弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年4月30日

僕とアンモナイトの1億円冒険記

生物


(霧山昴)
著者 相場 大佑 、 出版 イースト・プレス

 とても面白くて、一気読みしました。
 かたつむりのような形をしている、丸いアンモナイトは4億年前の古生代デボン紀から、6600万年前の中生代白亜紀末まで長く生息していた。海中を遊泳していた頭足類。
古い時代のアンモナイトの縫合線は刻みが少ないシンプルな形をしていて、新しい時代になるほど、複雑に入り組んだ模様をしている。
アンモナイトの気室にはガスが充填されていて、海中で「浮き」の役割をしていた。
アンモナイトの腕は、イカと同じ10本と考えられている。
日本でアンモナイトの化石が揺れる場所の多くは川沿い。水の流れがあり、湿度が高く、木々がうっそうと生い茂った場所。そんな場所には、蚊やブヨ、アブの大群がいる。なので、化石の発掘作業は地獄の条件で進められる。さらに、化石の詰まった(埋まった)ノジュールという岩石は、なるべく、そのまま研究室に持ち帰るので、リュックサックは重たくて、避けてしまうほど。
この本の面白さは、アンモナイトのさまざまな形と生態が写真とともに紹介されているのが一つです。もう一つは、数学科出身の著者が畑違いの古生物学の大学院生となり、苦労しながら研究者としての道を究めつつある奮闘記がリアルに語られているところです。
アンモナイトを研究対象にしてからは、心の底から湧き上がる純粋な知的好奇心のままに行う勉強は本当に楽しいものだった。
 科学研究は、論文になって初めて正式な成果となる。そこで重要なのは、再現性。自分以外の人間が検証できるようになっていなければならない。
 博士というのは特別な天才がなるものではない。本当に好きなものに情熱を注いで、悩みながらもたくさんの人を頼って、遠まわりしながら手探りで一歩ずつ歩みを進めて、新しいことを習得していく。蓄積こそ、博士なのだ。
 人生の目的を見つけるまでの苦悩の過程をさらけ出しているので、共感できるし、面白いのです。どうぞ、ご一読ください。
 
(2023年1月刊。1500円+税)

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