弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2025年9月23日
ジャングル・チンパンジー
生物
(霧山昴)
著者 前川 貴行 、 出版 新日本出版社
表紙の堂々たるチンパンジーの顔写真に圧倒されます。まさしく気高い至高の存在と言えます。ただ、人間と違うのは、眼に白い部分がないので、どこを見ているのか、分かりません。
著者は、「天を見つめる赤みをおびた瞳だけが、爛らんと輝きを放ってい」ると描いています。
著者は、アフリカのウガンダのジャングルに単身乗り込み、チンパンジーの集団の真近でカメラを構えるのです。怖くないのでしょうか...。
ウガンダの首都カンパラからランドクルーザーで5時間も走って、キバレの森に着く。
大人の雄(おす。チンパンジー)は著者を気にせず放っておいてくれる。でも、機嫌が悪いときは、怒って威嚇してくることもある。木を激しくゆすったり、枝をパキパキと折ったり、木の根をボコンボコンと叩いたりする。そんなときは、そっと離れて、遠くから静かに見守る。
母子にはあまり近づけない。子どもは好奇心旺盛だけど、母親が心配するからだ。
先日、北海道でヒグマに若者が襲われて亡くなりましたが、あのときも子連れのヒグマでしたよね...。母は強し、なんです。
チンパンジーは、ゴリラやオランウータンと違って、植物だけではなくサルを捕まえてその肉を食べる。
チンパンジーの雄は体が大きく、力も強い。牙だって鋭い。襲う気になれば若者なんて、ひとたまりもない。
気まぐれで破天荒なチンパンジーは、ヒト(人間)とそっくり。チンパンジーは、ヒトの思いが分かる。著者が怖がっていると、その気持ちが伝わってしまうかもしれない。なので、「決して敵じゃないよ」という心構えを強くする。なにしろ、カメラだけもってジャングルの中に1人だけで、チンパンジーの集団の真近にいるのです。すごい胆力です。
母親チンパンジーが赤ん坊チンパンジーと、森の中、枯葉の積もった上で、のんびりしている様子の写真があります。穏やかな表情で、こちらをみつめています。
チンパンジーについての本をたくさん読みました。ゴリラやオランウータンより、人間社会によく似ていると私も思います。まず、何より競争と駆け引きが激しい社会なのです。政治をするのです。一位のチンパンジーを二位と三位のチンパンジーが共同戦線を組んで打倒する。自分の地位が危ないとみると、一位と三位が連合して二位を倒す。地位に安住するなんて決して許されない社会なのです。チンパンジーに生まれなくて良かったと思ったほどです。
ところで、かつてチンパンジーは200万頭もいたのが、今や、その1割の20万頭もいないそうです。その原因はやっぱり人間です。ジャングルを開墾して消滅させ、チンパンジーの肉を食べ、また子どもを捕まえて高く売る、そして、人間からの感染症...。
人間同士の共生、そして人間とチンパンジーの共生、みんな大切にしたいものです。
すばらしく鮮明なチンパンジーの大型写真集です。ほれぼれします。
(2025年4月刊。2090円)