弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年3月12日

人生を変えた韓国ドラマ

韓国


(霧山昴)
著者 藤脇 邦夫 、 出版 光文社新書

私は韓流ドラマはまったくみていませんので、この本で紹介されているドラマもみたものはありません。でも、今や韓流ドラマは日本だけでなく、インターネットを通じて全世界に流れて流行しているというので、その謎を知りたくて読みました。
「冬のソナタ」が日本で大人気になったのは20年ほど前の2003年ころ。第一次の韓国ドラマブームが起きた。第二次は、2011~2015年。2016年から第三次ブームが起きて、アメリカドラマに匹敵するようになった。そして、第四次は、2019~2021年、「愛の不時着」、「梨秦院(イテウォン)クラス」、「賢い医師生活」が登場した。
韓国ドラマは日本のドラマよりずいぶん先を歩いていて、21世紀中に日本が韓国に追いつくのは、もはや不可能な状況にある。
韓国ドラマとアメリカドラマは、視聴ソフト・コンテンツとしては、ほぼ同一線上にある。
韓国ドラマのすべてが傑作ではないが、その打率は6割強に達している。これは、驚異的なクオリティの高さ。
「冬のソナタ」は女性に受けたが、「チャングムの誓い」は男性にも受けた。また、50代中心から、40代~60代にまで幅が広がった。
日本のドラマが停滞しているのは、制作のスタッフ、演出、脚本、俳優が劣っているからではない。広告スポンサーのつくドラマの企画が20代、30代の若い女性向けしか求められていないから。企画がこのように硬直しているからだ。
そして、韓国ドラマは、2億人の視聴者を保有するネット配信による全世界同時公開だ。
アメリカドラマは、シナリオライター集団からのアイデアで全体のコンセプトを決定していく。
これに対して韓国ドラマは、一人の脚本家が単独で書く傾向が強い。
韓国ドラマには、メロドラマの通俗性をさらに強固にするため「復讐」の要素が付加されるという特有の傾向がある。
韓国ドラマほど、日本人(とくに女性)のメンタリティに自然に浸透した映像文化は他にない。なんといっても企画の斬新さと脚本が大切。
韓国ドラマの日本リメイクは、可もなく不可もなくというのがほとんど。ところが、日本ドラマの韓国リメイクは、みんな成功している。韓国俳優が演じて、演技に深みが出ている。
日本では、不倫と復讐ドラマは、一般的な支持が得られない。
年齢・性別を問わず、韓国は世界有数の俳優大国。生活力旺盛で、感情表現の豊かな俳優が多く、たとえば患者を演じる俳優たちの感情過多で、過剰なほどの喜怒哀楽の振り幅は、ドラマに不可欠。日本の視聴者にとって韓国ドラマが新鮮だったのは、ドラマ内の人間の喜怒哀楽の感情表現が素直で、しかも生(なま)で、ストレートだから。
人物造形も善悪の二項対立が分かりやすく、基本的な筋立ても理解しやすいので、親近感が自然と湧いてくる。これに音楽効果もあり、全身で感じる「何か」があって、「心に沁(し)みる」のだ。
韓国ドラマはまるでみていませんが、韓国映画はかなりみています。本当にいい映画が多いと思います。人間社会の現実を見て、改めて考えさせられるようなもの、政府にタテついて堂々とモノを言うようなものが少なくありません。みなさん、ぜひ映画もみてください。
(2021年11月刊。税込1320円)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー