弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2021年5月17日

電柱鳥類学


(霧山昴)
著者 三上 修 、 出版 岩波科学ライブラリー

ええっ、こ、こんな学問って、ホントにあるのかしらん...。
私は町中(まちなか)にみる電柱を、いつも電信柱(でんしんばしら)と呼んでいます。でも、本人だって、これは電信(でんしん)の柱じゃないはずだ...と疑っていました。これって、明治の文明開化のころの呼び名がそのまま残っているだけじゃないの...って、思ってきました。
この本によると、電柱には3種類あるそうです。電信柱(電話柱)、電力柱、そして共用柱です。共用柱は、電力柱と通信線を渡す柱を共用しているのです。
電信柱は、もともと、当初は電報を送る線(電信線)だったことに始まり、すっかり定着してしまったということです。
電線の基本構成は、上に3本の電力線、下に3種類の通信線というもの。
日本で、東京と横浜のあいだで電報サービスが始まったのは1870年。したがって、文句なしに、このころは電柱は電信柱でした。その後、電話線そして電力線が渡されることになったのです。
ウグイスは、主としてヤブの中にいるので、電線のように目立つところに止まることはめったにない。電線によく止まる鳥は、スズメ、ムクドリ、ツバメ、ハシボソガラス(ボソ)、キジバト、ハシブトガラス(ブト)、ドバト、ヒヨドリ...、と続く。
わが家の庭によく来る、愛敬のいいジョウビタキは電線にはあまり止まらないようですが、なわばり内の巡回のときには電線にも止まるそうです。
スズメは、電線の中央付近によく止まり、カラスは電柱に近い電線によく止まる。
カラスは、電線を遊びの場としても利用している。カラスって、賢いんですよね。なので、よく遊ぶようです。すべり台ですべって遊んでいる様子を動画でみたこともあります。
カラスのなかで、電柱に巣をつくるのはボソ。ボソは周囲から様子が見られても気にしない習性をもっている。
ブトは、巣の周りに近づいた人をよく襲う。ボソが人を襲うことは少ない。
わが家の周辺ではカササギがよく巣をつくっています。電力会社は巣づくりを始めて、ヒナが誕生し、子離れしてしまうまではじっと待ち、子育てが完了して親たちが巣に戻らなくなってから、巣を撤去するそうです。
やはり人類と大自然との共有は大切なことですから、せめて、それくらいの配慮をこれからも電力会社にはお願いします...。
(2021年1月刊。税込1430円)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー