弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年9月 5日

マンガ最強の教科書

社会


(霧山昴)
著者 石井 徹 、 出版 幻冬舎

 今の私はマンガを読むことはほとんどありません。マンガ週刊誌は読みませんし、アニメもみることはありません。それでも大学生のころは、寮でまわってくるマンガ週刊誌を楽しみにして、熱心に読んでいました。この本で、『あしたのジョー』の敵(かたき)役の力石徹のモデルがナポレオンだというのには、あっと驚かされました。
 ちばてつやは、顔に存在感、味をもたせるため、世界史の教科書にあったナポレオンの顔を思い出したというのです。そう言えば、力石徹の顔は、なんだか西洋人みたいですよね。エラが張っていて、やや鷲鼻(わしばな)で、顎(あご)が突き出ている。目が大きく、彫りも深く、髪は巻き髪。私も、なんだか変な日本人だなとは思っていました。でも、まさかまさか、ナポレオンの顔だったとは...。
 マンガを電子(ネット)で読む読者と、紙のマンガ雑誌の読者とは、まったく層が違っている。 ええっ、そ、そうなんですか...。そんな違いがあるのですか。よく分かりませんね、どんな違いがあるのでしょうか...。
 ネット上には、無料で読めるマンガが大量にあるとのこと。これまた、私には無縁の世界がるようです。
 ネットのソフト性能が飛躍的に向上して、斤ペンで描いたのと同じタッチでマンガが描けるようになったとのこと。すごいですね...。ただし、絵が平面的で、奥行きがない。
 マンガは2次元。2次元の一枚絵のなかに、肌の質感や奥行き、そして動きまでださなくてはいけない。この技術は訓練しないとムリ。
 マンガで絵がうまいというのは、デッサン力があるというのではなく、感情表現ができる人のこと。「いい表情」を描ける人が、「うまい人」だ。
 マンガづくりには、根気と情熱がいる。
 日本のマンガは、今や世界中に通用している。
 日本のマンガは、編集者がマンガ家と一緒につくっている、共同作業の産物。
マンガに必要なモチーフとは、素材や題材ではない。それは、作者の感動・情動のこと。
マンガの人気作品は、読者の喜怒哀楽を揺り動かす作品だ。
キャラクターの初期設定はとても大切。顔がいちばん大事。そして、いちばん大事なのは目。目で9割方、決まる。目に力がなければ、その人物を壊してしまう。目には、そのマンガ家の美的センスそのものが表れる。主人公の目は大きい。目が大きいのが二枚目。目がパッチリして白い歯が美しい人の特徴。
イチローとか武豊という天才をドラマの主人公にしたマンガは難しい。あまりに天才すぎると、読者に敬遠される。どこかで失敗や悩みがないと面白みがない。読者が見たいのは、感情であり、心理の動き。
なるほど、なーるほど、売れるマンガの編集者として苦労した人のマンガ必勝法です。売れないモノカキの私にとっても、大切なノウハウがぎっしり詰まった教科書でもありました。
(2022年6月刊。税込1870円)

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