弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2025年10月 6日

動物と老いとケアのはなし

生物


(霧山昴)
著者 小菅 正夫 、 出版 中央法規

 旭山動物園には2回行きました。広々とした園内なので、気持ちよく動物たちの生態を観察することができました。オランウータンは16メートルもの高さのロープを軽々と渡っていきます。オランウータンはもともと慎重だし、この高さから落ちたら死ぬと分かっているので、慎重に渡るので事故は起きていないとのこと。それでも、下のほうに、もう一本のロープがあり、まさかの落下のときの安全ネット代わりだそうです。やっぱり、いろいろ考えているのですね。
 動物園では動物たちに退屈させないことを大いに工夫しているそうです。食事の心配をせず、何もやることないのだったら、無関心・無気力になって、繁殖行動もしなくなるのです。
 なので、エサを隠してみたり、ちょっとした工夫をしないと手(鼻)の届かないところに置いてみたり、あの手この手を考えるのだそうです。
 繁殖のために、オスとメスを1対1にしたらうまくいくとは限らないとのこと。
 ゾウとゴリラは、オスとメスが1頭ずつでは、まずうまくいかない。ゴリラはオス1頭と複数のメス。チンパンジーなら、複数のオスと複数のメスを一緒にしないとうまくいかない。ただし、テナガザルは、オス1頭とメス1頭で飼育する。珍しく一夫一婦だから。
 オオカミは、オスもメスも不倫を絶対に許さない。夫に近寄ろうとするメスがいると、妻はそのメスを殺す。また、知らないオスが妻にちょっかいかけたら、夫は、そのオスを殺しに行く。いやあ、オオカミって恐ろしいですね。なので、片方が死ぬと、残ったほうも1年以内には死んでしまう。ひえーっ...。
 ゾウの社会では、長老のメスがもっとも強いリーダー。オスが発情している若いメスに近寄ろうとしても、その群れを仕切るリーダーのメスに認められなければ交尾はできない。
 サルは好きなものから食べる。人間には、好きなものは最後にじっくり味わうという人が少なくありません。私は、サル派で、好きなものを真っ先に食べます。
ゾウは、地下1メートルの深さに埋めたリンゴを見つける。鼻には高性能のセンサーが備わっている。水も察知する。地面の下の水脈ゾウは鼻でを探し当てるのです。
 ゾウのメスが発情しているのはメスを見ていても分からない。ところが、オスの態度が変わる。それでメスの発情を知る。
 チンパンジーは政治をすることで有名です。ところが、サルも嘘をつけるのです。アルファオスに見つからないようにして、自分だけが発見したものを食べます。
 動物園でヒグマを飼うとき、繁殖行動をなかなかしなかったので、考えた。四季の変化を動物園でもつくる必要がある。冬眠するのは食べ物がないため。でも動物園には年中、飼料があるので冬眠の必要はない。すると、冬眠中に出産するというリズムをつくらないといけない。やっぱり、日本人に四季は必要です。ところが、これほどの暑さが続くと秋は短く、あっという間に冬になりそうです。
 動物の生きる最大の目的は「命をつなぐこと」にある。
 動物は傷ついていたとしても痛がる様子は見せない。自然界では弱い様子を見せたら、真っ先に攻撃対象として狙われるから。
 野生動物は認知症になる前に寿命を終えてしまう。ところが、動物園では、高齢化が進んでいるため、がんになる動物が増えている。
 動物は絶対に自殺しない。ついさっきまでピンピンしていたと思わせて、急に死んでしまう。最後の最後まで、「100%健康です」という顔をして、みんな黙って、ひっそりと死んでいく。
著者は旭山動物園をたて直した園長として有名ですが、もともとは獣医師です。今は札幌にある円山動物園のアドバイザーです。大変考えさせられる本でもありました。
(2025年5月刊。1870円)

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