弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2017年6月 5日

ハヤブサ

(霧山昴)
著者 ヘレン・マクドナルド 、 出版  白水社

ハヤブサは史上最速の動物だ。時速160キロで飛び、いや時速320キロで降下する。ハヤブサは高速で飛び、目が黒っぽく、開けた空中で活発に狩りをする。
ペレグレンハヤブサは鳥を狙うのに対して、砂漠のハヤブサは哺乳動物やハ虫類、昆虫も獲物にする。どちらのハヤブサも、メスのほうがオスよりも身体が大きい。オスは一般にメスの3分の1ほどしかない。
シロハヤブサは、背中の模様がペン先の形に見えたことから、17世紀のスペインでは弁護士(レトラド)と呼ばれた。
ええっ、ハヤブサは弁護士と呼ばれていたのですか・・・。
ハヤブサは、その感覚系と神経系の働きが高速なため、反応がきわめて速い。ハヤブサの世界は人間よりも10倍の速さで動いている。人間の脳は、1時に20の事象しか処理できないのに対して、ハヤブサは70~80の事象が処理できる。だから、テレビ画面では毎秒25枚が放映されるが、ハヤブサは、これを動画としては認識できない。
一瞬のあいだに、人間よりもたくさんのものをまとめて見られるおかげで、全速力で足を延ばして空中の鳥やトンボをつかむことができる。ハヤブサの仲間のチョウゲンボウは、18メートル離れたところから、体長2ミリの虫を判別できる。
ハヤブサは水はめったに飲まない。必要な水分の大半はエサとなる動物から補給する。
ハヤブサの消化系は短い。生の肉は消化しやすいから。
ハヤブサは、一日のかなりの時間を羽のメンテナンスに費やす。脂肪酸、脂肪ろうの分泌液を出し、羽に塗る。この分泌液には、防水効果のほか、ビタミン前躯体があり、これが陽光を浴びてビタミンDに変わる。
ハヤブサは、だいたい一夫一妻であり、婚外交尾はめったに見られない。
ハヤブサの子は、生後1年目に、およそ60%が飢えに苦しんで死ぬ。
ニューヨークやワシントンのような大都会でもハヤブサが繁栄するようになったとのことです。ハトのようなエサが豊富だからのようです。
ファルコンとも呼ばれるハヤブサについて、いろいろ知ることができる本でした。
(2017年5月刊。2700円+税)

2017年6月 4日

知っているようで知らない鳥の話


(霧山昴)
著者 細川 博昭 、 出版  サイエンス・アイ新書

本のタイトルどおり、驚きいっぱいの知的刺激あふれる本です。
カラスは遊ぶのが大好きで、1つのボールを集団で追いかけて奪いあったりする。証拠写真があり、なるほどと思いました。
カラスのなかには、カレドニアガラスのように、未知の材料から、状況(必要)に応じた道具をつくり出す能力のあるカラスがいる。
オウムも、カラスと同じように自作した棒をつかって、食べ物をたぐり寄せる。
カケスは、エサの少ない冬に備えて、実りの季節(秋)に栄養価の高いドングリを隠して、溜め込んでいく。カケスは、最大4000ケ所にものぼる隠し場所を正確に記憶している。どこに隠したのかを忘れることはない。
大型のインコであるヨウムは、好奇心が強く、安心できる相手と認識した人間を深く信頼する。
ヨウムのアレックスは、色や形などを50以上も正確に理解し、自分の口で名称を言えるようになった。
ブンチョウは、音楽を聞き分けている。クラシック音楽を好み、現代音楽を聞くくらいなら無音のほうがマシと考える。
ニワシ(庭師)ドリのオスは、メスの気を惹く構造物をつくる以外には何もしない。オスのつくった構造物が気に入ったメスは、オスの才能を認め、その場で交尾する。オスのつくる構造物は、完成するまで10ヶ月もかかる。
カモのヒナが卵からかえるのが同時期になるのは、卵の中のヒナが、卵の内側から卵殻を突つき、その音をまわりの卵に伝え、それぞれの出す音を聞いて、自分の成長が周囲より早いか遅いかを知って、成長速度をコントロールしているから。
よくも、こんなことが判明したものですね。観察だけからとは思えませんが・・・。
陸上にすむ哺乳類で、息を止められるのは人間だけ。チンパンジーには、その能力はない。
鳥は、息を止めたり、気管支を通る息の流量をコントロールして歌をつくっている。
インコやオウムは、寝ているときに、寝言として、耳にした声や、覚えている人間の言葉を口にすることがある。
カラスやインコは、人間の視線をたどって、その目が見ている先を知ることができる。
ツバメの赤ちゃんが巣から放り出されているときには、つがいを見つけられなかった若いオスが、カップルを破局させる目的でヒナをつまみ出してしまった可能性がある。
メスは、ヒナが全滅してしまうと、カップルを解消して、新しいパートナーを探そうとする。
いやはや、世の中は奇想天外、知らないことだらけなんですよね・・・。
(2017年3月刊。1000円+税)

