弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年8月 6日

特捜部Q

デンマーク警察


(霧山昴)
著者 ユッシ・エーズラ・オールスン 、 出版 早川書房

 デンマークの警察小説。過去の未解決の事件を扱うという警察小説は、前にも読んだことがあります。迷宮入りしていた事件を、刑事部の「お荷物刑事」が助手の力を借りながら、少しずつ謎を解き明かして、ようやく犯人にたどり着くというストーリーです。
 ネタバレはしたくありませんが、ストーリー展開は復讐小説という体裁をとっています。
 どこの国の警察にも「ハグレ刑事」のような一匹狼的な刑事がいて、上司はもてあましたあげく、「一人部署」を創設までして、そこに閉じ込めようとしたのでした。
 ところが敵もさるもの、ひっかくものということで、デンマーク語もろくに話せないような、シリア系の変人が、謎解きで、奇抜なアイデアの持ち主だったという突拍子もないアイデアが生き生きと語られます。それで、また話がふくらみ、次回作品への期待が高らむのでした。
 警察小説は、あくまで殺人事件が重要なファクターであり、その登場人物の性格や部署の設置、脇役(人種的)配置、事件捜査、物語の構成、脇筋のからませ方などについて、細かい配慮を工夫、創造に解説者(池上冬樹)は感心していますが、まったく同感です。
 570頁もの文庫本の警察小説なので、いったい次はどういう展開になるのか、目が離せない思いで一気に読みすすめました。この「特捜部Q」は少なくとも5冊シリーズになっています。その想像力と描写力に驚嘆してしまいます。
(2018年9月刊。税込1210円)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー