弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2025年6月16日

睡眠の起源

人間


(霧山昴)
著者 金谷 啓之 、 出版 講談社現代新書

 私は眠りはいいほうです。年齢(とし)とともに寝るのが早くなりました。前は夜12時まで起きていましたが、ちょっと前に午後11時なり、今では午後10時半には布団に入るようにしています。眠ると、朝はすっきり目が覚めます。
 夜しっかり眠れないという依頼者が少なくありません。そして、借金返済のためにダブルワークして毎日4時間しか寝ていないという人がいて、心配です。また、三交代労働などで深夜労働の人も少なくありません。私はコンビニが全部24時間営業しているのも問題だと考えています。すぐに全廃できないというのなら、いくつか例外的に開けておけばいいと思うのです。
 脳のないヒドラも、ときに動きを止めて休む状態がある。眠っているような状態だ。ヒドラの睡眠をコントロールする遺伝子は、他の動物と共通している。ヒトが眠るのと同じように、脳のないヒドラも眠っている。
 ヒトの脳はとても軽く、豆腐のように軟らかい臓器で、体重の2%を占めているだけ。
 ヒトの体は40兆個もの細胞で出来ている。ヒトの脳には、1000億個以上の神経細胞が存在する。
 睡眠は、ノンレム睡眠の時間が圧倒的に長い。レム睡眠は、鮮明な夢をみることが多い睡眠だ。
 断眠は、脳のはたらきに大きく影響する。断眠させると、ラットは2~3週間で死んでしまう。断眠は脳にダメージを与えるだけでなく、全身に及ぶ。ひどい場合は死に至る。
 拷問の一手法が眠らせないというもので、効果的だといいます。
 睡眠は貯蓄ができない。
植物のオジギソウは、体内時計によって葉を開閉させている。
ショウジョウバエの2万個以上ある遺伝子のうち、時計遺伝子と呼ばれる一連の遺伝子は体内時計に関与している。
 ヒトの体のあらゆる組織に、時計遺伝子による体内時計のしくみが備わっている。脳のなかの思考叉(しこうさ)上核と呼ばれる領域が全身の体内時計の中枢だ。
 睡眠は、睡眠圧と体内時計という二つの成分によって調節されている。
 ヒドラは老化の兆候をほとんど示さない。1400年以上生き続けている個体がいる。ヒドラが眠るというのなら、睡眠に脳は必要なのかという疑問が生じる。
 海に浮かぶクラゲは昼寝をしている。
 ナルコレプシーの患者は、発作のように突然眠ってしまう。
吸入麻酔薬は100%、必ず効く薬だ。ところが、なぜ効くのか分からないまま、今日も服用されている。また、植物にも作用する。
 眠りって不思議ですよね。意識がある状態が一瞬で不思議な世界に入りこみ、朝になると、また体が動き出すのですからね...。大いに考えさせられる新書でした。
(2024年12月刊。990円)

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