弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年2月 3日

夫婦別姓

社会


(霧山昴)
著者 栗田 路子ほか 、 出版 ちくま新書

夫婦同姓が法律で強制されているのは、世界中で日本だけ。あきれたことに自民党のなかに強硬に反対する議員がまだいます。今では自民党のなかでも少数になっているのに声高に叫びたて続けて、選択的夫婦別姓制度の実現を妨害しているのです。
彼(彼女)らは、夫婦同姓の日本古来の伝統のように言うことがありますが、日本も江戸時代までは夫婦別姓でした。明治になって、旧民法が夫婦同姓を義務づけて出来あがった「伝統」にすぎません。これって、日本に女性天皇がいなかったかのように言っているのと同じで、まったくの間違い、俗説にすぎません。
この本は、韓国・中国といった昔から今も夫婦別姓の国だけでなく、イギリス、フランス、ドイツ、ベルギーについても夫婦別姓のさまざまなパターンを紹介しています。要するに、夫婦とか家庭といったものは、ペーパー(形式)ではなく、生身の人間の結合だということ、そして、それはさまざまなパターンで(違い)があるということだと思います。
イギリスは、姓も名前も自由に変えることができる。そして、改名の理由を明らかにする必要はないし、変えたことを公式に登録する義務はなく、あくまで任意。
イギリスでは、結婚して10年内に4割近くが離婚する。そして全国2000万のファミリーのうち、結婚しているのは67%で、年々減り続けている。4割近くが事実婚。
フランスでは、出生したときに出生証明書に登録された姓名が一生を通じてその人の法律上の本姓名。ただ、夫の姓を通称としている既婚女性が圧倒的に多い。子どもの姓は父親の姓とするのが多数派。
ドイツも、しばらく前まで夫婦同姓が法律で定められていたが、現在は、同姓、別姓、片方だけが連結姓という三つの選択肢がある。男性の9割が結婚しても姓を変えておらず、女性の8割は姓を変えている。子どもの姓は生まれた時点で、どちらの姓にするか決める。ドイツでは親と子で姓が違うのは珍しくないので、学校などで奇異な目で見られることがない。
ドイツでは、離婚するには少なくとも1年間の別居が必要であり、どちらかが裁判所に離婚を請求したら必ず離婚になる。また、離婚するのに、理由は問われない。なお、浮気があったとき、その人やその相手に慰謝料を請求するのも認められない。これは、大人なのだから、結婚生活破綻の原因はどちらにもあるという考え方から。
ベルギーでは、婚姻は個人の姓名に何の影響も与えない。
いやはや、家族というものは実質も形式も、どんどん変化していることがよく分かる本でもありました。日本でも夫婦別姓にしたいと思う人がいたら、好きにしていいですよという制度を早く実現したいものです。それで被害を受ける人なんて、誰もいないのですからね。自民党の一部議員の皆さんは、世界に目を見開いて真剣に反省してほしいです。
(2021年11月刊。税込1034円)

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