弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年10月21日

ドレスデン爆撃1945

ドイツ


(霧山昴)
著者 シンクレア・マッケイ 、 出版 白水社

 都市住民への無差別空爆を世界で初めて始めたのは日本軍。そしてアメリカ軍も1945年3月10日の東京大空襲で、一夜にして10万人以上の死傷者を出しました。日本の木造家屋を焼き尽くすために焼夷弾を念入りに開発・改良して実行に及んだのです。それを指揮したアメリカのカーチス・ルメイ将軍は戦後、日本より勲一等を授与されました(その名目は航空自衛隊の育成に貢献したこと)。罪なき日本人を10万人以上も殺傷した「敵」軍に勲章を授与するという日本政府の神経が信じられません。アメリカのやることなら何でもありがたがる、自民党政府の奴隷根性がよくあらわれています。
 さて、この本は同じ1945年2月13,14日に英米空軍の猛威爆撃によってドレスデンが灰燼(かいじん)に帰した前後の状況を描いたものです。
 ドレスデンはドイツ南部の都市、オーストリアに近い。しかし、かつてのナチス・ドイツの領土としては、中心部に位置する。そして、ヒトラー・ナチスの政策を早い段階で熱狂的に受け入れていた都市でもある。
 終戦のわずか数週間前、1945年2月13日の一晩に、英米空軍の爆撃機796機が飛来して、「地獄の門を開いた」。この地獄の一夜で、2万5千人もの市民が殺された。
 ソ連軍のドイツ進攻によってアウシュビッツ強制収容所が解放され、ユダヤ人の大量虐殺の事実が明るみに出たのは、この少し前の1月27日のこと。
 ドイツの戦争遂行意思をなくすためには、産業施設に限定することなく、都市の破壊、労働者の殺害そして、共同体生活を崩壊させること。イギリスの爆撃機軍団のサー・アーサー・ハリス大将は、そう主張した。
 爆撃は、まず照明弾投下機が一番に飛ぶ。一番に濃線色の照明弾を投下すると、明るい白色の棒状の焼夷弾が滝のように落ちていく。後続機が、赤い照明弾を落とす。そして、橙色、青、淡紅色がそれぞれ違った目標の目印となる。航空機乗組員は、みな志願兵だった。しかし、みな神経がずたずたになっていく。そして出撃中毒にもなる。
 爆撃機はドレスデンの3千から4千メートル上空から、木造建築の内部と周囲に火をつける目的で、2種類の殺傷兵器を投下した。まず重さ1.8トンのブロック・バスターあるいはクッキー爆弾。路上にいた者は、みな爆発で発生した火で瞬時に炭化し、着衣を焼き尽くされ、裸の遺体が地面に残される。
 第一波の爆撃機244機とモスキート9機は、15分間のうちに、880トンの爆弾を投下した。その57%が高性能爆弾、43%が焼夷弾。そして、1.8トンの投下地雷弾などによって建築物が破壊された。数十万の焼夷弾が、さまざまな装置で点火されて次々に投下され、床板、家具、木造梁(はり)、衣類の只中で、ますます燃え盛る炎に燃料を注いだ。
 第二波の爆撃機は552機。1.8トンの「クッキー」、その他の爆弾と焼夷弾、総計1800トンが炎の届いていない地域に投下された。
 この前、B17爆撃機による精密爆撃は、望まれていたほど精密な結果をもたらさなかった。目標から何キロも離れたところに落下した。
 このドレスデン爆撃について、ナチスのゲッペル宣伝相は「テロ爆撃」と非難した。そして、大量の市民を無差別に死に追いやっていいのかという論理的問題として大いに議論となった。ハリス大将は、イギリス王室からの勲章授与には応じたが、政府からの表彰は回辞した。
 イギリス空軍は、5万の搭乗員が戦死した。30回の作戦飛行から生還できた者は3人に1人もいなかった。ドイツ空軍との空中戦は、まさしく死闘だったのですね。
 イギリス空軍の航空機乗組員12万5千人のうち、5万5千人以上が戦死した。
 アメリカ軍の航空兵2万6千人がヨーロッパ戦線で死亡した。猛烈な対空砲火と、零下の気温にさらされ、また酸素不足と凍傷にも苦しみながら任務を遂行していた。
 この精神的重圧をやわらげるため、基地内に楽しく、くつろいだ雰囲気をつくり出す努力が尽くされた。食事はいつも豊富で、故郷で供される種類のパンが提供された。パブに入り、ダンスホールにも行けた。
 ドレスデンの死者は13万5千人をこえ、20万人に達するともみられている。
 ドレスデン爆撃は犯罪なのか...。1960年代のイギリスでは、とりわけ芸術界で、ドレスデン爆撃は邪悪で、恥ずべき出来事だという見解が定着した。
 東京大空襲だって、広島・長崎の原爆投下と同じように戦争犯罪だと私は考えています、カーチス・ルメイ将軍はやはり犯罪をおかしたのであり、日本政府による勲章授与は大きな間違いだと私は考えています。いかがでしょうか...。
 380頁もの大作を久しぶりの北海道行きの飛行機のなかで必死の思いで読みました。
(2022年8月刊。税込4730円)
 
 庭の一隅にフジバカマを4株植えて、花が咲いています。小ぶりの可愛らしい花です。アサギマダラ(チョウチョ)を招こうとしているのですが、まだ来てくれません。九州を縦断飛行中に立ち寄ってくれることを期待しているのですが...。
 チューリップの球根を植えつけはじめました。毎年500本近く植えています。
 いま、エンゼルストランペットが花盛りです。黄色いトランペットがたくさんぶら下がっています。キンモクセイがようやく咲き出しましたが、今年は匂いがまだ弱い気がします。

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