弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年4月 4日

菌類が世界を救う

生物


(霧山昴)
著者 マーリン・シェルドレイク 、 出版 河出書房新社

菌類はどこにでもいるが、なかなか気づかない。菌類の90%以上の種類は未確認だ。知れば知るほど、菌類は、さらに分からなくなる。
植物は菌類の助けを借りて5億年前に陸に上がった。植物が独自の根を進化させるまでの数千万年間、菌類は植物の根の役目を果たした。今日では、植物の90%以上が菌根菌に依存している。
キノコは胞子を拡散する多様な手段の一つにすぎない。菌類の大多数は、キノコに頼らず胞子を放出する。
菌根は1年で50メガトン、これは50万頭のシロナガスクジラに匹敵する、におよぶ胞子をつくる。
世界には220万種から380万種の菌類がいる。現状は、菌類全体のわずか6%しか発見されていない。
人間の脳は数百万種の色彩を区別し、耳は50万種の音を聞き分ける。ところが、鼻は数兆種の匂いをかぎ分ける。ええっ、ホ、ホントでしょうか...。人間の鼻は、1立方センチあたり3万4千個の分子という低濃度の化合物でも嗅ぎ分けられる。この濃度は、2万個のオリンピック用水泳プールの中の1滴の水に匹敵する。
トリュフは栽培できない。マツタケと同じく、トリュフは収穫してから2日から3日以内に新鮮なまま客の皿にのせなくてはならない。トリュフの香りは、生きて代謝している活性プロセスでしかつくれない。トリュフの香りは、胞子の成熟とともに強力になり、細胞が死ぬと失われる。トリュフは乾燥させて後日食べることはできない。
菌類は、高速データの伝達に電気信号を使える。
菌糸体は脳のような現象だ。植物は大気中から得た炭素の30%を菌類パートナーに与える。菌根菌は、植物が必要とする窒素の80%、リンについては100%を与えることができる。
菌糸体は土壌をまとめる粘り気のある生きた継ぎ目だ。菌類を除去すると、土壌は洗い流されてしまう。
人類にとってもっとも親しみ深い菌類は酵母だ。酵母は、人間の皮膚の上、肺の中、消化器官系に棲息し、あらゆる穴の内面にいる。人類は、はるか昔から酒づくりに発酵を利用してきたと思われる。酵母は、糖がアルコールに変わるプロセスにかかわる。
キノコ、カビ、酵母は本当に人間の生活に欠かせないものだということがよく分かる本でした。
(2022年1月刊。税込3190円)

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