弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

生物

2022年7月31日

クモの世界


(霧山昴)
著者 浅間 茂 、 出版 中公新書

わが家には、本当にたくさんのクモがすみついています。たまに手のひらほどの大型のクモが室内を徘徊することがあり、そのときは室内ホーキで外に追い出します。芥川龍之介の「クモの糸」を読んでから、クモを殺すことは絶対にしません。
クモって、どんな生きものなのか、よくよく分かる新書です。
日本には1700種のクモがいて、半分は網を張り、残り半分は徘徊性。我が家のクモも、半々です。クモは世界中に5万種いて、南極大陸以外のすべての大陸に分布している。
クモは8本の脚をもつ。昆虫は6本脚。そして、クモは頭と胸が一つになっている。
クモの多くは、人間にとって毒液の毒性はほとんどない。
クモは糸を出すのが特徴。一生涯を通じて糸を出す。歩き回っているときも必ず糸を引いている。
クモは、地中性のクモから造網性のクモ、そして徘徊性のクモへ進化した。
地中性のクモは一般に長生きで、成体になるのに3年以上かかり、飼育下では9年以上という記録もある。
ジョロウグモは、オスは7回、メスは8回脱皮して、成体になる。オスが早く成体になって、脱皮中のメスと交尾する。
日本のカバキコマチグモは母グモが子グモに自分の体を与える。
うひゃあ、自分の体を子グモに食べさせる母グモがいるんですね...。
クモは、一般的に、メスよりオスが小さい。「ノミの夫婦」という言葉があるが、それよりはるかにオスは小さい。
徘徊性のクモは、視力がそれなりに優れている。造網性のクモの視力は、あまり良くない。
オオジョロウグモのメスは5センチほどもあり、網にかかった鳥やコウモリを捕食する。
クモは紫外線を利用する。クモは擬態する。刺激を与えると、一瞬で体色を変えるクモがいる。クモは変温動物。
クモが壁にへばりつけるのは、原子・分子間で生じる引力、ファンデルワース力による。
クモの糸には、粘着性のある糸とない糸がある。クモの糸の先に粘球がついている。
口から粘球を吐きかけて獲物を捕らえるクモがいる。
クモは、獲物にかみつき、牙の孔から毒液を出して注入し、麻痺させて動けなくする。そのあと消化液を注入して溶かし、半ば消化されたものを吸う。
一般にクモは肉食性で、何でも食べる。クモを専門に食べるクモもいる。
クモだけを専門に狙う狩りバチがいる。
このように、クモは生態系の中で、中間捕食者として、捕食者であり被食者でもあるという役割を果たしている。
コサラグモのオスは、魅惑的な分泌液をメスにプレゼントして、その間に交尾する。
アシナガグモのオスは、食べられないようにしてからメスと交尾する。
クモの糸は軽く、同じ太さでは鋼鉄以上の強さをもち、かつ、しなやか。今のところ、まだ、自然界のクモ糸を越えた人工クモ糸は合成されていない。前に、このコーナーで、クモの糸をより集めて、強い糸をつくったという実験結果を報告したことがあります。
クモの不思議な生態がぎっしり詰まった、カラー写真いっぱいの楽しい新書です。
(2022年4月刊。税込1100円)

