弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

ベトナム

2024年2月17日

道を歩けば神話


(霧山昴)
著者 樫永 真佐夫 、 出版 左右社

 ベトナムとラオスの人々を紹介した本です。
 ベトナムには1度だけ行きました。ハノイは漢字で「河内」と書くそうです。「ハノイ・ヒルトン」というのは、ベトナム戦争のとき、アメリカ軍飛行士がベトナム側の対空砲火によって撃ち落とされ、捕虜として収容されていたホアロー収容所のことです。
 アメリカ軍は特殊部隊を投入(投下)して、捕虜を奪還しようと試みましたが、結局、成功することはありませんでした。戦後、収容所の一人は「英雄」として、アメリカの国会議員になっています。
 ベトナムの人口の85%はキン族。少数民族は53もいるが、全部あわせても15%。といっても、ベトナムの人口は1億人なので、少数民族は1500万人いるわけだし、そのなかのタイ族は500万人近い。ちなみに、ラオスの人口は、730万人。
 1億人のベトナム人の86%が「無宗教」と回答した。仏教徒がずっと首位だったのが、2位の460万人になった。1位はカトリックで586万人。
 キン族は、老若男女を問わずおカネの話が大好き。お金がもうかり、楽な気持ちにさせてくれるのなら、神でも仏でもイワシの頭でもなんでも拝む。消費文化としてのクリスマスの需要にもためらいがない。
 タイ国とラオスはタイ族がつくった国。そのほか、ミャンマーや中国南部にもいて、全部で1千万人ほどになる。なので、ベトナム当局としてはタイ族対策が民族対策の要(かなめ)だ。
 山間部に住むタイ族に民族自治区を設置して懐柔し、次にキン族を大量に海岸部から山間部に送り込み、タイ族の人口を相対的に減らして弱体化させ、またタイ族を少しずつ同化することにした。
 低地に住む人々は高床式の家に住む。山の屋根近くに村をつくるモンなどの高地民は、蚊がいないので、土間でいい。
 モン族は紙をつくるが、それは祖先やカミを祀る場をしつらえて、依り代(しろ)をつくるためのもの。つくる紙は字を書くためのものではなく、ましてやお尻をふく紙でもない。
 モンは、焼畑でトウモロコシをつくっている。モンは山中の交易者だ。
 ラオスには行ったことがありません。この本は、山中に住むタイ族やモン族の生活を垣間見る思いをさせる旅行記にもなっています。
(2023年11月刊。2500円+税)

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