弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

ヨーロッパ(中世)

2022年1月10日

中世の写本ができるまで


(霧山昴)
著者 クリストファー・デ・ハメル 、 出版 白水社

古代の写本は、もちろんパピルス。エジプト産の葦(あし)を原料としている。パピルスは製造費が安く、巻物の書写材には適していたが、冊子の形態にとじられたテキストには不向きだった。
紙は中国で2世紀に発明された。これが千年もかけてゆっくりとアラブ世界を経由して西洋に到達した。13世紀にスペインとイタリアに本格的な製紙場ができ、フランスには14世紀(1340年ころ)、ドイツでも1490年までに普及した。イングランドはさらに遅く、15世紀後半。
印刷術の発明は1450年ころのこと。それまでは写本である。1100年ころまでは大部分の書物は修道士が手がけ、1200年以降は、ほとんどが修道院から離れて独自に製作されるようになった。
洋皮紙は動物の皮からつくられる。成長した牛の皮は分厚くて、使えない。子牛または若い雄牛の皮を原料としている。
洋皮紙をつくるのは手間ひまのかかる込み入った工程だ。動物の原皮を、石灰水の入った木か石の水槽に3日ないし10日間浸けて(冬場はもっと長い)、1日に何度か木の棒で水槽をよくかき混ぜる。そのあと、持参した弓形のナイフで毛をこすり取る。脱毛したあとの生皮はさらに2日間も水に浸け、ようやく木枠に張り伸ばす。洋皮紙は並はずれて耐久性に富み、保存状態がよければ、千年ないしそれ以上も長持ちする。これに対して、中世の紙は亜麻のぼろ布からつくられていた。
写本とは、手で書かれたもの。ガチョウの風切羽のうちから、羽根ペンをつくる。これがもっとも筆写に適していた。羽根ペンは、ペン先にインクをつけながら使う。
製本するのは書籍商。書籍商は、写本制作の注文を受け、折丁をその町の複数の写本画家にふり分ける。
中世につくられた写本は、いまなお数万冊が現存している。
洋皮紙が誕生するまで、また、そのつくり方がたくさんの現物の写真とともに詳しく紹介されていて、目を見開かされました。
(2021年8月刊。税込4950円)

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