2022年7月30日

ダマして生きのびる虫の擬態


(霧山昴)
著者 海野 和男 、 出版 草思社

小さな大自然の驚異をたっぷり味わうことのできる写真集です。木の葉そっくりのコノハムシ。どうして、こんな色と形、模様ができたのか...。
昆虫が意思をもって擬態を発展させてきたとしか思えない。でも、昆虫自身は自分の姿を客観的に見ているはずがない。それなのに、どうして、こんな芸当ができるのか...。本当に不思議、フシギです。
昆虫の擬態と隠蔽の姿のオンパレード。何かの姿に「化けて」誰かをだましている。
団塊世代の著者は50年以上かけて、昆虫の擬態を観察し、撮影してきました。なので、写真もバッチリ、解説文もバッチリ。
木の葉に似せるにしても、色も形も異なっている。すると、昆虫のほうも、それにあわせていろんな葉の色や形にあわせている。
コノハムシのメスは木の葉にうまく擬態しているため、飛ぶことができない。すると、オスがメスのところにまで飛んでいかないといけない。なので、もちろんオスは飛べる。
著者が日本一すごい擬態の巧者としているのはムラサキシャチホコ。長野県や東北地方にフツーにいるガの仲間。必ず葉の上面にとまる。すると、光が上からあたって、丸まった枯れ葉のように見える。ところが、これは、実際には、翅が丸まっているのではなくて、たんに前翅と胸の模様の陰影によって立体的に見えているにすぎない。
ホシミスジは、おとりをつくって身を隠す。
マレーシアには、枯れ葉そっくりの彼はカマキリがいる。まさしく枯れ葉そのものです。そして、メスの葉が葉に似ている。それは卵をうむメスは重要なので、オスより上手になったのだろうと著者は推測しています。いやあ、ホントでしょうか...。
色や模様で捕食者を脅かす昆虫がいます。翅を開いたマレーシアのセンストビナフシは、まさしく扇子を開いた格好をしています。
バラの茎にいる昆虫は、バラのイバラまで形も色も似せます。
ハチでないのに、ハチに似せた生き物がこんなにもたくさんいるというのも驚きです。縞(しま)模様はハチの印なのです。
突然、目玉が出てくるヤママユガも、不気味そのものです。よくぞ、こんな色と形を思いつき、それを体現したものです。これも何か、誰かの意志のたまものなのでしょうか...。大自然はまさしく不思議だらけです。だから生きているって面白いのですよね。
(2022年6月刊。税込2640円)

2022年7月 9日

魚食え!コノヤロー!!!


(霧山昴)
著者 森田 釣竿 、 出版 時事通信社

個人経営の小さな魚屋が3年間で1万軒も減っているとのこと。たしかに、私の住む町でも、町の小さな魚屋がどんどん姿を消してしまいました。もうからないのと、仕事が大変なので、後継者がいないことによるのでしょう。
この本の著者も、母親は魚屋を子どもに継がせたくなかったとのこと。なので、美容師の資格をとったのでした。著者はミュージシャンでもありますが、それは魚を売るために音楽をやっているのです。
私は魚をさばいたことがありません。といっても、ウナギをさばいたことはあるのです。娘がバザー会場でウナギを釣りあげて自宅に持ち帰ってきたのです。ウナギを飼って育てたいというので、そんなことはできない。今からウナギをさばくから見ていなさいと言って、まな板に包丁を突き刺して始めました。子どものころ、叔父さんがウナギをさばいているのを、間近で何度もよく見ていましたから。その記憶だけで、さばきはじめました。小学校低学年の娘は泣きながら、じっと見ていました。そして、なんとか食べられるようにしたのです。大変でした。すると、娘も、「美味しいね、これ」と言って笑顔になって食べてくれました。
この本には、初心者が魚をさばくなら、いきなりデカい魚に挑戦したらいいと書いてあります。それは、なんと、あのカツオです。高知城近くの青空市で食べたカツオのタタキの美味しさを思い出しました。
この本によると、カツオは家庭用の包丁でも無理なくさばける魚で、さばきたての美味しさが分かりやすい魚だといいます。本当でしょうか...。
カツオのさばき方がカラー写真つきで親切に図解されています。うむむ、これならできそうかも...と思ってしまいます。
二枚におろし、三枚におろし、刺身をつくり、皮付きタタキをつくる。カツオのフライも美味しそうですよ。そして、なめろう丼にタタキというのは、思わずヨダレが出そうなほどです。
刺身はタレでガラッと味わいが変わるというので、たくさんのタレが紹介されています。いやあ、これはたまりませんね。いろいろ挑戦してみなければいけません。
そして、魚をさばいていると手にケガするとこもあるけれど、あまり気にするなという温かいアドバイスもあります。そうなんですよね。プロだって、たまにはケガすると言うのですからね...。
最後に、浦安巻きというのが紹介されています。海苔にご飯を乗っけて、そこに削りたてのカツオ節としょう油を乗せて太巻きとして巻くものです。チーズを入れるのもよし、とあります。
私は、チーズと梅干しを入れた太巻きを小学校から中学校まで、子どもたちの朝の朝食として提供していました。海苔巻きなので、子どもたちは家庭内をウロウロしながらでも食べられるのです。学校行く前の慌しい時間の朝食として最適でした。
魚屋さんの威勢のいい呼び込み声を聞いている気がしてくる本でした。
(2021年4月刊。税込1760円)

2022年7月 3日

ツバメのひみつ


(霧山昴)
著者 長谷川 克 、 出版 緑書房

ツバメは地球規模で減少している。日本でも、10年前に比べて10分の1になっている気がする。
いやあ、本当にそうですね。ただ、私のところでは、今日も巣立ったばかりの子ツバメが飛行の練習中のようでした。というのも、畑の上を少し飛んでは、地上におりてくるからです。
昔、ツバメが多いときには、ツバメ釣りをしていたとのこと。ええっ、何のため...。もちろん、食べるためです。ツバメって、肉があまりついていない気がしますし、カラスと同じで、あまり美味しくはなさそうですが...。東南アジアの国(どこでしょう...)では、毎年10万羽のツバメが食べれているとのこと。ええっ、ウッソーと叫びたくなります。
ツバメは、赤ちゃんのとき、巣のなかで殺しあいのケンカをすることはない。兄弟間で本気で突くこともない。
ツバメの親は、子ツバメが巣立ったあとも、子の世話をしばらくは続ける。巣立ち後の子育ては大事で、巣立ち後、長くエサをやっていると、巣立ちビナの生存率が高まる。
日本のツバメは東南アジアからはるばる飛行してやってくる。ツバメは、昼間に、数羽で「渡り」をする。春の渡りは、一気に渡る。そのスピードは、7日で3000キロメートル。
ツバメのメスは、オスが「ジージー」と鳴くと、ヒナの声と混同して、間違って近づく。
ツバメのメスは、夫以外のオスと浮気して、子をなしている。また、自分の夫が魅力に欠けるときほど、浮気をして子をつくる。
ヨーロッパのツバメでは婚外子は3割もいるのに、日本では、わずかに3%のみ。
ツバメは日本に帰ってくるのは50%。前年に連れ添った相手との婚姻再開は、なかなかむずかしく、65%は離婚している。
ツバメについて、さらにいろんなことを知ることができました。それにしても、ツバメが空を飛んでいるのをじっと眺めていると、気が休まりますよね...。
(2020年8月刊。税込1980円)

2022年6月27日

生命を守るしくみ・オートファジー


(霧山昴)
著者 吉森 保 、 出版 講談社ブルーバックス新書

ヒトの人体の細胞は、以前は60兆個と言われていたが、今では37兆個とされている。組織によって細胞の大きさは異なっている。
病気になるということは、細胞が病気になるということ。
細胞1個の中に、生物を1個体つくるのにひつような遺伝情報がすべて入っている。
タンパク質は、すべて細胞の中でつくられる。細胞の中のタンパク質をオートファジーで分解してアミノ酸にする。そのアミノ酸を材料にタンパク質をつくる。1日あたり細胞の中にあるタンパク質の1~2%を分解し、できたアミノ酸を材料として新しいタンパク質をつくっている。細胞の中にあるものを分解して同じものをつくることで、何日かで細胞の中身がすべて入れ替わり、新しい状態が保たれる。このような、一見すると意味のなさそうに思える細胞の中身の入れ替えは、実は細胞を新しく健康な状態に保つために必須のこと。オートファジーが起きず、中身の入れ替えができないと、細胞の機能に不具合が出て病気になってしまう。すなわち、オートファジーの3つの主要な機能は、栄養源を確保すること、代謝回転、有害物の隔離除去。
カロリー制限は、ヒトを軽い飢餓状態に陥らせる。飢餓状態になると、細胞はオートファジーによって、自己の成分を分解して栄養源を確保する。つまり、カロリー制限時には、オートファジーが活性化している。なーるほど、そうなんですね。
寿命を決定するには、脳も関わっている。細胞には寿命がある。古い赤血球は4ヶ月、胃や腸の表面の上皮細胞は1日、血液中の赤血球は4ヶ月、骨の細胞は10年、バラバラだ。ところが、ほとんど入れ替わらず、生まれてからずっと使い続けている細胞もある。脳や心臓の細胞だ。
オートファジーは細胞の生存に欠かせない守護神のような存在であり、さまざまな疾患から守ってくれている。
こんなに大切なオートファジー研究をリードしているのは日本だというのです。やっぱり、今すぐには役に立つかどうか分からないような研究であっても、決して無視することなく自由にのびのび研究できるような環境って大切ですよね。いつもいつも目先の利益を追うだけでは大きな世の中の流れについていけなくなるのです。
よく分からないなりに、大切な研究だということだけは、しっかり認識できました。
(2022年1月刊。税込1100円)

