弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年7月23日

ニホンザルの生態

生物


(霧山昴)
著者 河合 雅雄 、 出版 講談社学術文庫

 1964年に刊行された本ですから、まさしく古典的名著です。
 ニホンザルの観察記録なので、60年たったからといって内容が陣腐化して役に立たないなんていうことはまったくありません。ニホンザルの社会が縦横無尽に語られていて、飽きるところがありません。
 ニホンザルには本当の意味の家族はない。オスとメスとは性関係はもつが、オスは子の育児には関係しない。母と子のまとまりはあり、母系集団はできる。しかし、母系家族と呼ぶことはできない。
 サルのオトナは決して遊ばない。遊ぶのはコドモやチュウドモ期までで、彼らの社会関係を保つうえに重要な役割を果たしている。動物の中でオトナが遊ぶのは人間だけ。ええっ、でもカラスは大人になっても遊んでいますよね...。
ニホンザルのメスを観察していると、騒がしさと大げささを感じる。とくに採食中は誰かが必ずいさかいを起こしている。メスは常にごまかそうとしている。順位のルールがしっかりしていないから、ちょっとしたことがすぐトラブルの原因となり、しかもそれが誇張され拡大される。
 ただし、メスはしょっちゅういさかいを起こしているけれど、それは互いを傷つけたり拮抗しあうという性質のものではなく、それによってかえって感情的結合を強める要素もある。メスの中に群れ落ちしてヒトリザルになるようなサルはいない。メスは依存ないし共存なしに存在することはない。抜きさしならない集合性こそ、群れを成立させる母体である。メスを特徴づけるのは依存性、保守性、連帯性、親和性。
メスはアカンボを産むと、母親どうしが寄り集まる。このときには、中心メス、ナミメスの区別や、それまで仲が悪かった仲間という関係は消失する。
 一般にオスは5歳半になると、母親より順位が高くなる。母親より優位に立つことによって、ワカモノは初めて一人前のオスとして独立したことになる。ヒトリザルになるのはそのあとのこと。
 リーダーがメスを支配し統率しているように見えていても、メスはひそかに周辺へ飛び出し、ヒトリザルとこっそり欲求を満たしてきて、やがて知らん顔をして群れに戻ってくる。
ニホンザルのリーダーになるのにはメスの承諾が必要。それがなければ決してリーダーにはなれない。メスに信望があることが絶対に必要。力ずくだけではリーダーにはなれない。
リーダーの安定した地位を築くには、最低で3年、十分には5年間の在任キャリアを要する。群れが危機にあるときには、メスでも立派にリーダーの役割を果たすことができる。
 ニホンザルを個体識別して、1頭1頭に名前をつけて長期間じっくり観察した結果ですので、面白いことこのうえありません。今では、そのうえにDNA分析などもやっているのでしょうね。
 ニホンザル観察記として抜群の面白さを堪能しました。
(2022年1月刊。1410円+税)

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