弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年12月17日

キリンのひづめ、ヒトの指

生物


(霧山昴)
著者 軍事 芽久 、 出版 NHK出版

 ヒトの大腿骨はまっすぐな骨ではなく、10度ほど傾いている。ヒトは直立すると、股関節は身体の横のほうにあり、膝は身体の中心線上に位置する。だから、大腿骨が斜めになっているのも当然のこと。うひゃあ、そ、そうなんですか...。
 ヒトは、この構造のおかげで身体の重心の真下に足をつくことが可能になり、安定した歩行・走行ができるようになった。
 チンパンジーには大腿骨の傾斜はなく、ヒトの新生児にもない。足はむしろ外側に広がるようになっているが、これは母親に抱きつきやすくするため。
 キリンの足は、半分が「足の裏」。足の裏に相当する部分の長さは70~80センチもある。
 キリンやウマと同じく、いずれも地面についているのは指先だけで、かかとは浮いている。
 キリンの首の長さは2メートル。キリンもヒトも、首の中にある頸椎という骨の数は7個。一つひとつの長さが異なるだけ。哺乳類の頸椎の数は、みんな7個。ただし、ナマケモノとマナティは違う。
 ところが著者は、キリンの8番目の首の骨を発見しました。大発見です。本来なら動かないはずの第一胸椎が15度ほど動く。キリンの首元にある8番目の「首の骨」は哺乳類の頸椎は7個という基本ルールを守ったまま、首の可動範囲を広げて、高いところの葉を食べる、地面の水を飲むという二つの目的を同時に達成することを可能にした。
 胃でセルロースを分解する動物たちより、大腸で分解する動物たちのほうが巨大な体をもつように進化したものが多い。大腸内に微生物を飼う動物たちの消化は、「多少の無駄には目をつぶり、たくさん食べて、たくさん出す」ことを可能にするやり方だ。
 ゾウは大量の植物を食べ、森を切り拓(ひら)きながら生きている。同時に、さまざまな場所でウンチをして、新たな森へとつながる「種まき」もしている。
 キリンの45センチもある舌は黒っぽい。これは舌の日焼け大作ではないかという仮説がある。
 ヒトは、血液が体内を1周するのに20秒かかる。キリンはもっと遅くて1周45秒ほど。
 キリンは身体の大きさの割には肺が小さい。肺の容積はヒトの8倍ほど。体重はヒトの15倍ほどもあるのに...。
 前の『キリン解説記』(ナツメ社)がとても面白かったので、その続編と思って読みました。とても面白く、知的刺激にみちた本でした。
 
(2022年10月刊。税込1650円)

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