弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2025年8月19日
統一教会との格闘、22年
社会
(霧山昴)
著者 鈴木 エイト 、 出版 角川新書
安倍晋三元首相が奈良県で白昼、手製銃で殺害されたのは今から3年前の2022年7月8日のことでした。ようやく、この秋から裁判が始まります。
銃撃して1人の人間を殺害したことを許すつもりはまったくありませんが、山上被告が統一協会(決して教会ではありません)の被害者であることは間違いありません。
報道によると、山上被告の母親は今でも統一協会の信者だそうです。自分たち一家が経済的に丸裸にされ、生活保護を受けざるをえないほど追い詰められてもなお信者だというのです。まことに洗脳というのは恐ろしいものだと思います。
統一協会の教祖であった文鮮明はとっくに死んでいます。今から13年前の2012年9月3日、風邪をこじらせ肺炎から意識不明となって病死しました。92歳でした。今、その妻が教祖を引き継いでいるようですが、そのナンバー2だった信者は前大統領の妻に高級バッグ等を贈ったとして、つい先日、韓国で逮捕されています。
文鮮明の息子たちの多くはアメリカにいるようですが、利権をめぐって醜い争いをしていると報道されています。
安倍殺害事件のころから急に全国的に有名になった著者は、実に22年前から、街頭やビデオセンターでの統一協会への勧誘行為への妨害行動をしてきました。驚嘆します。
実は私も、統一協会のビデオセンターに押しかけて妨害行動をしたことがあります。
そのとき、ビデオセンターの責任者の女性(当時30代と思います)はすぐに110番しましたので、パトカー2台、警察官が6人ほどやってきました。私はバッジもつけていて弁護士だと名乗って、被害回復のための交渉に来ていると自己紹介しました。すると、警察官は、110番した女性責任者のほうに事情を聴きはじめたのでした。結局、私は騙しとられていた300万円の全額を取り戻すのに成功しました。
統一協会は駅頭などで「手相を見ています」「自分の運勢を知りたくないですか」などと、宗教色を見せずに声をかけてビデオセンターに誘い込もうとします。そこで著者は、いや、これは宗教団体の勧誘行為だと対象とされた人々に教えてやるのです。たいした度胸です。
それにしても、統一協会からガッポリ献金と票をもらい、お互いに持ちつ持たれつの関係にある自民党の国会議員がなんと多いことでしょうか。その典型が萩生田光一議員です。今でも、しれっとして国会議員なのですから、呆れてしまいます。
統一教会の信者は、お金だけでなく、秘書にもなって国会議員を取り込んでいます。本当に怖いです。自民党のほうは利用しているだけ、のつもりでしょうが、客観的にみれば、統一協会のほうが自民党議員をしっかり利用している関係にあります。今、タカ派の若手ホープとして売り出し中の小林鷹之議員も統一協会とは密接なつながりがあるようです。
統一協会の教義によると、日本は韓国に罪滅(ほろ)ぼしのため仕えるべき国なので、献金をするのは当然だというのです。ということは、「日本人ファースト」なんていうものではありません。どうして、超タカ派の自民党議員が「韓国ファースト」の宗教と結びつくのか、不思議でしかたありません。
それにしても、著者が地道な活動を22年間も続けているというのには頭が下がります。
(2025年3月刊。1040円+税)