弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年5月31日

生き直す免田栄という軌跡

司法


(霧山昴)
著者 高峰 武 、 出版 弦書房

この本の表紙裏に簡潔に免田事件が要約されています。免田(めんだ)事件とは、日本で初めて死刑囚として確定した人が、再審で無罪になった冤罪(えんざい)事件。
事件は、1948年12月末に熊本県人吉市で起きた一家4人の殺傷事件。翌年1月に免田栄さんが強盗殺人事件容疑者として逮捕された。免田さんは一度容疑を認めて自白調書がつくられた。その後、容疑を否認し続けたが、1952年1月に死刑が確定した。その後、6回もの再審請求がなされたあと、1983年7月に免田さんのアリバイが認められて無罪判決となり、即日釈放された。免田さんは釈放後は福岡県大牟田市に居住し、2020年12月に95歳で亡くなった。
免田さんは1925(大正14)年、11月熊本県球磨(くま)郡免田町(現・あさぎり町)に生まれた。免田さんが強盗殺人などの罪で逮捕されたのは23歳のとき。それから34年間も獄中生活にあり、「自由社会」に出てきたときには57歳になっていた。
免田さんは筆まめで、獄中から家族に充てて400通もの手紙を書いて送った。この本によると、その手紙の原本は残っていないものの、コピーが残っているとのことで、その一部が本書で紹介されています。
死刑判決を受けてヤケになっていた免田さんに、再審請求という手だてがあることを教えたのは、同じ死刑囚のUだった。免田さんの再審請求には何人もの弁護士が手伝っていますが、日弁連も後押ししています。
免田さんは死刑囚として、拘置所で長く過ごしていますが、花壇をつくり、カナリアを飼っていた。拘置所で死刑囚がカナリアを飼っていた、飼えるというのを始めて知りました。
熊本について、「ねずみ講」が始まったところ、オウム真理教の教祖・麻原彰晃の生まれたところだと紹介されています。騙される人は多いけれど、騙す側の人も熊本は生み出しているということです。
「よう生きてきたなあ」という免田さんの述懐が紹介されていますが、本当にそのとおりです。
一度は死刑判決を受けて最高裁で確定しながら、再審裁判で無罪となり、その後は、「自由社会」で結婚し、全国に出かけて冤罪を生み出す裁判の問題点を鋭く告発していました。
95歳まで長生きできた免田さんの生涯、とりわけ無実の人がなぜ自白してしまうのか、その心理は究明されるべき現象です。ご一読を強くおすすめします。
(2022年1月刊。税込2200円)
 土曜日の夜、近くの小川にホタルが飛びかうのを見に行きました。
 フワリフワリと飛んでいるのを、ひょいと両手でつかまえ、手のひらに乗せて明滅するホタルを間近に見ます。心がなごむ瞬間です。
 竹やぶにとまっているホタルたちが5匹か6匹ほど、同時に明滅していました。初めてです。
田舎に住む良さは、歩いて5分でホタルを眺めることができることです。
 日曜日の夕方。庭のジャガイモを掘り上げました。大きなバケツ2箱ほど収穫できました。メークイン、男爵、キタアカリです。当分、ジャガイモ料理が食卓をにぎわしてくれます。初日は、小粒のものをオーブンで焼いて、塩こしょうをふりかけ、また、マーガリンを塗って食べました。

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