弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2025年6月23日
もしもハチがいなくなったら?
生物
(霧山昴)
著者 横井 智之 、 出版 岩波ジュニア新書
ハチが消滅するかもしれないと言われています。大変なことです。
私の身のまわりで、スズメが少なくなりました。今年はツバメだって、昨年よりぐんと姿を見かけません。駅舎にいくつもツバメの巣があって、子育て中のにぎやかな巣の様子をいつも駅で見かけていたのに...、淋しい限りです。
ハナバチの祖先は1億年も前の白亜紀に地球上に出現した。これは多くの被子植物が出現した時期とちょうど同じころ。恐竜が繁殖して、地球を歩き回っていた白亜紀の時代に、花とハナバチはお互いに多様な姿や形をもつようになった。
多くのハナバチでは、後ろ脚にスコーパが見られ、そこに花粉を集めていく。スコーパとは、運搬毛が密集している部分。
ハナバチ自身は、植物のためを思って、花粉をせっせと運んでいる、というのではない。
ハナバチも植物も、自分にかかる労力は小さくしつつ、相手を利用して最低限の利益を得ようとしている。ハナバチと植物はお互いに必要としているが、ときには相手をだまし、出し抜き、自分に得になるようにしている。
ハチにもたくさんの種類がいて、危険なハチは、ごくわずか。
オスは交尾するために生きている。多くのハナバチのメスは生涯に1回しか交尾しない。なので、オスは自分の仔を残すためには、誰とも交尾をしていないメスを探し出さないといけないので、必死だ。
ミツバチの新女王は複数回交尾する。セイヨウミツバチの女王は、1日に1000~3000個の卵を産んでいる。平均的な寿命を3年とすると、生涯に100~300万個の卵を産む。
メスは針をもっているが、オスはもっていない。なんだかほっそりしていて、か弱そうなスタイルのほうがオス。
ハナバチの種の多くは、地中に巣をつくる。日当たりの良い裸地を好むことが多い。二ホンミツバチは、プロポリスをつくることがなく、蜜ろうだけを使って巣をつくりあげる。
ミカンをはじめとするかんきつ類やブドウは、ハナバチに頼らない、風媒の作物。キュウリは、受粉しなくても実がなくなる。玉ねぎやキャベツの生産にもミツバチは関わっている。
昆虫全体が減少している。チョウは、1990年以降、ヨーロッパ16ヶ国で、39%も減少している。
ゴキブリも家で見かけるチャバネゴキブリなどわずかな種を除くと、大半は草地や森林に生息していて、雑食性なので、落ち葉や樹木以外にも動物の死骸などを分解してくれる。
ハナバチのおかげで、野菜や果物が育っている。
ハナバチの代わりにロボットやAIを使う、小さなドローンを飛ばすなど、いくつも挑戦されているが、そんなに簡単にとって代わるとは思えない。
ハナバチがいなくなったり、トマト、イチゴ、リンゴ、メロン、スイカ、カボチャが食べられなくなってしまうかも...。いやあ、それは大変なことですよね。
トランプ大統領は自然環境の悪化なんて、とんだフェイクニュースだと信じているようです。とんでもない間違いです。どうしてアメリカ人の半分が、あんな知性欠如の商売人を選んだのでしょうか...。
ハチを大切にすることは、私たち人間を大切にすることと同じなんですよね。
(2025年3月刊。880円+税)