弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年7月30日

ダマして生きのびる虫の擬態

生物・虫


(霧山昴)
著者 海野 和男 、 出版 草思社

小さな大自然の驚異をたっぷり味わうことのできる写真集です。木の葉そっくりのコノハムシ。どうして、こんな色と形、模様ができたのか...。
昆虫が意思をもって擬態を発展させてきたとしか思えない。でも、昆虫自身は自分の姿を客観的に見ているはずがない。それなのに、どうして、こんな芸当ができるのか...。本当に不思議、フシギです。
昆虫の擬態と隠蔽の姿のオンパレード。何かの姿に「化けて」誰かをだましている。
団塊世代の著者は50年以上かけて、昆虫の擬態を観察し、撮影してきました。なので、写真もバッチリ、解説文もバッチリ。
木の葉に似せるにしても、色も形も異なっている。すると、昆虫のほうも、それにあわせていろんな葉の色や形にあわせている。
コノハムシのメスは木の葉にうまく擬態しているため、飛ぶことができない。すると、オスがメスのところにまで飛んでいかないといけない。なので、もちろんオスは飛べる。
著者が日本一すごい擬態の巧者としているのはムラサキシャチホコ。長野県や東北地方にフツーにいるガの仲間。必ず葉の上面にとまる。すると、光が上からあたって、丸まった枯れ葉のように見える。ところが、これは、実際には、翅が丸まっているのではなくて、たんに前翅と胸の模様の陰影によって立体的に見えているにすぎない。
ホシミスジは、おとりをつくって身を隠す。
マレーシアには、枯れ葉そっくりの彼はカマキリがいる。まさしく枯れ葉そのものです。そして、メスの葉が葉に似ている。それは卵をうむメスは重要なので、オスより上手になったのだろうと著者は推測しています。いやあ、ホントでしょうか...。
色や模様で捕食者を脅かす昆虫がいます。翅を開いたマレーシアのセンストビナフシは、まさしく扇子を開いた格好をしています。
バラの茎にいる昆虫は、バラのイバラまで形も色も似せます。
ハチでないのに、ハチに似せた生き物がこんなにもたくさんいるというのも驚きです。縞(しま)模様はハチの印なのです。
突然、目玉が出てくるヤママユガも、不気味そのものです。よくぞ、こんな色と形を思いつき、それを体現したものです。これも何か、誰かの意志のたまものなのでしょうか...。大自然はまさしく不思議だらけです。だから生きているって面白いのですよね。
(2022年6月刊。税込2640円)

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