弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年5月20日

子どもには聞かせられない動物のひみつ

生物・

(霧山昴)
著者 ハーシー・クック 、 出版  青土社

タイトルに「子どもには聞かせられない」とあるのは、なぜなんだろう・・・、そう思いながら読みすすめていきました。要するに、学校での性教育が遅れている日本だったら、まさしくあてはまりそうな話のオンパレードなのです。
東京の養護学校で教師が苦心のすえつくりあげた性教育について、自民党の議員などが偏向教育として中傷し攻撃したため、教育現場はますます萎縮し、性教育を敬遠して触れたがらないという現実があります。
女性天皇は認めない、夫婦別姓にも反対する。LGBTの人は生産性がない。そんな時代錯誤の考えにこりかたまった人が議員として、もっともらしく議会で「質問」と称してまともな性教育を攻撃するのです。たまりません。性をタブー視するのは良くありません。
ニホンウナギの卵は2009年に太平洋のマリアナ海溝で見つかった。しかし、野生のウナギが交尾しているところはまだ誰も見たことがない。
ナマケモノの胃は、2週間ほどかけて木の葉に含まれる植物繊維や毒性を分解する。ナマケモノの胃袋には、ほぼ丸のままの葉が送り込まれ、友好的な腸内細菌の助けをかりて分解するしかない。だから、ナマケモノはできるだけエネルギーを消費しないように進化した。樹上でのんびりくつろぎ、ゆっくり葉を消化することで、不要な努力を回避している。
こんなナマケモノは、6400万年前から今日まで生きのびている。ナマケモノは一日中、瞑想状態にあるように見えて、実は1日平均9.6時間しか眠っていない。意識はあるが、動作をしない状況こそ、エネルギーを節約し、生きのびるためのカギになっている。
ハゲワシは腐った肉を食べるが病気にならない。それは、動物界のなかで一、二を争う強力な胃酸によって病原菌を撃退しているから。胃酸のPHは希硫酸に匹敵する。ハゲワシの糞は、消毒剤として非常に有効だ。
コウモリは恐ろしい吸血鬼だと思われているが、本当は深刻な病気を媒介し、作を台なしにする昆虫をコウモリが食べてくれているおかげを人間は受けている。また、熱帯の植物にとって主な花粉媒介者の役目も果たしている。
チスイコウモリの寿命は長く、30年もある。
太平洋戦争のころ、アメリカは小さな爆弾をコウモリの大群に背負わせて、日本の都市の上空に放つ計画をたてて、準備してみたそうです。ところが、実験段階で思うように行かず、本番に移る前に中止されました。あたりまえでしょう。でも、その代わりが原子爆弾の投下でした・・・。
パンダ(ジャイアントパンダ)は原初のクマ属の末裔で、2000万年ほど前に別の道を行くようになった。今でもクマとあまり変わらない。
パンダのメスは、セクシーな匂いを木の一番高いところにつけたオスが好みだ。競争に勝ったオスは、ご褒美として、半日で40回もセックスする。
パンダは竹をかじるという食生活を通して、強力な顎(あご)の力を手に入れ、肉食動物のかむ力の比較では、ライオンとジャガーにはさまれて5位に食い込んでいる。
ほとんどのペンギンは一夫一婦制とは言いがたい。コウテイペンギンの85%は、毎年パートナーを取り替えている。ところが、ドイツの動物園にはオスのカップルがいて、10年も一緒だ。そして、ヒナを養子に迎えて子育てまでしている。
メスのフンボルトペンギンの3分の1近くは不貞行為を働き、多くの場合、その相手は同性だ。アデリーペンギンは地球でも数少ない売春に走る動物だ。小石を集めるため、独身のオスに流し目を送り、交尾を求めているそぶりをして、オスと交尾をし小石を得る。ときには交尾せずに小石を得るだけのこともある。
野生のチンパンジーは、いつもお腹のひどい張りに悩まされていて、大きな音でおならをする。湿っぽくて、一瞬のためらいもない。
ギニアのチンパンジーは、葉をつかってスポンジをつくり、ヤシの実からつくった純度の高いアルコールを飲んでいる。ウガンダでは、若いメスのチンパンジーが、お人形遊びのように棒をいじり、抱っこして、寝床をつくって、夜は一緒に寝ていた。
子どもたちに聞かせられないというより、なかなか高度な話なので、それなりに基礎的知識がないと理解するのがたやすくはないという内容の本でした。私は、連休中に面白く読み通しました。
(2019年1月刊。1900円+税)

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