弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年9月28日

韓国軍はベトナムで何をしたか

韓国・ベトナム


(霧山昴)
著者 村山 康文 、 出版 小学館新書

 アメリカのベトナム侵略戦争は私の大学生のころのことです。アメリカ兵の5万5千人もの戦死者の多くは私と同世代でした。もちろん、ベトナムの若者たちも多く殺されました。ベトナムの若い女医さんの従軍日記『トゥイーの日記』は涙なくしては読めません。
 そして、アメリカ政府の要請にこたえて韓国軍もベトナムに出兵したのです。アメリカ軍以上に韓国軍は凶暴だとベトナム人から恐れられ、嫌われていたようです。
 なぜアメリカの要請に韓国政府がこたえたのか。それは、その見返りにアメリカから多大な経済援助を受けたことにあります。そのおかげで韓国経済は急速に立ち直り、目ざましい経済発展につながったのでした。これは、日本が朝鮮戦争で大きく復興したのと同じことです。
 今、ロシアの無法なウクライナへの侵略戦争が続いていますが、ウクライナへの強力な軍事援助のおかげでアメリカの軍需産業は大変な好景気にあるようです。戦争は多くの市民にとって、最大の人権侵害ですが、一部の戦争商人にとっては、絶好の金もうけになるというわけです。いやですね、そんなこと...。
 韓国軍は、「きれいに殺して、きれいに燃やし、きれに破壊する」というスローガンのもと、「ベトコン」の捜索・掃討作戦を展開していった。
 ベトナムには「ライダイハン」と呼ばれる、ベトナム人と韓国人とのあいだに生まれた人々がいる。韓国兵というより韓国人労働者とベトナム人女性とのあいだで多くは生まれたようだ。
 2011年10月に韓国の亀尾市体育館で開催された「ベトナム参戦47周年記念」式典には、ベトナム戦争に従事した元兵士ら1万4千人が参加した。そこでは、我々は京釜高速道路やソウル地下鉄はもちろん、韓国人の生活水準の向上に貢献したことが強調された。なるほど、それは事実なのでしょう...。
 韓国軍がベトナムで何をしたのかについて、アメリカ軍と違って従軍記者がいなかったので、証拠となる写真などの記録がほとんどないのが特徴。ベトナムで韓国軍の残虐な民間人殺害を現場まで出向いて調査した「ハンギョレ」新聞の記者に対して、ベトナムに参戦した元軍人らが「虚偽、捏造(ねつぞう)」として名誉毀損罪で告訴した。これに対して、記者たちについて「民主社会のための弁護士会」(民弁)所属の弁護士たちが弁護したとのこと。
 日本でも、「南京事件」について「大虐殺なんて、なかった」という右翼たちの攻撃があった(ある)ことを思い出します。「30万人」が虐殺されたかどうかはともかく、大量の民間人を日本軍が虐殺したことは日本の皇族も認めている歴史的な事実なのです...。どこの国にも自国の負の歴史を認めたがらない人々が少なからずいるというわけです。
 でも、歴史の真実に目をそむけてはいけないと思います。子どもたちに語り継げないような悪いことを繰り返してはいけないからです。
(2022年8月刊。税込990円)

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