弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年3月22日

はぐれイワシの打ち明け話

生物


(霧山昴)
著者 ビル・フランソワ 、 出版 光文社

不思議な本です。いえ、読んでいると不思議な気分にさせる本です。海中にいる魚たちがみんな話しているというのです。
海は音で満たされていて、人間が生きている空気中よりもずっとにぎやかだ。水は空気より密度が高いため振動しやすく、音がよく伝わる。水中では、音は光より遠くまで伝わり、弱まることなく何キロメートルも先まで届く。
クジラは2千キロメートルをこえる距離からデートに誘ったりしている。どんな海でも、クジラの声は海のなかの音のかなりの部分を占めている。冷水と温水の境界である水温躍層の境界でクジラの声は水平方向に何千キロメートルもまっすぐに伝わる。
本のタイトルにもなった有名な52ヘルツの声を出す孤独なクジラがいる。
人間がシャチやイルカと協力して狩りをしているという話もまた有名です。
人間に協力するイルカたちの集団は固有の文化的特徴を有している。このイルカたちは、自分たちの集団に属することを好み、他の集団には混ざらない。
人間に協力するイルカたちは固有のアクセントや鳴き声があって、それが人間と「話す」ことのない同種のイルカとの相違点になっている。
イワシのようにぎっしり詰められるという。たしかにイワシの群れの密度は、1立方メートルあたり15匹。ラッシュアワーに地下鉄の密度の4倍に相当する(これは日本の地下鉄ではなく、アメリカかフランス)。イワシたちは適切な距離と互いを尊重した速度を保つことができる。
イワシの群れでは、何百万匹いても、議論の必要はなく、自然に決断がなされる。そこにはリーダーも全体を支配する集団も、命令も存在しない。ひとまとまりになったイワシの群れは、一致団結して泳いでいる。
スウェーデン海軍は海中に不振な音を探知し、それはロシアの原潜によるものだと疑った。しかし、ロシア海軍は頑張に否認した。学者に調査してもらった結果、それはニシンの群れによる音だった。ニシンは内臓のガス(つまり、おなら)を一定のリズムで排出していて、それによって複雑な情報をやりとりしているのだ。
ザトウクジラは、子育てに長い時間をかけ、頻繁に会話している。ザトウクジラは、集団内で長年にわたって歌を伝承する。
絶えず泳ぎ続けているマグロは、毎日、自分の体重と同じ量のエサを食べなければいけない。マグロは魚のなかで唯一の恒温動物だ。
著者はまだ20代のフランスの物理学者です。流体力学を研究しているとのことですが、スピーチ大会で優勝するほど優れた話し手というわけですから、話の流れが実に見事で、驚くばかりの展開です。海中のにぎやかな会話を翻訳機にかけてぜひ聞いてみたいものです。
(2021年11月刊。税込2090円)

 日曜日、庭の一隅にフジバカマを植えました。インターネットで取り寄せたのです。これでアサギマダラ(チョウチョ)を呼び寄せるつもりです。さて、うまくいくでしょうか。
 庭のチューリップが一斉に咲きはじめました。赤・黄・白と、本当に華やかで、春到来を実感させてくれます。
 春の味覚、アスパラガスも地上に顔を出してくれるようになりました。これから楽しみです。
 日曜日は、午前・午後とロシアのウクライナ侵略戦争反対を街頭で訴える活動に参加しました。黙ってなんかおれません。映像を見るたびに心が痛みます。とりわけ子どもたちの心に大きなショックを与えていることが心配でなりません。
 道の両側に白いコブシの花がずらり、やっぱり平和が一番です。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー