弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年4月 4日

防衛省に告ぐ

社会


(霧山昴)
著者 香田 洋二 、 出版 中公新書ラクレ

 軍事予算が天井知らずにふくれあがっています。ウクライナでのロシアの侵略戦争、北朝鮮のミサイル打ち上げ、中国の台湾とのトラブル(武力統一・・・?)。こんな状況で、マスコミも、その軍備拡張に異を唱える勇気を示すことができないようです。いったいトマホークを日本が400発も持って、日本を守れるものなんですか。日本海ぞいにたくさん立地している原発(原子力発電所)を特殊部隊がミサイルで攻撃するのをトマホークや超高速滑空弾をもっていれば防ぐことができるんですか・・・。もちろん、そんなこと出来ません。原発が一つでもミサイル攻撃されたら、残念ながら、この日本は終わりです。海に囲まれた島国の日本ですから、ウクライナのように周辺諸国へ避難して助かるなんてこともありえません。国を守るって、強力な武器があればいいだなんて、ありえないって、ちょっと考えたら小学生だってわかるような話なのに、なんとなく戸締りを強力にしておけば安心安全だなんて幻想、それこそ「お花畑」の錯覚のもとで、自民・公明政権の軍備増強にマスコミはストップをかけようともしませんし、多くの日本人が流されている気がしてなりません。忙しいから、選挙(投票)なんか行ってるヒマはないとうそぶいている日本人が、なんと多いことでしょうか・・・。
この本は海上自衛隊の現場トップ級にいた人が、日本の防衛行政を鋭く告発しています。
イージス・アショアという陸上での迎撃システムの設置が失敗したので、今はイージスシステム搭載をアメリカから購入することが決まっている。2隻で4800億円。しかし、実は燃料代や整備費は巨額なので、総額1兆円以上に膨らむ可能性があるという。1兆円といえば、今すすめられている全国旅行支援の予算規模と同じレベルです。GoToトラベルは当初2兆円の事業として始まりましたが、コロナ禍のせいで途中で中止となったのです。コロナ禍が少しおさまったので再開されましたが、その予算規模が実に1兆円、そんなお金があったら、大学の学資をヨーロッパと同じように無料化できるんです。
著者は15発のミサイルを打った経験があるとのこと。目標まで誘導されていても、平時の安易な環境下でも失敗率が4分の1もあったとのこと。やはり、人間は間違うのですね。
防衛力は、正面装備、後方、教育・訓練の三つがそろって安定する椅子のようなもの。自衛隊は戦うつもりのない組織。いえ、私は、これでよいんだという考えです。
25万人の隊員の誰一人として戦場で人を殺したことのない軍隊、しかも、それは創設以来の良き伝統なのです。この伝統は、しっかり守られるべきものです。
いま、岸田政権は全国130ヶ所に大型弾薬庫を新しくつくろうとしています。1週間の継戦能力に備えての弾薬庫です。でも、原発が幸い襲われていないとしても、1週間も戦闘が続いたら、日本人の多くは飢え死にしてしまいませんか・・・。だって、食料自給率は、3割程度なんですよ。
自衛隊の司令部は地下にもぐるそうですが、国民は地上に取り残されたまま、頭上をミサイルが飛びかっている。なんと恐ろしい光景でしょうか・・・。
アメリカの軍事産業を喜ばせるために、日本は次々に高価な軍事装備品をアメリカから購入させられています。止めてください。税金のムダづかいです。そんなことより、大学の授業料を無償にしてください。小・中・高校の給食費を無料にしてください。赤ちゃんと60歳以上の医療費負担をゼロにしてください。
「身を切る改革」と称して、維新は知事の退職金をゼロにしました。ところが実は、その分を毎月の俸給を引き上げていました。なので、総額は前より値上げしたのです。朝三暮四のごまかしです。
税金の間違った使い方にはきっぱり「ノー」と声をあげる必要があります。ヨーロッパでもアメリカでもストライキが頻発し、デモ行進が活発です。日本は見習う必要があります。この本のように自衛隊現場トップだって声を上げているのですから・・・。
(2023年2月刊。860円+税)

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