弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年9月 9日

100問100答

社会


(霧山昴)
著者 日本国民救援会 、 出版 日本国民救援会

 弾圧・干渉とたたかう心得と私たちの権利というサブタイトルのついた小冊子です。30年以上も前は、選挙のたびに警察による不当干渉があり、逮捕者が出ていました。
 私が担当したのは、政党演説会の告知ビラを市会議員が商店街で一軒一軒に声をかけながら配布していたのが戸別訪問にみなされるとして起訴された案件です。私は戸別訪問が買収・供応の温床になるとして取り締まりの対象になっているのは、当時も今も間違いだと考えています。ちなみに個々訪問は戸別訪問と違って許されます。
 アメリカもヨーロッパも戸別訪問こそが有権者が自らやれる選挙運動だとして、大いに推奨されていますが、当然です。戸別訪問と買収・供応とに必然的な関連性はまったくありません。一日も早く戸別訪問を解禁し、もっと自由に、のびのび選挙運動がやれるようにして、現在のような6割にも達しない投票率をせめて7割台にまで引き上げたいものです。
 警察は「不倫不党」ではなく、ときの政権与党に明らかに有利になるよう常時考えて行動している。
 街頭でビラ配りをするとき、通行人の妨害にならないように配布する限り、警察の許可は要しない。マンションへのビラ入れ活動も正当な活動。ただし、住人から注意されたら、その場で論争せずに速やかに退去したほうがいい。マンションのエントランスにある集合ポストへのビラ入れは住居侵入罪に該当しない。
 HP、ブログ、SNS(ツィッター、LINE)で、特定の候補への投票を呼びかけたり、候補者の演説の映像を流すのは自由。ただし、電子メールで投票依頼のメールを送ることはできない。なりすましや中傷は、もちろんNG。
 尾行されていることに気がついたら、その場で「なぜ私をつけるのか」と問いただし、抗議してやめさせる。一人では難しそうなら、友人・知人そして救援会にSOSを発信する。
 パソコンが押収されようとしたら、その場でファイルを一つひとつ開いて確認させ、必要なデータだけを印刷したり、関係ないファイルを持ち出させない。
 警察がビデオ・カメラで録画するのをやめさせられないのなら、こちら側からも録画を試みるべき。今では、ほとんどの人がスマホをもっていますので、録音・録画は昔と違って簡単です。
 黙秘権は、ずっと黙っていても、ときどき話してもいいけれど、終始一貫、何も言わず、ただ黙っているのが一番。目の前にいる捜査官の言うことは、完全に無視する。供述調書に署名・押印はしない。
 わずか110頁ほどの本文ですが、今の日本で、まだまだ本当に役に立つ小冊子です。あなたもぜひ手にとって読んでみてください。
(2022年7月刊。税込500円)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー