弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2021年12月21日

私はイスラム教徒でフェミニスト

フランス


(霧山昴)
著者 ナディア・エル・ブガ 、 出版 白水社

それは、二人だけで楽しむ大人のゲーム。子どもたちの目の届かないところ、二人だけの世界で、自分たちのセクシュアリティをつくりあげていく。このゲームに敗者はいない。そう、夫婦のセックスのことです。
厳格なムスリムと同じように、正統派のユダヤ教徒も肌に触れることを性的な行為とみなしているので、男女のあいだでは握手をしない。
出産するときに多くの血を流すのでユダヤ教徒では、生理中と同じように出産後の女性もまた不浄とみなされる。男の子を生んだら7日間、女の子なら14日間は一切の性交渉が禁じられる。正統派ユダヤ教徒は、シーツに開けた穴からしか性関係を結ばない。ええーっ、ウソでしょ、そんな...、信じられません。
著者はフランスで活動しているイスラム教徒の女性です。助産師で、セクソローグで、ラジオのパーソナリティーで、2人の子をもつ母親でもあります。
イスラム教徒は、イスラムの名において女性がおとしめられ、過小評価され、抑圧され、服従させられている。著者は、このことを厳しく批判しています。
神のメッセージは明快で、精神的な自由と社会的な解放を結びつけると説き、この点でなんら男女を区別していない。精神面で、イスラムのメッセージでは男女をまったく区別していない。女性たちは自分の場所を取り戻すのに、父親や夫、兄に許可を求める必要など、まったくないのだ。コーランは、明確に一夫一妻が理想だとしている。
著者の仕事は、女性たちの選択に寄りそうこと。もちろん、イスラムの教義を敬う。けれど、教義は硬直したものではない。解釈があっての教義だ。
イスラムにおいて、女性の性欲、興奮、快楽は認められているだけでなく、好ましいものとみなされている。男性は、相手が満たされているかどうかに気を配らなければならない。
セックスは、要は楽しむこと。これが著者の考え。
イスラムの女性がスカーフを被るのは、イスラムの教義にとっても信仰にとっても、それほど重要な位置を占めているものではない。著者がスカーフを被っているのは、自分の意思によるもので、被らされているのではない。自分の意思で選択しただけのこと。スカーフは、信仰の道具の一つなのだ。
若者に向けてラジオで性のことを率直に語るイスラム教徒の女性であり、セクソローグ(性科学医)の本です。いったい日本にもセクソローグって存在しているのでしょうか...。
大胆かつ有益な、よりよい生き方を示す大切な本だと思いました。
(2021年9月刊。税込2420円)

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