弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年9月24日

連邦陸軍電信隊の南北戦争

アメリカ

(霧山昴)
著者 松田 裕之 、 出版  島影社

アメリカの南北戦争は1861年から65年まで続き、戦死者が実に62万人という、とんでもない近代的消耗戦でした。大砲や新式連発銃が戦場で威力を発揮したわけですが、南北戦争の勝敗を決めたのは、モールス信号をはじめとする情報戦における北軍の優位だったことを知りました。
そして、リンカーン大統領を暗殺した犯人を逮捕するにも、この電信連絡がフルに生かされたといいます。
太平洋戦争で日本軍はレーダーその他の情報網を軽視していたため、後半戦では圧倒的敗北を重ねていきましたが、南北戦争のときの南軍が同じでした。
南北戦争は、情報の収集・共有・分析にかかわる戦力が勝敗の帰趨に決定的な影響を及ぼした最初の戦争だった。最新鋭の情報通信技術であるモールス電信を軍事領域において、どれほど広範囲かつ効果的に駆使できるのか、USA(北軍)とCSA(南軍)の力量差は、文字どおり、この点に凝縮された。
CSA(南軍)政府は電信によって最前線からもたらされる情報を自国民に公表せず、徹底した秘密主義をとり、情報操作もおこなった。ゲチスバーグとヴィックスバーグの両会戦で大敗したのに、CSA領内の新聞は「CSA軍の大勝利」と報道した。
これって、戦前の日本軍の大本営発表と同じですね。
これに対してUSA(北軍)政府は、軍用電信網が刻々ともたらす戦況報告を包み隠さず国民に周知させることで、国民に戦争の当事者たる意識をもたせ、挙国一致の気運を高めていった。まさしく両者は対照的だった。
リンカーンは、南北戦争のとき絶えず電信室に顔を出し、最新の軍需情勢を絶えず頭に叩き込んだ。
大変な知的刺激を受けた本です。アメリカの南北戦争についての知見が増えました。
(2018年4月:東京・蒲田宅)

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