2017年3月 6日

ニワトリ


(霧山昴)
著者 アンドリュー・ロウラー 、 出版  合同出版

ニワトリが必要とする土地、水、投入エネルギーは、豚や牛よりも少ない。900グラムの飼料で450グラムの肉をつくり出す。これより効率のいいのは養殖サケのみ。
ニワトリは万能生物だ。さまざまな品種をつくり出すことが出来、雑多な餌を食べ、各地の気候に適応し、狭い土地でも飼うことができる。ニワトリに必要なのは保護する小屋だけで、台所の残飯や庭のゴミで生きのびられる。エサにも人手にもお金がかからなかった。
鶏肉は豚肉や牛肉より風味を付けやすいので、ファーストフードにぴったり。
2012年、アメリカのタイソン社の売上高は3000億ドルをこえ、週間生産量は60の工場で4000万羽を突破した。ブロイラー・ビジネスはアメリカの内外で活況を呈している。
少なくとも4000年前にニワトリは家畜化されていた。インドとパキスタンで骨と文字情報が発見されている。はじめ、ニワトリは食料としてではなく、魔術的な力に対する信仰の対象だった。人々は肉や卵を食べていなかった。農業が出現してから、人々は次第にニワトリを食料として利用しはじめた。
アメリカ人は、世界平均の4倍の量の鶏肉を食べている。
ニワトリは、人間とニワトリの顔を思い出して、以前の経験にもとづいて、その相手に対応することができる。好きなメンドリを見かけたオンドリは、精子の生産量が急に増加する。これって、どうやって計測したんでしょうかね・・・。
ニワトリは地球上に200億羽以上、生息しているが、バチカン市国と南極大陸にはいない。南極では、ペンギンを病気から守るため、生きたニワトリも生の鶏肉も輸入を禁じられている。
ニワトリは、鳥と人間のあいだを循環し続ける病気に対するワクチンの主な供給源となっている。
ニワトリの原生種は、ミャンマーのセキショクヤケイ。ニワトリは、東南アジアに起源があり、そこからアジアの他の地域へ、さらに世界中へと広がっていった。
私が小学生のころ、わが家でも狭い庭に小屋をつくってニワトリを飼っていました。ニワトリのエサにする野草を野原に採りに行き、また、貝殻をつぶして食べさせていました。そして、父がニワトリの首をちょん切って、腹を割いているのをそばで見ていました。卵の生成過程に見とれたことを覚えています。
弁護士になってから、鶏肉生産工場で働く依頼者から、生きたニワトリを殺すことに耐えられないという話を聞いて、なるほど、生きたものを毎日、毎日、殺生するのは辛いものだろうと思いました。そうは言っても、鶏皮は昔も今も私の好きな焼鳥です。
ニワトリをいろんな角度で紹介している本です。
(2016年11月刊。2400円+税)

