弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2004年6月 1日

在日、激動の百年

著者:金賛汀、出版社:朝日新聞社
 日本と韓国・朝鮮との関わりは実に深いし、微妙なものだということを、この本を読んで痛感させられました。
  日本が朝鮮半島の主権を侵して併合し、植民地としたことから、加害者であることは言うまでもありません。強制的に朝鮮人を連行して日本各地で働かせた事実もあります。実は、私の父も三井の労務係として、その徴用に手を貸した事実があります。ところが、日本政府は、一時期、朝鮮半島から日本へ流入するのを禁止したこともあるというのです。日本にやってきて食えない朝鮮人を面倒みきれないということで、しめ出そうとしたのです。しかし、戦争末期の人手不足のとき、またもや徴用を再開しました。
  終戦後、朝鮮半島へ多くの人が帰っていきました。しかし、その一部がまた日本へ環流してきました。食えなかったからです。さらに、北朝鮮への帰還問題があります。「天国」ではないようだということが知れわたって、帰還者は激減した。しかし、家族が「人質」のようになった人々は、北朝鮮を批判できなかった。そういうことが書かれています。
  左翼陣営そして反共陣営のそれぞれの内部矛盾も紹介されています。本当に難しい事態に直面し、それぞれの戦後があって今日を迎えているわけです。よくよく勉強になりました。

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