弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2025年8月25日

昆虫はもっとすごい

生物


(霧山昴)
著者 丸山 宗利・養老 孟司・中瀬 悠太 、 出版 光文社未来ライブラリー

 ミツバチの大量死の有力な原因は、農薬、ネオニコチノイド。EUでは使用禁止になったのに、日本ではまだ。カメムシ対策だったはずが、ミツバチの大量死をもたらしている。
 同じくアキアカネ、いわゆる赤トンボも激減している。たしかにお盆過ぎると、どこからともなくやってきて、我が家の庭をよく飛んでいましたが、すっかり姿を消してしまいました。
 モンシロチョウも減りましたね。三浦半島のキャベツ畑と大根畑でも見ないのは、農薬を徹底させているからだろうとあります。
 失って初めて、その価値に気がつくのが人間。たとえばミツバチは、はちミツをとるだけの存在ではなくて、いろんな農作物の受(送)粉業者なので、いないとたくさんの人が困る。受粉するのをいちいち人の手でやっていたら、とてもじゃないけど、間尺にあわない。
 鳥と同じように、魚もあっという間に性転換する。
 アリは生まれてから時間のたっているアリは、危ない仕事を担う。後世を育てる仕事は、若い衆が担う。スズメバチも同じで、若いうちは巣の中で幼虫の育成などを担って働いているか、年歳(とし)をとるとだんだん外に出ていき、攻撃性も強くなっていく。
 鳥は死んだ昆虫を食べない。だから昆虫はじっと動かず、死んだふりをする。スズメは、冬、越冬するため、日本からインドネシアまで飛んでいって、越冬する。
 同じく、アサギマダラ(蝶)も、日本から台湾まで飛んで往復している。
アフリカのある地域では、プライド保持のために牛を飼っていて、牛は食べない。実用を求めて「ウシを何頭持っているか」こそが、人間の存在価値の何よりの証明。なので、飢饉になっても、決して牛を殺すことはない。食用にするために飼っているのではない。
 森の中にすむヨロイモグラゴキブリは、地中にトンネルをつくって、夫婦で生活している。子どもが生まれたら、自分たちでエサをあげて育てる。地上から落ち葉を引きずってきて、巣穴で一緒に食べる。10年ほど生きる個体もいる。
 集団で暮らすゴキブリが進化したのが、集団で巣をつくるシロアリ。オーストラリアには、マルゴキブリの一種に、子どもにお乳を飲ませるものがいる。
 シロアリの女王には、20年とか30年も生きるのがいる。そして何十年ものあいだ生殖のみに精を出す。
トンボの翅(はね)は、100分の3ミリの薄さなので、どんなに弱い風でもとらえて静止するように飛ぶことができる。
ハネカクシの翅は、何十回も細かく折りたたんだものを一瞬でパッと開くことが出来る。その収納効率は昆虫界でもっとも高く、仕組はもっとも精微。これを人工衛星のソーラー電池パネルのような、宇宙工学や機械工学の展開構造のデザインに生かしている。
小さな昆虫、果たして脳があるのかと思える昆虫なのに、こんなにしっかり生きているのですよね...。
(2023年8月刊。1100円)

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