2022年6月26日

変形菌


(霧山昴)
著者 増井 真那 、 出版 集英社

手にとって、じっくり眺める価値のある写真集です。撮ったのは弱冠20歳の世界的変形菌研究者。なにしろ5歳のときに変形菌に出会い、それ以来15年、変形菌を研究し続けて、今や第一人者になったというのです。「三つ子の魂...」と言いますが、5歳からの15年間で、これだけ究めることができたのですから、人間の能力の素晴らしさも実感させられます。
前に、このコーナーでも紹介した『世界は変形菌でいっぱいだ』(朝日出版社)に続く2冊目。現在、20歳の著者は慶應義塾大学先端生命科学研究室に所属して研究を続けているとのこと。ぜひ、続けてください。応援しています。
変形菌は、その変わった見かけや生態のため、過去には動物の仲間とされたり、植物の仲間とされていた。20世紀後半まで、「菌類」とみられていた。今日では、いずれとも異なるグループ(アメーボゾア)に属していると考えられている。
変形菌の変形体は、巨大な単細胞生物。大きさ数ミリから1メートルをこえていても、たったひとつの細胞から成る。
2個以上の個体がくっついて、1個体になって生きていくこともできる。ただし、その融合相手は誰でもいいわけではなく、同種といえとも、変形体どうしがくっつくのは、本当に稀なこと。2個体の「自分」どうしなら、再びくっついてしまう。ただし、それには数時間もかかることがあった。この非接触による判断がなされたとき、変形体は自ら透明な粘液を発信していた。
変形体は、落ち葉たまり、腐った倒木や切株で暮らしていることが多い。
乾燥や低温にあうと、変形体は「菌核」と言われ、休眠状態に移行する。
高温・低温に耐え、飲まず食わずのまま何年間も無事に生きている。
あまりにも変わった生命体ですが、よく撮れた写真を眺めていると、この世の不思議を実感させられます。
(2021年12月刊。税込2200円)

2022年6月20日

動物行動学者、モモンガに怒られる


(霧山昴)
著者 小林 朋道 、 出版 山と渓谷社

鳥取環境大学につとめ、先生シリーズ(築地書館)で有名な動物行動学者による、読んでためになる、面白い本です。
たとえば、ヒキガエルは脱皮する。その皮には重要な栄養分が含まれているので、ヒキガエルは自分の脱皮した皮を食べて栄養分を吸収する。また、脱皮には時間がかかるので、襲われたときに備えて、背中のイボから毒物質を分泌している。
ヤマカガシ(ヘビ)にちょっと咬まれたぐらいでは人間の体内に毒が侵入することはない。ヘビの奥のほうで深く咬まれたときに初めて毒が牙から体内に入ってくる。そして、この毒はヤマカガシが生産したものではなく、ヒキガエルが生産した毒をヤマカガシが利用している。
ヒキガエルは、ゴムでヤマカガシに似せてつくった「ヘビ」を見せても態度に変化はない。ところが、横棒と、その上に、傘の取っ手のような構造(逆丁字モデル)を示すと、「四つん這い」威嚇のポーズをする。この逆丁字モデルは、ヘビが獲物を捕食しようとするとき、鎌首をもたげたときの視覚的特徴と合致している。
タヌキの好物はアンパン。鶏肉よりアンパンが好き。その次に好きなものはミミズ。
タヌキは学習能力の高い哺乳類。人間の反応を理解して自分たちの行動を決め、うまく人里に溶け込んでいる。
たしかに、私の家は山里に近く、隣の空地の奥には雑木林があるので、そこから、ある朝、一匹のタヌキが悠然と出てきて、団地内を巡回したことがあり、本当にびっくりしました。
タヌキは、オスとメスが一生涯変えることのないつがいをつくる。メスが出産すると、オスは乳こそ出ないが、子どもの身体を舐めてやったり、腹の下に子どもを抱えこむように座って温めたり、こまごまと世話をする。
ヒトの女性は、物の配置を記憶する能力や言語を操作する能力が男性より優れている。
男性は女性に比べて早く動く物体を目で追ったり、遠くの細かいものを見分けることが得意である。女性は男性に比べて色の違いを見分ける能力が優れている。つまり、ヒトは男性と女性を含む集団として、植物を採集することと同時に動物を捕獲して食べることに適応している。
うむむ、やっぱり男女で役割分担はあるのですよね...。
(2022年5月刊。税込1925円)

2022年6月13日

火の山にすむゴリラ


(霧山昴)
著者 前川 貴行 、 出版 新日本出版社

ゴリラの顔って、本当に知性にあふれています。じっと何かを考えている様子なのです。
アフリカの赤道直下、標高4500メートルもある山にすむマウンテンゴリラの身近にいて、写真をとったのです。すごい写真です。
あるとき、赤ん坊を抱えた母ゴリラがすぐ目の前にあらわれたので、シャッターを切ったら、その母ゴリラに腕をつかまれたのでした。
「こんなに近くから写真なんか撮るんじゃないよ」
(すいません)。カメラをおろして、じっと固まっていると、母ゴリラは、(うん、分かってくれたなら、いいよ。もう、こんな近くから撮るなんて、無茶するなよ)と、腕を離してくれた。そこで、ゆっくり後ろに下がって、少し離れたところから再びカメラを向けてシャッターを切った。今度は、母ゴリラは怒ることもなく、黙って写真を撮らせてくれた。
ええっ、う、うそでしょう...。そんな怖い体験をしたんですね。ゴリラって、意外にも、心優しい生きものなんですよね...。「ターザン」映画でゴリラが凶暴な悪役を演じていますが、あれは人間の妄想でした。
そのマウンテンゴリラは、今や1000頭ほどで、絶滅する心配がある。熱帯雨林が人間の開発で切り開かれ、ゴリラのすめる森が少なくなった。戦争などのためゴリラを食べる人が増えた。病気がはやり、ゲリラが暇(ひま)つぶしにゴリラを射殺する。原因はいろいろです。
でも、ゴリラがすまない森は、まわりまわって人間だって都会で生活できなくなることにつながっています。たとえば、Co2の排出量が増える一方だったりして...。
群れをひきいるシルバーバック(オス)は、実は子煩悩(ぼんのう)で、仲間の面倒みもよい。ゴリラは、大人も子どももとても遊び好きで、争いは好まない。家族の絆(きずな)も固い。
ゴリラの赤ちゃんは2キロ弱で産まれてから人間の赤ちゃんより小さい。1歳までは母ゴリラが肌身離さず世話をし、母乳で育てる。1歳すぎると母ゴリラは赤ちゃんをときどきシルバーバックに預ける。預けられたシルバーバックは、積極的に赤ちゃんの面倒をみる。3歳すぎると、子どもゴリラは乳離れし、寝るときもシルバーバックのそばにいる。
子どもゴリラは、木やつるにのぼって遊ぶのが大好き。仲間と荒あらしく遊ぶこともある。
シルバーバックの周りにはいつだって子どもたちがいる。シルバーバックのほうも、子どもを嫌がらず、おだやかに優しく見守っている。
大判のすばらしい写真集です。ゴリラの表情が実に生き生きしていて、ついつい吸い込まれそうになりました。ゴリラと人間の共存は口でいうほど簡単ではありませんが、とても大切、いえ不可欠なのです。
(2022年5月刊。税込1870円)

2022年6月11日

ツバメのせかい


(霧山昴)
著者 長谷川 克 、 出版 緑書房

たくさんのカラー写真とともに、ツバメの生態が詳しく紹介されている楽しい本です。とても身近な鳥ですが、知らないことがたくさんありました。
ツバメのメスは、ヒナにとてもよく似た声を出すオスに惹きつけられる。
オスの羽色が赤いほど、メスにもてる、その代わり、ケンカに弱い。
魅力的で経験豊富なオスが早く繁殖地に現れる。後から来たメスは、オスが来た順番なんて知らないはずなのに、早く来たオスがメスにモテる。不思議なことですよね。
ツバメをふくむ多くの鳥類には紫外線が見える。なので、多くの鳥は、ヒトより多彩な色を見えていることになる。
雨が降っていても、恒温動物の鳥は、日々、大量にエネルギーが必要である。
ツバメの平均寿命は1年半ほど。
日本に戻ってきたツバメのカップルの半数は離婚している。
巣立っても、無事に戻ってくる確率は数%ほど。大半は死んでしまう。
ツバメのメスは、夫より魅力的で子孫繁栄能力の高いオスを浮気相手として並んでいる。
日本の街中にいるツバメでは、婚外子は3%ほど。ところが、ヨーロッパの牛舎で集団繁殖するツバメでは婚外子が3割以上もいる。
玄鳥至、玄鳥去。玄鳥とはツバメのこと。ツバメが来た、ツバメが去ったというコトバ。
泥で巣をつくるというツバメの行動は、鳥類全体でみても類を見ないユニークな行動。
世界中にツバメは70種以上もいるが、日本には、わずか5種のみ。
ツバメは東南アジアから集団で渡って来ているのでしょうか。その渡りの途中をとらえた映像はないのでしょうか。あんな小さい身体で何千キロも飛んでくるなんて、不思議としか言いようがありません。
(2021年6月刊。税込1980円)

2022年5月30日

となりのハト


(霧山昴)
著者 柴田 佳秀 、 出版 山と渓谷社

まさに身近でよく見かけるのがハトです。カラスも見かけますが、人間への警戒心が強く、いつも少し離れています。ハトは、いつも足元近くにまで迫っても逃げようとしませんので、「どいて、どいて」と声をかけるほどです。
世界に350種もいるハトの体型はほとんど同じで、例外がない。小さい頭に、ぽっちゃりした丸い体。嘴は小さくて、足が弱い。
ハトには目立った武器はなく、丸腰でも、天敵のタカに食べ尽くされないのは、逃げる天才だから。
鳩胸。胸が大きく張り出して発達しているのは、大きな筋肉があるから。その割合は体重の31~44%にもなる。このハトの胸は強力なエンジン。巡航速度で60キロ、風に乗ると100キロ超。この大きなエンジン(胸)があるおかげで、ハトは高速で飛び、タカの猛追を振り切って逃げのびることができる。
ハトの羽毛は、とても抜けやすい。タカに追いつかれて、尾羽がタカにつかまれると、ごそっと羽毛が抜け、逃げ出せる。
また、ハトの羽毛には、粉になる羽毛がある。タカがつかもうとすると、粉が邪魔になり、つかまえられない...。
ハトは地上を首を振って歩いているように見えているが、それは誤解。よく見ると、ハトは、頭を静止させている。そして、首振り(実は静止)しているから地上のエサを見つけて食べる。
ハトは、基本的にベジタリアン。ハトは、水をごくごく飲むことができる。ハトの舌は注射器のピストンのような働きをし、口の中の圧力が下がるため、水を吸い上げられる。鳥は、一般に水をあまり飲まない。ところが、ハトは水をとてもよく飲む。
ハトがヒナを育てるときの「ピジョン・ミルク」は、食道の「そのう」の壁がはがれ落ちて出来ている。オスの「そのう」も、ヒナが出来ると肥厚し、ピジョン・ミルクが出来るようになる。つまり、ヒナを育てるには、オスとメスがともにミルクを与える。
ハトは、ヒナにピジョン・ミルクという完全栄養食をまさしく我が身を削って与えている。
ハトは、種子さえたくさんあれば、ピジョン・ミルクができるので、昆虫の発生時期に左右されることなく、1年中、繁殖が可能。ハトの繁殖期間は1年中。だから、求愛の様子は1年中、見ることができる。
日本で記録されたハトは12種。一般人が出会うのは、ドバトとキジバトの2種。しかし、実は、ドバトというハトはいなくて、カワラバトのこと。カワラバトを家禽(かきん)化したのをドバトと日本では呼んでいる。
イスラム教では、ハトは神聖な鳥なので、食べない。砂漠では、ドバトの糞(ふん)は、燃料として貴重だった。
ハトは、平安時代末期から、戦いの神様の使い。ハトは、勝利をもたらす瑞鳥だ。
ドバトが少ないのは、公園でエサやりが減ったから。
ミノバトは乱獲されて、少なくなったうえ、砂肝にある「石」が磨くときれいになるので、宝石としての需要まである。
ナポレオンの戦争のとき、ワーテルローでイギリス軍が勝った情報を、ロスチャイルドは伝書鳩を利用していち早く知り、株価が上昇する前に大量の株を買い付け、大もうけした。
レース鳩は、最高時400万羽もいた。鳩レースは、短くて100キロ、長いと1000キロをこえる。北海道の最北から関東まで、ハトは15時間で飛んで来る。ただし、100キロ級のレースだと、無事に帰ってくるのは1割しかいない。
ハトにまつわる面白い話のオンパレードでした。
(2022年4月刊。税込1485円)

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