弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年7月15日

イワシとニシンの江戸時代

日本史(江戸)


(霧山昴)
著者 武井 弘一 、 出版 吉川弘文館

イワシとニシンは、江戸時代の社会を支える重要な自然だった。
えっ、ええっ、どういうこと...。イワシもニシンも大衆魚とは聞いていたけれど...。
江戸時代の後期、百姓にとって、肥料の確保は切実な悩みの種だった。江戸時代、中期以降は自給肥料が足りなかった。このころの自給肥料とは、人糞、厩肥(きゅうひ)、草肥などの総称。
イワシが生(ナマ)で食べられる時間は、きわめて短い。また、イワシは腐りやすいので、乾燥して干物になった。干されたイワシは値が安いうえに肥料として作物に与える効果が高かった。それに大量にとれるので、イワシの価格は安い。
干鰯(ほしか)は、水揚げされた生の鰯をそのまま海沿いに敷きつめて、天日で乾かすだけでつくった。
もうひとつは、〆粕(しめかす)。はじめにナマのイワシを窯で煮たあとに油を搾る。その脂を絞ったあとののこり滓(カス)が〆粕。こちらは、干鰯より価格が高い。
このように、イワシもニシンも江戸時代、日本の農業を支える肥料として活用されていたのですね。
近世の村むらが幕府に国を単位として連帯して訴えた運動を国訴(こくそ)という。肥料価格の高騰・菜種・木綿の自由取引を求めた。文政2(1819)年の幕府の物価引下げ令を契機として、摂津・河内の619ヵ村幕府領村むらの大坂町奉行所に干鰯値下げなどの訴願を起こし、この訴願が先導役となって、文政6~7年の木綿・菜種国訴につながっていった。
国訴というコトバを初めて聞きました。歴史も、まだまだ知らないことだらけです。世の中は未知なるものばかりなんですよね...。
(2022年2月刊。税込2640円)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー