弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年5月30日

となりのハト


(霧山昴)
著者 柴田 佳秀 、 出版 山と渓谷社

まさに身近でよく見かけるのがハトです。カラスも見かけますが、人間への警戒心が強く、いつも少し離れています。ハトは、いつも足元近くにまで迫っても逃げようとしませんので、「どいて、どいて」と声をかけるほどです。
世界に350種もいるハトの体型はほとんど同じで、例外がない。小さい頭に、ぽっちゃりした丸い体。嘴は小さくて、足が弱い。
ハトには目立った武器はなく、丸腰でも、天敵のタカに食べ尽くされないのは、逃げる天才だから。
鳩胸。胸が大きく張り出して発達しているのは、大きな筋肉があるから。その割合は体重の31~44%にもなる。このハトの胸は強力なエンジン。巡航速度で60キロ、風に乗ると100キロ超。この大きなエンジン(胸)があるおかげで、ハトは高速で飛び、タカの猛追を振り切って逃げのびることができる。
ハトの羽毛は、とても抜けやすい。タカに追いつかれて、尾羽がタカにつかまれると、ごそっと羽毛が抜け、逃げ出せる。
また、ハトの羽毛には、粉になる羽毛がある。タカがつかもうとすると、粉が邪魔になり、つかまえられない...。
ハトは地上を首を振って歩いているように見えているが、それは誤解。よく見ると、ハトは、頭を静止させている。そして、首振り(実は静止)しているから地上のエサを見つけて食べる。
ハトは、基本的にベジタリアン。ハトは、水をごくごく飲むことができる。ハトの舌は注射器のピストンのような働きをし、口の中の圧力が下がるため、水を吸い上げられる。鳥は、一般に水をあまり飲まない。ところが、ハトは水をとてもよく飲む。
ハトがヒナを育てるときの「ピジョン・ミルク」は、食道の「そのう」の壁がはがれ落ちて出来ている。オスの「そのう」も、ヒナが出来ると肥厚し、ピジョン・ミルクが出来るようになる。つまり、ヒナを育てるには、オスとメスがともにミルクを与える。
ハトは、ヒナにピジョン・ミルクという完全栄養食をまさしく我が身を削って与えている。
ハトは、種子さえたくさんあれば、ピジョン・ミルクができるので、昆虫の発生時期に左右されることなく、1年中、繁殖が可能。ハトの繁殖期間は1年中。だから、求愛の様子は1年中、見ることができる。
日本で記録されたハトは12種。一般人が出会うのは、ドバトとキジバトの2種。しかし、実は、ドバトというハトはいなくて、カワラバトのこと。カワラバトを家禽(かきん)化したのをドバトと日本では呼んでいる。
イスラム教では、ハトは神聖な鳥なので、食べない。砂漠では、ドバトの糞(ふん)は、燃料として貴重だった。
ハトは、平安時代末期から、戦いの神様の使い。ハトは、勝利をもたらす瑞鳥だ。
ドバトが少ないのは、公園でエサやりが減ったから。
ミノバトは乱獲されて、少なくなったうえ、砂肝にある「石」が磨くときれいになるので、宝石としての需要まである。
ナポレオンの戦争のとき、ワーテルローでイギリス軍が勝った情報を、ロスチャイルドは伝書鳩を利用していち早く知り、株価が上昇する前に大量の株を買い付け、大もうけした。
レース鳩は、最高時400万羽もいた。鳩レースは、短くて100キロ、長いと1000キロをこえる。北海道の最北から関東まで、ハトは15時間で飛んで来る。ただし、100キロ級のレースだと、無事に帰ってくるのは1割しかいない。
ハトにまつわる面白い話のオンパレードでした。
(2022年4月刊。税込1485円)

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