弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年1月18日

国鉄

社会


(霧山昴)
著者 石井 幸孝 、 出版 中公新書

 JR九州の初代社長が自画自賛した本です。でも、私は内容にまったく賛同できません。公共交通機関であるという使命を放棄して、もうけの追求だけ。ローカル線を切り捨て、新幹線のホームに駅員を配置しないなんて、とんでもありません。そして、「七つ星」とか超高級列車を走らせ、ひたすら自慢する。本当に間違っています。
 JR九州は、「鉄道会社」であるより「不動産会社」の道を選んだ(328頁)と得意気に言い切っているのにはゾクゾクとした寒気すら覚えます。関東・関西の大手私鉄グループにならった手法です。もうかればいいという発想しかありません。多角経営、利益率の確保、それだけです。
 JR九州のスローガンは「お客さま第一」、「地域密着」。看板に偽りありです。
 鹿児島本線の特急をなくし、新幹線のホームは無人化してしまう。駅の無人化もすすめ、ローカル線は切り捨て。これで、なにが「地域密着」でしょうか。
 そして、JR九州ではありませんが、リニア新幹線なんて、不要不急かつ危険で赤字必至の路線に莫大な金額を投入しています。全国一本の国鉄だったからこそ、地方のローカル列車は存続できたのです。
 労働組合の存在もまったく影が薄くなってしまいました。国労つぶしをすすめた著者は労働者にも権利があり、憲法で保障されているなんて、まったく念頭にないのでしょうね。
 残念ながら、日本の社会を金、カネ、カネ本位というように、ダメにした張本人の一人としか言いようがありません。今なお、なんの反省もないので救いようがありません。
 私は、国鉄の分割民営化は郵政民営化と同じく日本をダメにする大きな賭け、間違いだったと考えています。最後まで腹立たしさ一杯で読み通しました。
(2022年10月刊。税込1210円)

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