2016年9月24日

鳥の不思議な生活

(霧山昴)
著者 ノア・ストリッカ― 、 出版 築地書館 

わが庭のスモークツリーの木にヒヨドリがいつのまにか巣をつくっていたところ、へびに襲われ、二羽のヒナが哀れ生命を落としてしまったことは、前にこのコーナーで報告しました。
今度は、キンモクセイの大きな木にドバトが巣づくりを始めたのですが、こちらは、どうやら中止したようです。姿を見かけなくなりました。鳥たちの巣づくり、そして子育ても大変のようです。
ハトの帰巣能力を利用した鳩レースは、普通150キロから300キロの距離。ハトは、ニワトリよりも早く5000年前にメソポタミア付近で初めて家畜化された。紀元前1000年には、エジプトは伝書鳩を訓練していた。
チンギスハンやユリウス・カエサルなどは、ハトを長距離通信に利用していた。
第一世界大戦中には、50万羽のハトが連合軍によって使われた。
ハトの二つ鼻の穴には、目に見える違いがある。海や気流が起こす低周波音(可聴下音)を感知して、それに応じて方向を定めている。
ハトはかなり社会性があり、空中で階層的な序列を維持している。
ムクドリは、夜になると集まる習性をもち、夏の終わりには数十万羽にのぼることがある。夕方、眠りにつく直前、ムクドリは、ねぐらの上空を集団で時には1時間以上も巡回する。
スズメも似たような行動をとっていますよね。夕方暗くなる寸前、駅前の街路樹に大集団が集まって、うるさいほど鳴きながら、枝から枝へ飛びまわっているのを、よく見かけます。
コンドルは細菌だらけの死骸を食べても病気にならない。コンドルの胃は炭疽菌の芽胞を悪影響を受けることなく処理し、殺菌できる。ボツリヌス菌に汚染された死骸を食べても菌を殺し、免疫系は菌の出す毒素に対処できる。ウィルスを含んだ死骸を無毒化することがコンドルには可能だ。
コンドルが、重大な病原体や毒素をどのように処理しているのか、それを正確に解明できれば、それを人類に応用できれば、伝染病の予防に大きな意味があるだろう。
ガスパイプラインが漏れると、ヒメコンドルの集団が、すぐにその真上に集まってくる。
ハチドリは、世界でもっとも小さな鳥だ。体重がわずか1.8グラムしかない。小さな温血脊髄動物だ。
ハチドリは、ほとんど捕食者に襲われない。あまりに小さくて動きが早いので、捕食者が規にもとめないのだ。
ハチドリは、物理的可能性の瀬戸際で生きている。ハチドリは、他の鳥に比べて、体温を保つためだけでも体重の割りにたくさん食べなければいけない。ハチドリは、体重との割合では、鳥のなかで最大の心臓をもち、動物のなかでもっともはやく鼓動する。人間の最大心拍数の6倍以上だ。
ハチドリは、夜にはエンジンを切って体幹部のエネルギー消費を、死ぬ寸前の休眠状態にまで下げる。眠っている時は仮死状態にある。
ニワトリは、大きく成長するにつれ、攻撃性が増す。初めニワトリは、食用としてではなく、闘鶏のために家畜化された。
書名のとおり、不思議な能力をもち鳥たちの興味深い話が満載の本でした。
(2016年1月刊。2400円+税)

2016年9月12日

鳥の行動生態学

(霧山昴)
著者  江口 和洋 、 出版  京都大学学術出版会

 このところ我が家の庭にハトの出没が目立ちます。どうやら金木犀の木に営巣しようとしているようです。小枝を口にくわえて飛んでいく姿をよく見かけます。少し前には、スモークツリーの木にヒヨドリが巣をつくって子育てしているのをヘビに狙われ、ついに2羽のヒナがヘビのエサになってしまいました。ヒヨドリが巣をつくっているのに気がついていなかったので、ヘビ接近で警戒態勢に入っているのを見ても、何だか今日は騒々しいなと他人事(ひとごと)みたいに構えていたので、気がついたときには遅かったのです。
 鳥が恐竜の仲間だなんて、信じられませんよね。あの巨体で地球を支配していたのに、その仲間の子孫が空を飛んでいるなんて・・・。
イモ虫が蝶になって軽やかに空を飛ぶのも想像を絶しますが、同じようなものです。
鳥類の一夫一妻は、全体の9割を占める。ところが、鳥類には、つがい外交性が認められる。つがい外交性とは、社会的なペアの絆があるにもかかわらず、ペアの片方または両方がペア以外とも交配する、遺伝的には乱婚の一種である現象をさす。
 一夫一妻の鳥類の90%以上がパートナー以外との子供を残していることが判明した。これは、過去40年間の鳥類学のなかでも、もっとも大きな発見の一つ。この発見は、鳥のDNA研究がすすんだことによるものです。90%というのは、人間の浮気による子供の比率より、さすがにはるかに高い比率だと思います。
 鳥類1万種のうち、100種(1%)が絶対的托卵鳥。親が他の種の鳥に子育てを託すというのです。それがうまくいくために、卵の色や模様を似せている鳥がいるのです。
多くの鳥類は、なぜか色鮮やかな卵を産む。しかし、真っ赤や黄色の卵はない。青字や緑色の卵は多い。
 鳥はエサをとるためにいろんな工夫をしている。なかには道具までつくっているし、固い石をつかって、食べやすいようにしている。ニュージーランドのカレドニアガラスは先端にフックのある道具をつくり出して、エサをとる。ミヤマガラスは針金を曲げて加工し、虫の入ったバケツを釣り上げるのに成功した。
シジュウカラは、カラスへの警戒音を聞くとヒナは巣のなかでうずくまる。ヘビへの警戒音を聞くと一斉に巣を飛び出す。
 鳥に関する地道な研究の成果が、豊富な写真とともに一冊にまとめられています。
(2016年3月刊。3200円+税)

前の10件 1  2  3  4

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー