弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

韓国・日本史(戦前)

2021年3月24日

歴史否定とポスト真実の時代


(霧山昴)
著者 康 誠賢 、 出版 大月書店

「反日種族主義」という耳慣れないコトバを、最近、あちこちで見かけるようになりました。
韓国人はウソの文化、物質主義とシャーマニズムにとらわれている種族であり、隣国日本への敵対感情を表していると主張するためにつくった新造語。韓国人がつくったコトバで、この本が韓国で10万部も売れたというのです。驚きます。まあ、アメリカでトランプを熱烈に信奉する人たちがいるのと変わらないのでしょうね...。
日本でも、この本が40万部も売れたというのですが、それまた信じられません。ヘイトスピーチと同じ現象なのでしょうね。
日本では、「反日種族主義」は文在寅政権に反対する感情と緊密につながっていると指摘されていますが、そのとおりだと私も思います。
日本人のなかに朝鮮半島を植民地として支配し、朝鮮人を隷属する人々と見下していたのを、今なお受け継いでいるとしか思えない人たちがいるようです。とても残念だし、悲しいです。
韓国では、パク・クネ大統領が弾劾されて失脚するまで、社会指導層の破廉恥な嘘のオンパレードが続いていた。
ええっ、これって、まるで今の日本の政治そのものじゃないの...。思わず叫びそうになりました。アベ首相のときに、嘘と嘘があまりにも多く積み重ねられ、官僚が忖度(そんたく)ばかり、そしてスガ首相になっても同じこと、いや、それ以上に、首相の子どもまで表舞台におどりでて、官僚は超高額接待漬けになってもシラを切る。かつて、「我こそは国を支える」、という気概をもっていた(はず)の官僚のホコリは、今やどこにも見当たりません(残念です)。
日本軍「慰安婦」を「性奴隷」ではなく、稼ぎのよい「売春婦」にすぎないという反論があります。それなりに信じている人もいるそうですから、嫌になります。中曽根康弘元首相も「慰安婦」は日本軍が管理していたことを堂々と認めているのです。軍の管理と言うもののもつ重みを軽視してはいけません。
自由意思の「売春」というのは、現代の日本でも、どれだけあるのか、私には疑問です。ましてや戦前の日本に、そして、そこに日本軍が関わって「自由意思」なるものがあるなど、私には想像もできません。
そもそも、戦前の日本では女性は法的主体になれなかったのです。フツーの女性でも選挙権はありません。そこにあるのは、まさしく人身売買システムだったのです。そのベルトコンベアーに乗せられていた女性に向かって、自分の意思で乗ったんだろ、落ちて死んでも自己責任だろ、と放言しているようなものだと思います。それは許せません。
女性は日本軍の軍票をもらっていたようです。それも高額の軍票を...。ところが、現実には、そんな「高額の軍票」は、何の役にもたちませんでした。これは、ナチス・ドイツが政権を握る前のドイツ、マルクのように、価値のないものでしかありませんでした。高い「報酬」をもらって、いい思いをしていたなんて、とんでもないと私は思います。
歴史をあるがまま受けとめるのは、どこの世界でも難しいことなんだと、つくづく思わせる本でもありました。過去を美化したいというのは、誰だってもっていますが、それが後世の人を誤らせてはならないと思います。
やや読み通しにくい記述の本ですが、なんとか読了しました。
(2020年12月刊。税込2640円)

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