弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2018年8月26日

「日本の伝統」の正体

社会

(霧山昴)
著者 藤井 青銅 、 出版  柏書房

いやあ、本当に思い込みというか、私たちは「伝統」なるものにひどく騙されていることを、よくよく自覚させられる本です。
「初詣」(はつもうで)は、明治30年代に、鉄道会社と新聞社の宣伝・営業努力によって始まったもの。
正月のおせち料理を重箱に詰めるようになったのは、幕末から明治にかけてのことだが、実は、完全に定着したのは戦後のこと。デパートの販売戦略による。
七五三は、関東ローカルな風習だった。一般的になったのは明治30年代に入ってから。
お中元・お歳暮・七五三は、全国のデパートが盛り上げて一般的になった。
ウナギは冬のほうが栄養があり、夏は味が落ちる。夏は暑いのでウナギが売れないので、販売促進策として出来たのが、「土用の丑(うし)の日」という宣伝文句。
神前結婚式は、明治33年の大正天皇の結婚式に始まる。明治25年に最初の仏前結婚式があった。
明治9年の太政官指令は、夫婦別性。明治31年の旧民法ではじめて「夫婦同姓」となった。
卵かけご飯は江戸時代にはない。昭和30年代以降に卵かけご飯が一般的になった。江戸時代には卵を生食しない。当時のニワトリは5日か6日に1個しか卵を産まないので、卵は高級品だった。
一般の日本人が正坐するようになったのは江戸時代の中期以降のこと。その前は、あぐら(胡坐)か立膝だった。韓国と同じですよね。
日本人の喪服は昔から白だった。7世紀は白だと『日本書紀』にある。奈良時代は白だったが、平安時代は黒になった。ところが室町時代に再び白となった。黒い喪服は染料が必要で手間がかかるから。江戸時代は、ずっと喪服は白で、明治に入ってからも変わらなかった。ところが、大正の明治天皇が死んだときから黒になったが、庶民は白だった。昭和にかけて、一般庶民にも黒い喪服が定着していった。
日本の元号はずっと続いているのではない。大化(645年)のころは32年間も空白期間があった。変号は、単純平均すると、1元号で5.5年。最短は鎌倉時代の2ヶ月、そして奈良時代の3ヶ月。
いやはや世の中、知らないことだらけです。勉強になりました。
(2018年2月刊。1500円+税)

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