弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年6月27日

生命を守るしくみ・オートファジー

生物


(霧山昴)
著者 吉森 保 、 出版 講談社ブルーバックス新書

ヒトの人体の細胞は、以前は60兆個と言われていたが、今では37兆個とされている。組織によって細胞の大きさは異なっている。
病気になるということは、細胞が病気になるということ。
細胞1個の中に、生物を1個体つくるのにひつような遺伝情報がすべて入っている。
タンパク質は、すべて細胞の中でつくられる。細胞の中のタンパク質をオートファジーで分解してアミノ酸にする。そのアミノ酸を材料にタンパク質をつくる。1日あたり細胞の中にあるタンパク質の1~2%を分解し、できたアミノ酸を材料として新しいタンパク質をつくっている。細胞の中にあるものを分解して同じものをつくることで、何日かで細胞の中身がすべて入れ替わり、新しい状態が保たれる。このような、一見すると意味のなさそうに思える細胞の中身の入れ替えは、実は細胞を新しく健康な状態に保つために必須のこと。オートファジーが起きず、中身の入れ替えができないと、細胞の機能に不具合が出て病気になってしまう。すなわち、オートファジーの3つの主要な機能は、栄養源を確保すること、代謝回転、有害物の隔離除去。
カロリー制限は、ヒトを軽い飢餓状態に陥らせる。飢餓状態になると、細胞はオートファジーによって、自己の成分を分解して栄養源を確保する。つまり、カロリー制限時には、オートファジーが活性化している。なーるほど、そうなんですね。
寿命を決定するには、脳も関わっている。細胞には寿命がある。古い赤血球は4ヶ月、胃や腸の表面の上皮細胞は1日、血液中の赤血球は4ヶ月、骨の細胞は10年、バラバラだ。ところが、ほとんど入れ替わらず、生まれてからずっと使い続けている細胞もある。脳や心臓の細胞だ。
オートファジーは細胞の生存に欠かせない守護神のような存在であり、さまざまな疾患から守ってくれている。
こんなに大切なオートファジー研究をリードしているのは日本だというのです。やっぱり、今すぐには役に立つかどうか分からないような研究であっても、決して無視することなく自由にのびのび研究できるような環境って大切ですよね。いつもいつも目先の利益を追うだけでは大きな世の中の流れについていけなくなるのです。
よく分からないなりに、大切な研究だということだけは、しっかり認識できました。
(2022年1月刊。税込1100円)

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