弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2021年12月19日

細胞とはなんだろう

人間


(霧山昴)
著者 武村 政春 、 出版 講談社ブルーバックス新書

この世のすべての生物は、みな、等しく細胞からできている。
ウィルスは細胞ではない。細胞からできていないので、生物でもない。巨大ウィルスも、ふつうのウィルスと同じで生物(細胞)ではない。
細胞の三つの条件、はたらき。その一は、細胞膜で覆われ、外界と空間的に分け隔てられていること。その二は、自己複製すること。その三は、代謝をすること。
ウィルスが細胞ではない理由の第一は、膜で覆われていないから。膜がないものは細胞ではなく、ウィルスは膜がなくてもウィルス。
ウィルスは自分ひとりの力だけではタンパク質をつくることができない。ウィルスは、タンパク質の合成装置であるリボソームをもっていないから。生物の細胞には、タンパク質を合成できるリボチームが存在する。リボソームの存在こそが、細胞が細胞たるゆえんである。
生物にとって、リボソームだけは「決して失ってはならない」ものである。
ウィルスは生物ではない。何よりもリボソームをもたないから。
リボソームは、RNAとタンパク質からなる複合体である。
ミトコンドリアは、酸素と有機物を利用してエネルギーをつくり出している。ミトコンドリアの機能が一瞬でも止まると、細胞は死んでしまう。酸素を利用して生きている真核生物にとって、ミトコンドリアは重要な存在だ。
コロナウィルスは、呼吸などを通してヒトの体内(とくに気道)に入り、粘膜の層を通り抜けることに成功すると、Sタンパク質を細胞表面のACE2という受容体に結合させる。やがてエンドソームの中に包まれて、細胞室内にRNAゲノムを放出する。
この世界の主役は、昔も今も、変わらずウィルスだったのではないか...。
いったい、ウィルスが生物ではないなんて、どういうことなの...。そんな疑問をますますかきたててくれる新書です。世の中の闇、知らないことは深く、大きいのです。
(2020年10月刊。税込1100円)

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