弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年7月19日

脳は世界をどう見ているのか

人間・脳


(霧山昴)
著者 ジェフ・ホーキンス 、 出版 早川書房

どうやって脳が知能をつくり出すのか...。脳についての最新のレポートです。
新皮質は知能の器官である。知能として思いつく能力、視覚・言語・数学・科学・工学のほとんどが新皮質で生みだされている。何かを考えるとき、その考えているのも新皮質だ。
新皮質は、脳容積の4分の3近くを占めていて、多種多様な認知機能に関与している。
新皮質は、生まれながらに世界について何らかの想定をしているが、具体的には何も知らない。経験をとおして、世界に豊かで複雑なモデルと学習する。
脳は、入力が時間とともにどう変わるかを観察することによって、世界のモデルを学習する。脳が何かを学習する唯一の方法は、入力の変化だ。学習のほとんどは、以前はつながっていなかったニューロン間に新しい結合を形成することによって起こる。
脳は複雑である。どうやって場所細胞と格子細胞が座標系をつくり、環境のモデルを学習し、行動を計画するかという詳細は、まだ部分的にしか分かっていない。
私たちの行動を導く感情は、古い脳によって決まる。
そもそも宇宙が存在することを知っているのは、宇宙の中で私たちの脳だけ...、という発想にも驚かされますし、万が一、ヒト以外に宇宙に生命体がいたとしても、それが私たちヒトと同時的に交信できる確率はきわめて低いだろうという指摘にも圧倒されました。
天の川銀河は誕生して130億年。知的生命体が100億年だとして、人類が1万年のあいだ生存していたとすると、6時間のパーティーのなかにヒトは50分の1秒しかいなかったことになる。ということは、たとえば、何万という知的生命体が来ていたとしても、私たちヒトとは誰とも会わなかったということになってしまう。
天の川銀河に生命体が生息できる惑星は400億個ある。地球上の生命は、数十億年前、惑星ができて、すぐに出現した。地球が典型なら、生命はこの銀河系では、ありふれていることになる。でもでも、たとえ、ありふれているとしても、ヒトがいた(いる)のは、わずか50分の1でしかないというのですから、地球外生命との出会いはすごーく、まれなことなんでしょうね...。
ヒトの脳の話は広大無辺の宇宙の話と直結しているという典型の本でもあります。
(2022年5月刊。税込2680円)

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