弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年6月 3日

四郎乱物語

日本史(江戸)


(霧山昴)
著者  不詳 、 出版  天草キリシタン館

 原本は天草キリシタン館が個人から委託された分7冊から成る資料(冊子)。今では虫喰いや摩耗、欠損が著しく、保存状態はとても悪い。でも幸いなことに写真と活字版で全文が読める。といっても、昔の文体だし、漢文調でもあり、容易に理解はできない。
「四郎乱」というタイトルは、島原天草一揆を退治する藩政の例からみた本であることを意味する。天草の福連木材で庄屋をつとめた尾上家に伝わった冊子。作者も作成年も明らかではない。江戸時代の中期には成立していたと考えられている。
 「四郎乱」は、基本的に一揆を「悪」とした体制側の正当性を強調する軍記物語。歴史記録というより文学作品として読まれるべきもの。
 熊本藩が藩校「時習館」に収蔵していた、すなわち公的に保管していた。
 このころ(寛永14年、1637年)は、島原・天草とも大干ばつで住民は飢饉に直面した。何かにすがって救いを求めようという心情からキリシタンは増え、ついには島原の大乱にならって、天草でも百姓たちが一揆を始めた。
 唐津や熊本からの援軍が到着するまで、キリシタン軍1万人に対して藩軍は500騎。唐津からの援軍6千人が到着し、それまで城内にたて籠もっていた藩軍はなんとか生きのびることができた。
 島原の原城に籠城した絵師の山田右衛門は城外の藩軍と連絡をとりあっていて、藩軍に救出されて大住生することができた。
原文は独特の流麗な崩し字なので、さっぱり分かりません。それでも、とても詳細に一揆の流れをたどっていますので、原文とあわせながら読んでいるうちに、少しずつ分かってきます。貴重な復刻版です。
(2016年3月刊。2000円+税)

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