きな前足を有する。生活のおもな部分は地中の巣穴で過ごすため、おもに嗅覚に頼っていて、鼻が大きく発達している。
アナグマは走行は遅い。
アナグマのおもな餌はミミズ。秋には柿の実を食べる。
穴ごもりの前に体重を50%以上増やし、穴ごもりのあいだは餌をほとんど食べない。
10月半ばから3月下旬ころまで穴ごもりし、4月上旬に出産し、7月末まで授乳する。
けもの道には、高速道路と一般道路がある。うひゃあ、そうなんですか...。
著者は、けもの道の上を実際に四つん這いになって歩いてみたことがあるとのこと。えらいですね、学者って...。
フィールドワークをする人は、基礎体力が必要で、これがないとできない。しかし、同時にデータをきちんととってくる人でなければならない。当然ですよね...。
現場で状況にあわせて柔軟に機転をきかせることができる人、体力が届かない部分を努力と気力で補える人がフィールドワーカーにふさわしい。なーるほど、です。
アナグマはおもに夜行性なので、研究データの取得は夜間。昼と夜が逆転する生活を余儀なくされる。それは大変ですね。
アナグマの母は、ふだんおだやかだけど、出産する前に前年生まれの子どもは威嚇して巣穴から全部追い出してしまう。「涙の子別れ儀式」というものではない。
著者が1990年から6年間アナグマを観察したとき、「コニシキ」と名づけたアナグマがいた。おっとりした性格で、体重は10.7キログラム。アメリカ式の最新式の発信機を装着して、その行動を追跡した。すごく粘り強く観察したわけです。
日の出町には民家に上がり込んで餌をもらうメスのアナグマがいた。「フサチャン」という名前がついていた。写真もありますが、これまたすごいですね...。
この「フサチャン」は5年間に4回も出産して、13頭の子どもを育て上げたとのこと。よくよく観察できました(パチパチパチ)。
「アナグマにとっての世界とは、においによる世界である」
アナグマは嗅覚に頼って生きている動物だということです。
最後に、フィールドワーカーまで絶滅危惧種になりつつあるとされています。残念です。フィールドワーカーは「40歳でピーク」を迎えるとのこと。50代半ばの著者は、それでもまだフィールドワークをがんばっているようです。フレーフレー...。これからも楽しいレポートを期待しています。
(2020年11月刊。3800円+税)

 自宅に戻ると大型の封筒が届いていました。
 仏検の合格証書が入っています。1月末に受験したフランス語の口頭試問(準1級)は無事に合格していました。基準点23点のところ29点です(合格率は22%)。これで、準1級の合格証書は9枚目になりました。2009年以来です。いつもボケ防止のつもりで、とても緊張して受験しています。
 これからもフランス語の勉強は続けるつもりで、このところ、毎週の教室に向けて仏作文にがんばっています。

2021年2月15日

進化のからくり


(霧山昴)
著者 千葉 聡 、 出版 講談社ブルーバックス新書

私はスマホを持たず、いつまでたってもガラケーだけ。それも、いつもカバンの中に入っていて、着信履歴を自宅に戻って充電するときに気がつくほど。
そのガラケーの由来であるガラパゴスについて、「ダーウィンによって発見されたガラパゴスフィンチのくちばしの形状の違い」というのが、実は伝説にすぎなかったというのです。この出だしの指摘には驚いてしまいました。
フィンチ類のくちばしの形状は、わずか40年ほどに変わる。エルニーニョにともなう気候変化によってくちばしの大きさと形は変化するのが認められた。これはダーウィンの発見のことではありません。1970年代からガラパゴス諸島で研究していたグラント夫妻によるもの。
ガラパゴス諸島には年間20万人もの観光客がやってきて、エクアドル経済を大きく支えている。
実は、ダーウィンは、ガラパゴス諸島に滞在中、ダーウィンフィンチにはまったく関心をもたなかった。ガラパゴスがダーウィンの訪れた特別な場所として人々に意識されるようになったのは1930年ころからのこと。
カタツムリのジェレミーの話は大いに受けます。2016年秋、イギリスのノッティン・ガム大学の広報室が市民に向けて呼びかけた。
「孤独な左巻きのカタツムリが、愛と遺伝学のため、お相手を探しています」
ジェレミーとは、ヒメリンゴマイマイというヨーロッパに普通にみられるカタツムリ。ただし、ふつうは右巻きなのに、ジェレミーは100万匹に1匹の確率で生まれる左巻き。左巻きのジェレミーは、右巻きのカタツムリとは交尾ができず、子どもをつくれない。そこで、このジェレミーの相手となる左巻きのカタツムリを市民に捕まえてもらおうという呼びかけだった。
これには各国のメディアが飛びつき、世界中で19億人がニュースを見た。すると、まもなく左巻きのカタツムリが市民から寄せられたのです。イギリスから、スペインのマヨルカ島から...。そして、ついに、ジェレミーの子どもが誕生したのでした。カタツムリって、オスでもありメスでもあるという不思議な生き物なんですね...。
次は、カワニナの話。100万年前、日本列島は大陸と一体だった。そのころ、日本から韓国にカワニナが移住していた。これは常識に反する事実です。DNA解析で判明した事実でした...。
著者は小笠原にもたびたび出かけているようです。
東京から父島まで船で1日。そこから船で2時間以上かけて母島にたどり着く。人口450人の村。今も昔も住民は若い。生活が厳しいので高齢者は少ない。そこでカタツムリを探してまわる生活。それが生態学者なのです。
ちょっとどころか、大いに変わった生態学者たちが次々に登場し、常識をくつがえすような発見をするのです。大自然の厳しさとたたかいながら...。
「むっちゃおもろい」という評言は、決してウソではありません。
(2020年7月刊。1000円+税)

2021年2月13日

南極ダイアリー


(霧山昴)
著者 水口 博也 、 出版 講談社選書メチエ

南極大陸にすむ生物の話が中心です。
今から6600万年前までの中生代のころ、南極大陸は緑が茂っていて、森林には恐竜たちが闊歩していたというのです。首長竜エラスモサウルスの化石が発見されているそうです。地球はそれほど温かかったのでした。暖流が南極大陸の沿岸にもやってきていたのです。今では、南極大陸は切り離されて、寒冷化しています。ところが、再び地球温暖化の影響を受けて、少しずつ生態系に変化が起きているようです。
南極大陸でペンギンたちが広大なコロニーをつくって営巣していますが、これはホッキョクギツネのような捕食獣が生息していないから。
ちなみに、ペンギンって、すべて南半球にいて、北極圏にはいないとのこと。うひゃあ、そ、そうだったんですか...。
南極は、この50年間で平均気温で3度も上昇した。南極に近づくと船は海洋投棄は一切しないことになっている。南極大陸に上陸するときには、靴の底を消毒液で洗浄する。また、外で用を足してはいけない。すべて携帯用のものに入れて持ち帰るルールだ。なーるほど、ですね。なにしろ、年間5万人もの観光客が南極に来るそうですから...。コロナ禍の今は、もちろん違うでしょうが...。
氷山の裏側に珪藻類がはりついていて、これをナンキョクオキアミが食べる。このオキアミは、5億トンと見積もられるほど大量に存在するので、アザラシなどが生息できる。カニクイアザラシは1500~2000万頭が生息している。ザトウクジラもオキアミを食べて生活している。
南極大陸では温暖化がすすむ一方で、降雪も増えている。すると、アデリーペンギンが子育てのための場所を確保できずに困ってしまう。
ザトウクジラは、激減して1万数千頭しかいない状況になったが、完全保護の下で回復し、今では12万頭はいると見込まれている。
ヒョウアザラシと海中で遭遇すると、威嚇するポーズをとるが、何もしないでいると、やがて離れていくとのことです。でも、ちょっと怖いですよね。
ペンギンは、年に1回、新しい羽毛につけ替える。そのときは、じっと動かずエネルギーを消費しないようにしている。
コウテイペンギンの寿命は20年とみられている。体高1メートル、体重は30数キロ。海に入るときも、海から出るときも、全員がタイミングをあわせて一気にやってしまう。恐らく、ヒョウアザラシ対策だ。
南極近くのキャンベル島には、シロアホウドリが1万5000羽いる。
読んで楽しい南極の本です。
(2020年11月刊。1800円+税)

