弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年2月19日

蜜量倍増、ミツバチの飼い方

生物(ミツバチ)


(霧山昴)
著者 干場 英弘 、 出版 農文協

養蜂でだいじなことは、ハチの密度をいかに高めてやるか、ということ。一つの蜂群に、女王蜂、働き蜂、オス蜂、卵、幼虫そして蛹(さなぎ)がバランスよく存在し、世代交代されていくことが欠かせない。そのためには、巣箱の中に育児する場所(育児圏)と、蜜を貯める場所(貯蜜圏)とをすっきり分けて、育児圏では巣枠の隅から隅まで蜂児でいっぱいの状態(額面蜂児)の巣枠をつくり、貯蜜圏では蜜だけを貯めこむ巣枠をつくる。
そこで、採蜜群は2段にして、下段を育児圏、上段を貯蜜圏とし、その間に隔王板を入れ、女王蜂が上段の貯蜜圏に行かないようにする。すなわち、養蜂の基礎は、育児圏と貯蜜圏を明確に区別し、それぞれふさわしい間隔に巣枠を整えることであり、それによって最大限の採蜜量が期待でき、質の向上も図ることができる。著者の指導するモンゴルの養蜂家では、年間のハチミツ収穫量が8キロだったのが、糖度80%以上のハチミツを20キロとれるようになった。
ミツバチは1万~数万匹の蜂群単位で生活し、一つの群れには1匹の女王蜂と1万~数万匹の働き蜂、1割のオス蜂から構成されている。女王蜂は3年ほどの寿命だが、養蜂家は女王蜂を毎年更新している。オス蜂は交尾以外には役立たずで、仕事は一切しない。
蜂群内では、女王蜂が中心で、働き蜂が仕えているように思われがちだが、実際には、「上下の関係」や全体を統率する存在はいない。それぞれ個々で行動している。それでも、集団としては秩序が維持され、蜂群が全体として維持されている。
ミツバチを飼育するときには、ハチ1匹の命を大切にする意識をもつ必要がある。燻煙
機を適切につかって、蜂群を丁寧に扱う。ハチに余計なストレスを与えないように心がける。
昆虫は変温動物だが、ミツバチはほとんど恒温動物といってもよいほど。蜂球の内部は30度で、外側は15度ほど。
ミツバチの最大の加害者はミツバチヘギイタダニ。被害全体の6割を占めている。
オオスズメバチなどの天敵もいる。農薬(とくにネオニコチノイド系)による被害も大きい。
ほとんど役に立たないオス蜂児は、高タンパク質、高栄養で、肉食性昆虫の代用食に適している。
ナツメの花からとれたハチミツは、世界でもっとも高価なハチミツとして有名。うへー、知りませんでした。わが家の庭にもナツメの木があります。鋭い棘(とげ)があるので、手入れが大変です。
ミツバチはハチミツを生産するだけでなく、花粉媒介による貢献のほうが5倍も役に立っている。イチゴも、ベリーも、サクランボやタマネギまでもミツバチにお世話になっている。
たくさんの写真とともにミツバチの飼い方が、具体的に説明されていて、写真もたっぷりの楽しいミツバチ飼育法のテキストです。でも、私にはちょっと無理そうでした、残念...。
(2021年3月刊。税込1980円)

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