弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年2月 4日

羊皮紙の世界

ヨーロッパ(中世)


(霧山昴)
著者 八木 健治 、 出版 岩波書店

 羊皮紙が誕生したのは紀元前2世紀に現在のトルコ西部。そして、古代世界の中心地ローマに輸出するまでになった。パピルスよりも丈夫で、そのうえ羊はどこにでもいるという手軽さから、羊皮紙はまたたく間に広まった。
 現在でも、世界30ヶ所で羊皮紙は作られている。
 羊皮紙がフツーの紙と違うのは、一枚一枚に、かつて動物の命が宿っていたということ。
 羊は皮膚にラノリンという脂分を多く含んでいるため、その脂分が酸化して、いくらか黄色っぽくなっているのが特徴。
 羊皮紙といっても、3種類ある。一つは羊。二つ目は生後6週間以内の仔牛。三つ目は山羊(ヤギ)。
 羊皮紙をつくる過程では、ツーンとしてすっぱい臭いと、どよーんとした腐敗臭が鼻をつく。1頭の羊から約1ヶ月かかって出来るのは、A4サイズで4枚だけ。この1枚が3000円ほどする。18世紀フランスの記録には、1枚が1リーブル、つまり500円から1000円ほどだった。
 羊皮紙の平均的な厚さは、千円札3枚を重ねたくらい。
 羊皮紙づくりは、部厚い皮をひたすら削っていく作業。薄くするほうが大変。
 羊皮紙には穴空きは仕方のないこと、もとから動物の皮は空いていたもので、作製造上での職人のミスではない。
 羊皮紙には、印刷用の油性インクが染み込みにくいため、紙と比べると、印刷後のインクの乾燥にかなりの時間がかかる。羊皮紙の表面をツルツルにしておくため、メノウなどの表面が滑らかな石で入念に磨かれる。
 羊皮紙という知らない世界を少しだけのぞいてみた気がする本でした。
(2022年8月刊。税込3190円)

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