2021年2月 1日

まとまりがない動物たち


(霧山昴)
著者 ジョン・A・シヴィック 、 出版 原書房

イヌは飼い主や周囲の社会集団と一緒なら、別の土地に移ってもおおむね平気でいられる。ところが、ネコの心は環境の変化によって傷つく。ネコに必要なのは、持ち物。ネコが慣れ親しんだモノをもっていくこと。
クモ(キマダラコガネグモ)のメスは、オスと交尾した直後にオスを食べてしまう。そこで実験した。すると、求婚者を殺したメスがいたのに、殺さなかったメスもいた。つまり、クモのメスにも攻撃性の度合いの違うさまざまな個体がいることが判明した。20%のメスは配偶者を攻撃せず、60%のメスはオスを攻撃したものの殺しはしなかった。残る20%だけが交尾の完了前に殺された。メスにとって、オスは交尾の途中からごちそうに変わってしまうのだ。
砂浜にすむシオマネキにも積極的な個体と内気な個体がいる。メスの89%は勇敢なオスをパートナーとして選んだ。つまり、メスを惹きつけたのは、オスの個性だった。このように、長い目で見たら、個性は何より重要な指標になりうる。
シジュウカラの勇敢な個体は、朝と日中の良質の餌を最優先したのに対し、臆病な個体は、餌食にされるより空腹でいるほうを選んだ。
どんな動物にも社会性がある。社会性と結束は、あらゆる動物にとって欠かせないもの。
10代の若者の内面で起こる葛藤に私たちはもっと目を向けるべき。このころ生殖機能の発達は最終段階を迎え、個性が固まっていく。
10代の若者は、誰がかっこよくて、誰がかっこよくないかを判別することで、自分たちに社会性があるか、どれくらい社会的かを判断している。積極性や社会性の高い個体がどれくれいいるかによって、そのグループ全体の個性が決まる。
胎児の発育初期に母親が食糧不足にあっていた子どもは、冠動脈心疾患や肥満、糖尿病にかかりやすい。
人間はニワトリを何世代もかけて生産性を大きく向上させてきた。1950年に1羽で年に270個の卵をうんでいたのが、1990年には340個(29%の増加)、そして卵のサイズも42.7%も大きくなった。
人間は動物から学べることがたくさんある。動物は私たち人間と社会に驚くほど似た性格や習性をもっているから...。人間だけが卓越した存在と考えるのは偏見だ。
多様な個人が集まれば、個人よりも賢明な集団ができる。多様性は非効率に思えるかもしれないが、個人が集団のなかで力を発揮すれば、ひとりで行うよりも多くのことを成し遂げられる。多様な個体によるバランスのとれた協力関係、つまり共生や種内、種間で相互に利益となる関係を築くことが生きる力となる。
みんな違って、みんないい。金子みすずの言っていることは、まったく正しいのですね...。
絆(きずな)は人間同士で結ばれるだけでなく、人間とペット、野生動物、あるいは家畜とのあいだでも結ばれる。
ここで『ライオンのクリスチャン』を思い出しました。赤ちゃんライオンを育てあげたイギリスの青年が大きくなったライオンをアフリカの平原に放したあと、何年後かにやってきたとき、ライオンは青年を覚えていて、大人のライオンと人間が抱きあうのです。これはユーチューブで映像として見ることができます。信じられない光景です。
絆とは愛である、愛とは、個体を、他者と、とりわけ決まった他者と協力したいという気持ちにさせる前向きな力である。愛することは、抗え(あらがえ)ないほど気分のいいことなのだ...。個性と多様性がいかに大切なのかをいろんな実例をあげて説明してくれている動物学の本です。大変勉強になります。
(2020年5月刊。2400円+税)

2021年1月16日

お蚕さんから糸と綿と


(霧山昴)
著者 大西 暢夫 、 出版 アリス館

私が中学生のころ、通学路の途中に桑畑がありました。桑の実も、ほんの少しだけとって食べたことがあります。あまり美味しいと思わなかったので、1回か2回だけです。桑畑があるということは、そこらで養蚕(ようさん)していたのでしょう。
生糸を産み出す蚕(かいこ)は、この本では「お蚕さん」と「さん」づけで呼ばれています。
お蚕さんに満足のいくまで桑の葉を食べさせるため、土作り、肥料など桑畑は手入れが欠かせない。
この本に登場する養蚕農家は春と秋の2回、お蚕さんを育て、糸とりまでしている。飼っているお蚕さんは1万頭以上。1匹とは数えないんですね...。敬意を表しているわけです。
春は桑の葉がやわらかく、秋の葉はかたい。なので、お蚕さんのはき出す繊維は、季節によって手触りが違う。春の糸と秋の糸、糸には季節による違いがある。
うひゃあ、ちっとも知りませんでした...。
お蚕さんの食事は人間と同じで、一日三食。小さいときは1万頭いても1日800グラム、ところが大きくなると、80キロの桑の葉を食べ尽くす。そして大小便もたくさんするから、養蚕農家は掃除も大変。
育てはじめて20日目。お蚕さんが身体をそい上げたら、食べるのをやめる合図。
お蚕さんを1頭ずつ小部屋におさめていく方法と、わらをジグザグに打ったなかにお蚕さんを入れる方法とがある。
そして、お蚕さんは細い繊維は吐き出して、だんだん自分の姿は見えないように、真白いウズラの卵の形になっていく。
お蚕さん1万頭から、やっと着物3着分の糸がとれる。
お蚕さんが蛾になって、繭(まゆ)を破って外に飛び出したら困るので、その前にお蚕さんを殺してしまう。繭が破られたら、長い1本の糸がとれない。お蚕さんが繭から飛び出す寸前に乾燥させて、その命を止める。養蚕農家の仕事はここまで。
次は糸とりの仕事だ。繭は細い繊維でからみあって1本につながっている。
長いものは1500メートルになる。それを、20個ほどあわせると、1本の生糸・絹糸になる。
繭を80度の湯の中に入れて、繊維を取り出し、20本で1本の生糸にしていく。糸はあくまで均等な太さの糸にしなければいけない。糸とり機がまわる。
綿花からできている綿は木綿(もめん)。お蚕さんからできている綿は真綿(まわた)という。
真綿は、軽くて暖かい布団やジャンパーにも使われている。生糸から丈夫なパラシュートもつくられた。
お蚕さんのなかで、殺されずに繭の外に出た蛾は、パタパタと羽ばたくことはできても、実は飛べない。糸をとるために改良された生きものなので、飛べなくなってしまっているのだ。
カイコから生糸のできあがるまでが写真と解説文でよく分かりました。
群馬県の富岡製糸場を数年前に見学してきましたが、あそこはフランス人技師の指導によって工場がつくられ、運営されていました。日本からの生糸の輸出は明治期の日本の経済発展を支えたのですよね...。
(2020年7月刊。1500円+税)

2021年1月11日

山と獣と肉と皮


(霧山昴)
著者 繁延 あづさ 、 出版 亜紀書房

女性写真家が猟師と一緒に山に入り、「殺す」行為を見たときの衝撃を語っています。
ところが、その直後に、肉を食べるほうに関心が移っていくのでした。まことに人間というのは身勝手な存在です。私も子羊の肉をいつも美味しいと思って食べています(でも最近は、残念なことに久しく食べていません...)が、赤ちゃんのときから羊を育てていたら、とても食べられないでしょうね...。
前に、豚を飼ってペットのように可愛がっていた女性が豚を美味しくいただいた(食べた)という体験記を読みましたが、なかなか出来ることではありません(これには飼って育てることも含みます)。
尖った槍のひと突きで猪の心臓を刺す。鉄パイプを思いきり振って猪の眉間を叩く。素早く銃の安全装置を外して引き金を引いて猪を殺す。現場で身近に「殺す」行為を見たときの「圧倒的な暴力」がびんびんと伝わってきます。
箱罠にかかった猪は目から怒りがあわらしている。あきらめという気配がまったく感じられない。追いくる生気に圧倒される。ところが、猟師が狙いを定めて槍を突き出すと、たちまち猪の動きは止まり、魂が抜けていってしまう...。そして、直後に「肉」が見えると、とたんに「おいしそう...」という喜びに近い感情が湧きあがってくる。ふむふむ、少しだけ分かる気がします。
猟師から、獲れたばかりの猪の心臓、ヒレ、ロース、後脚2本そして首をもらう。心臓は焼肉、ロースは焼肉とぽん酢味のしゃぶしゃぶにして食べる。心臓は、しょうが醤油に付け込んでおく。野生動物の肉は、スーパーで売っている肉と全然ちがって、料理する工夫や手間が多い。心臓は、しっかり血を洗い流し、スライスして焼肉にして食べる。独特の歯ごたえがある。猪の肉は、繁殖期のはじまる12月ころが脂が乗っていて、一番おいしい。
著者がついていく猟師は大型バスの運転手を定年退職する前から始めたベテラン。鹿と猪をあわせて年間100頭以上も獲る。とった肉を好みの人々に配っている。
罠にかかって死んだ獣は決して食べない。あくまでも自分が殺した獣を食べる。食べないときには山に埋める。すると、動物たちが寄ってたかって食べて、たちまち跡かたもなくなってしまう。
子どもたちと一緒に山に入って猟師が猪を殺すところ、肉として解体する場面に出かけ、また自宅で一緒に料理する。すごい家庭教育の実践ですね...。
私の家の近辺にはタヌキが巡回することはあっても、猪は見たことはありません。山中で猪と偶然に出くわしたら、本当に怖いですよね...。
こんな勇気ある女性写真家の作品を一度じっくり見せていただきたいものです。これからも健康に留意して、ご活躍ください。
(2020年10月刊。1600円+税)

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