弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年6月15日

難民鎖国ニッポン

社会


(霧山昴)
著者 志葉 玲 、 出版 かもがわ出版

 先日、国会で入管法のひどい改悪が成立してしまいました。本当に残念です。自民・公明そして維新は日本に難民を一人も入れたくないホンネをむき出しにしました。人道主義とか国際人権というのは、この3党の議員の眼中にはないようです。今でも難民申請して認定されるのは1%ほどでしかありません。その難民認定が、いかに杜撰なものであるか国会の質疑を通じて明らかになったのに、まったく目を向けて反省しようともしません。我らが仁比弁護士(参議院議員)の国会での質問は胸を打つものがありました。
 難民申請は3回以上だと、申請中でも強制退去させることができるなんて、法律としてひどすぎませんか。外国人労働者を大量に導入して安くこき使うのはいいけれど、政治的・社会的に政府からにらまれた人の逃げ場所と日本がなってはいけないなんて、自分の都合しか考えないということではないでしょうか...。
スリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が、名古屋入管(出入国在留管理局)の収容施設で亡くなったのは2021年3月のこと。本人が助けて下さいと何度も訴えたのに、まったく無視され、十分な医療を受けることなく衰弱して死に至ったのです。ひどすぎます。このウィシュマさんについて、維新の会の女性議員が国会質問のなかで公然とデマ宣言したのも許せません。
ウィシュマさんはひどいDV被害を受けていて、その結果、留学生としての在留資格を失ったのでした。ウィシュマさんについては、ビデオによる映像記録があるとのこと。入管当局は2週間分の映像を2時間に編集してウィシュマさんの遺族だけに見せました。弁護士の立ち会いを入管当局は拒否したのです。これまた、許せません。
 日本の法務省は、現在、国際的に問題となっている「紛争難民」について、難民条約上の「難民」と決して認めようとしない。ともかく、狭く解して、一人でも多く入国させまいという姿勢なのです。
 日本各地にある収容施設に収容されている在日外国人は1253人。うち1年以上も約束されている人が531人(42.3%)もいる。入管による予防拘禁については、裁判所の判断が介在せずに無期限に拘禁するというのです。これは戦前の治安維持法による予防拘禁より悪質。
わずか150頁というハンディーな小冊子です。タイムリーなものとしてじっくり読んでみました。
(2022年2月刊。1600円+税)

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